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里の問題

一人称が慣れていないので文章がおかしかったりします。

「な、なぜ貴様をそのことを! さてはお前が「よせ、シュタイヤ」」


 立ち上がり剣を取るハーフエルフの若者シュタイヤ。

 だが、彼の行動はシュワルツによって止められる。

 彼らは観念したのだ。もう、隠し事はできないと。

 混乱するのはメル。


「な、何が起きているのですか?」 


 慌てる態度は大きく開いた目と飛び跳ねているアホ毛で分かる。

 頼りにしているベガは今も大爆笑中だ。

 状況の掌握に困難を示す中。


「もう……すべてを話すしか無いようですね」


 苦笑しながらも、諦めたシュワルツは全てを話す準備をした。

 悲痛な趣で白髪の混ざった彼の髪が揺れた。


 は、話すって何を?!

 

 メルは心中をその思考に支配されながら取りあえず誤魔化すように神妙な趣で聞いた。

 メルも沈痛な顔で何とか空気に合った行動をしようとする。


「私たち、森人はご存知の通り地竜などの魔物を操って生活をしています」


 俯きながら喋るシュワルツと何とか話しを聞くメル。

 この程度の情報ならメルは聞くまでもなく知っていること。

 知識として存在する常識にメルは何と反応するべきか迷ったけど。


「先月のことであります。突然体調を崩し、急死する地竜が現れたのは……。当初それは寿命か何かだと思っていたのですが、それを境に増えていきました。

原因が分からず、減っていく地竜やワイバーンは死活問題に関わることです。私たちの戦力は魔物だけですので」


 ようやく納得するメル。

 つまり、彼らの最大戦力はそれだけでハッタリをかましながらメルたちからマウントを取っていたのだ。それは知られたくないことでもあり、今も抱える問題だ。

 まあ、その程度の事でメルは起こったりもしないけど。


「うむ、お主たちの状況は理解したぞ。それでは改めて提案してもよいか?」

「何でしょうか?」


 笑い終わったベガは真剣な顔でシュワルツに話す。


「可能性の話じゃ。もしかしたら、地竜やワイバーンを治せるかもしれん」

「何?」


 驚き立ち上がるのはハーフエルフたち。

 勿論、メルも驚くが立ち上がりはしなかった。


 治せるの? 流石ベガちゃん!


 驚愕と同時に尊敬の念を抱き、ベガのすごさを思う。

 残念ながら”ベガが治す”とは一言も言っていないが……。


「とにかく、患者をみないと始まらぬ。案内してくれぬか?」


 そう言って立ち上がるベガ。

 先ほどと打って変わって丁寧にハーフエルフたちがベガを扱うのは彼女が救世主になりうる可能性があるからだ。


 正座をしていたメルは足が痺れ、四つん這いになるも。


「何をしておる?早くいくぞ?」

「え、わ、私も?!」


 足のしびれを取ろうとしていた矢先にこれだ。ベガが手を取り。

 メルは悲鳴を上げながら、無理に立ち上げるのだった。




 里には大きな牧場がある。

 円形に作られたそれは地竜とワイバーンを飼うために作られたもので、囲うように巨木が生えている場所だ。

 まるで柵の代わりであるそれは森の中に突如丘があるような……。

 それでいて神聖な雰囲気を持つ。


「ここが”竜の集う場所”だ」


 そう説明したシュタイヤは自慢するかのような表情でそれを紹介した。

 というのも、彼らは魔物を使いこの里を守っているのだ。

 その中でも強大な力を持つ竜を崇め、奉っているのは文化的に考えて何の不思議もない。


 「うわ~、綺麗な場所……」


 呆然としているメルは神域の雰囲気にのまれる。

 木々を繋ぐように飾られているのは太い荒縄。

 地蔵のように置かれているのは竜の彫刻だった。無造作に、けれども守り神のようにあちこちにある。


「ワイバーンの姿が見えぬのだが……」


 そう呟くベガにシュタイヤは木の上を指さす。

 大きな巣で休んでいるのはワイバーンでその雛も見えた。


「ワイバーンは主に木の上で生活をし、地竜は地上で生活をしている。ワイバーンの止まる木は地竜を囲う木と同じ木であり、”竜樹(りゅうじゅ)”と呼んでいる」


 説明したシュタイヤにつられるよう。

 メルが見上げる木は確かに巨大であり、太い幹を持つものだ。

 けれども、それよりも“はるかに大きいもの”をメルには見つけた。


「あの山頂にあるものも、”竜樹”ですか?」

「……あれは”原初(げんしょ)竜樹(りゅうじゅ)”と呼ばれているものだ。挿し木として育ったものがここにある”竜樹”と呼ばれているものだそうだが、本当のところは分からない。何せそれは里が出来る前の話しだからな」


 メルに説明するのはシュタイヤ。

 季節ごとの儀式ではあの木を触ることで成人として認められるそうで。

 正しく信仰の対象となっているのであろう。

 何年前、あるいは何百年前からあるそれは山頂に太い根を生やし、今も雪解け水を吸って生きているのであろう。

 山頂に堂々と立つそれは見事なものだ。

 エルフ種は樹木を信仰する種族だと聞いていたメルは、その気持ちが何となくだが分かった気がした。


「なるほど……確かに弱っておるようじゃのう」


 そんな考え事をしていたメルは牧場の中心にいる一匹の地竜を見る。

 岩や魔石、草などを食う地竜はぐったりとしている。草食動物として大きな体を持つ地竜は常にエサを求めるどう猛さがあり。

 それは大きな体を維持する上で必要な草の量が多いからだ。

 つまり、今のようにぐったりと寝そべっているのはある種異様なことだと言えよう。


「うむ。もう少し近づいてもよいか?」

「ええ、構いません」


 地竜に近づくベガ。

 けれども、それは不快なことで当然の反応を示す。


「グルルルル……」


 低く唸る地竜。

 威嚇する声であるのは、ベガも勿論知っている。


「大丈夫じゃ。お主を害するつもりはない」


 言葉が通じないのは当たり前だ。だが、ベガのその態度が雄弁に伝える。

 草の絨毯で微笑むベガ、地竜はその態度を見て唸りを止め、静かに目をつぶった。


「名前は何というのじゃ?」

「シェンシェンです」


 一匹一匹を正確に判別するシュタイヤは答える。

 返答の後、ベガは外傷がないかチェックしながら地竜の周りを歩いた。


「目立った外傷はないのぅ。原因はやはり内か……」


 簡単な推論を終えたベガはチラリとメルを伺い。

 その次に。

 

「これであれば、直せるじゃろう」

「ほ、本当ですか?!」


 喜ぶのはハーフエルフたち、とは言ってもそれを信じない者がいるのも確かであった。

 メルも驚きながらもベガを称賛する。


 流石ベガちゃんだな……。その気持ちが表情に現れたところで。

 メルは不意にベガと視線が合う。

 ニヤリと笑うベガ、メルは何故か嫌な予感がした。


「何、心配することはないぞ。何せここには聖術使いであるメルがおるからな!」


メルがこの後活躍する予定です。

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