森人との遭遇
短いです。
なるべく早く、次の話を書きます。
戦争というのは日々進化している。
より効率的に人を、魔物を、殺そうとするのが戦争の進化であり歴史だ。
魔伝という通信の魔道具の発達も元をただせば戦争の道具として創られたもので、魔法の進化もそれの需要によって進化したものであった。
さて、そんな世界の戦争であるが一つの革命的出来事が起きる。
危険であり確実性のないそれは実験的であった。その国が追い詰められていたというのもあるがそれでも希望として、藁を掴む気持ちで行われたそれは確かに効果的だった。
非人道的であるが、斬新なそれはそれこそ、今で例える戦車や飛行機であり。
「ば、馬鹿な!なぜこいつがこんなところに!」
騎士は悲鳴を上げる。
鋼鉄の体を持つそれは刃を通さぬほど頑丈で魔法にも強い。
それによる進撃は誰も止めることが出来ないだろう。
「囲まれている!一体いつから?!」
鳥のように高い場所から彼らを見る。偵察として出ていた者が騎士たちを見つけたのだ。
遥か高所から矢も届かない位置で彼らは旋回する。
「“ワイバーン”それに“地竜”か……」
つぶやくシフォンは“最新の兵器”に鋭い目を向ける。
森の茂みから出てくるのは民族的な仮面を付けた長身の者。動物の皮と葉で作った原始的な服と弓矢を持つ。
「動クナ」
くぐもった声で地竜の上から命令する。
地竜がギロリと爬虫類特有の目でメルたちを睨む。ヘビに睨まれたカエル、カエルを睨むヘビだ。
「投降シロ。命ダケハ、助ケテヤル」
「と言っておるが、どうする?」
「どうするって、私に尋ねるんですか?!」
驚きで目を丸くするメルにベガはお道化た。
残念なことにこの中で一番身分が高いのはメルであるのだ。
「え、えっと、取りあえず皆さん、武器は下ろしてくれませんか?」
相手を刺激しないように言葉を選ぶメル。
緊張感が流れ、川の近くであるのに肌は熱さを主張した。しばらくチョロチョロと川の流れる音が木霊す。
交渉の場で武器は不要なものだ。話し合いの場で使ったらそれは脅迫になる。
「ほら、シ、シフォンさんも杖を下ろして……」
「……分かりました。メル様」
場の空気は一旦リセットされる。
メル側が武器を下ろしたことで森人たちの警戒心が少し薄まる。
「ツイテコイ」
それだけ言うと、ひときわ大きな地竜に乗った森人が案内した。
ズシリズシリと響く音とそこから聞こえる竜の息遣いは生物の頂点に相応しいだけの威圧と怖さを伝えた。
連れてこられたのは高い木々がある場所。
森の奥に存在するその里は木の洞を掘った家でそれを繋ぐつり橋がある里だ。
家々を繋ぐつり橋はまるで蜘蛛の巣のように広がり。
「ツイタゾ」
天気は晴れており、正午の太陽が木々の間から顔を出す。
幻想的なという形容詞が付くほどそれは美しく。爽やかな風は森林ならではのもので、香る匂いも彼らの腰にある武器を無視すればリラックスも出来たであろう。
ただその幻想にメルは見上げながら進んだ。
高い位置に彼らが住んでいるのは、ウルフやゴブリンなどの木に登れない魔物に備えたゆえだろう。
「オマエハコッチダ」
民族的な仮面がよそを向いているメルに注意した。
メルだけは他の場所に連れて行こうとする。
騎士らが異議を唱えるのは当然であり。
「メル様をどこに行かせるつもりだい?」
「オ前ニハ関係ノナイコトダ」
「何だと……?」
突っかかるのはシフォン。
他の騎士たちも鋭い目を送る。
争いは望んではいないが、互いに信用できないのは事実。
だがしかし、それでは騎士も納得できなのも事実。
故に。
「我であればよいじゃろう?」
それが互いの妥協点だ。
騎士たちにはやや不安が残る。だが、依然として主導権を握るのは森人。
森人としても“武器を持っていない”少女一人であれば警戒することは無いだろう。その提案は受け入れられた。ただそれでも警戒はする。
「……」
「そう、心配するでない。我はメルの友達じゃぞ?」
シフォンたちは完璧に信じたわけではないが、もしもの時はこの少女に頼るしかないのは事実。
「早ク来イ」
急かされたベガは仲良く、メルの隣を歩くのであった。
数名のハーフエルフ族がメルとベガを逃がさないように囲い、高いところにある場所……。
きつい階段を上る様に強要した。
テンプレですが、許してください。




