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華甲二年の再会  作者: 有嶺 哲史
第一章 春、夏、秋
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第10話 封筒の封筒

 おれ(有嶺)が彼等の陰謀の第三段を潰すためには、そこで起こることを詳細に漏れなく記録できる動画撮影機材が必要になる。

病院カメラは解像度が低すぎるしいつか誰かに取り去られる恐れがある。

必要な機能、性能などを考えて部品を決定して自作するのだ。

それは楽しかったが、当時は今のような安い部品が溢れていなかった。

ひとつひとつが今の十倍以上の値段だった。

費用は自腹だ。

これは痛かった。

理由は省略するが、おれはあれほどこき使われたのに昇進が遅く給与も退職金も少なくて貧乏だった。

比良野は転進して立派な人生を掴んだがおれは定年まであの会社に残ってよかったのかどうか、悔いが残った。


 しばらくして美矢子から作戦への同意と問題の検査日が知らされた。

一か月を切っていた。

比良野に我々の対策を詳しくは言っていない。

若いころ向こう見ずだった彼に罠にひっかかる寸前までいってもらう必要がある。

ボスの妻の秘術によって比良野の精神がもし誑かされたら罠に引っ掛かる。

そのときおれには手が無い。

弓美子のそばでこの陰謀に関与している美矢子だから何か知っているか、手が打てるか、と聞くと


「ふーん、洗脳の解除ね。あの、比良野さんには昔から仲のいい女医先生がいると聞いたけど、二人はどれくらい親密なの?」


「かなり親しいが深い関係かどうかは知らない。女医の心の中は確認できない」


「へっ、へっ、へっ、それがいまだにわからないなんてあなたらしいわねえ。比良野さんにはもっと親密な女性はいないの? 恋人とか愛人とか。肉体関係があるともっといいけど」


「いない。かれはカタブツなのだ」


「カタブツじゃあ仕方ない、彼女を巻き込むか……すぐ後であなたに手紙を送るわ。その中にもう一通封筒を入れてあるから、それを比良野副院長に手渡してね。私が今回の選挙で彼の味方になっていることを、今回あなたから詳しく説明して欲しい。うまくいくと思うわ」


素早い回答で、おれには何をしようとしているのか見当も付かなかった。

比良野には美矢子の名前を二度出していた。

若い頃に会社で弓美子が自分の手首に〝ミイア〟とメモ書きした時と、最近敵の陰謀について彼と話した時だったが彼は憶えていなかった。

それだけの僅かな関りだけで、比良野にとって知らない女だ。

手紙同封の件は言われた通りにするとおれは約束した。

高校の頃は憧れの眼でおれを見上げるかわいい少女だったのに今やおれにも意味の解らない策を即座に思いつく人間に成長していた。

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