『この世界は終わりを知っている』
5つの光が、いや選ばれた者達が壊れかけた世界を修復していく。
空は晴れ、海は静寂を鳴らし、大地は傷を隠していく。
『いやぁ、死んでもこき使われるなんてね』
『老体にはちときついの』
『ふふ、わらわは楽しかったぞよ』
疲れ果てて倒れている3人の側で楽しく会話を始めるそのもの達は、役目を終え次第に消えて行く。
『かおりお姉ちゃん!』
最後にと近づいてきた幼い娘はかおりに抱きついた。
「ちょっ!!」
その勢いに耐えきれず後ろに倒れてしまう。
それでも、彼女の温もりをいっぱいに貰っていく。
母性が働くとはこういうことなのだろう。彼女は抱き返し、その頭を撫でた。
『なぁ、槇?』
「なんだよ」
『……わらわとあの小娘、どっちが好きなんじゃ?』
「っ!!!」
その目をかっぴらいて質問者を睨んだ。
『……愛いやつよの』
バカにした目が槇に向けられる。
『自分の心に素直になった方が、よいぞよ』
彼女は振り返り、そして消えていった。
『さて、そろそろ時間みたいだね』
ティエルが3人の目の前に現れた。
それと同時に五宝珠は輝きを失い砕けて消えた。
「なんか……、これでよかったのか?」
康貴が口にする。
「結局、この世界が無くならないだけで、なにもかも失った感じに思うんだけど」
的確だった。この国を守っていた軍は壊滅。自然は戻ったが、殆どの町は致命的なダメージを受けただろう。こんな状態で、この国は何が出来るのだろう。
「たしかに……そうだな」
まるで彼女はこの国の終わりを知っていたかのように、にこやかな笑顔で返した。
『それは、君たちが考える必要のないことだよ。君たちがやらなければいけないことはここまで。これ以降は残った人たちが作っていく』
「まぁ、そうかもしれねぇけどさ」
槇も不満を口にした。
「オレ達が来た意味があったのか?」
空を見上げて呟く。
「全部壊していくだけの勇者って斬新な感じする」
「なんか、それ言われると悲しくなってきた」
自分たちが残したものなんて何かあったのだろうか。
知っている人たちは、ほぼ皆死んでいった。
『そう、落ち込むな。これでも1番よかった未来だよ』
「これでかよ。ってか、未来予知できるの?」
『……なんども繰り返した。この日々を』
彼女はそう呟き手を前に出した。
『そろそろ、ボクが時間だよ。その前に君たちを元の場所に……』
「ちょっ! 勝手に!」
『…………勝手さ。君たちが来たこの世界は、この世界の終わりを知っている』
「意味わかんねぇよ!」
『それが、このあとすぐさ』
「はぁ!?」
その瞬間どこかで爆発する音がした。
『はじまった』
「待てよ! なんだよこれ!」
『だから言っただろ。ここからは、君たちの力が必要の無い世界』
「そんなこと言ったって! 少しくらい手伝わせろよ!」
『ダメ。君たち死んじゃうから』
指を鳴らす。すると3人はあとかたもなく消えていった。そこには誰もいなかったかのように。
『ありがとう。とても助かったよ。またどこかで会おうね。きっと会えるさ』
中央はなんの前触れもなく巨大な爆発を起こす。火の海と化し辺りに生を見出すことが出来ない。
『さぁて、最後の仕事だよ』
『あ、ティエル……』
『本当に会えたわね』
『いひひ。寂しかったんだぞ!』
『なにが寂しいだ。自ら先に行きやがって』
『そんなことはあとだ』
『そうそう。さっさと、見つけに行かないと。精霊に認められた4人を……』




