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銀の怪盗は真夜中に覚醒する  作者: 黒瀬 蓮


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2/20

偶然か、必然か

翌朝。


スマホが耳元で鳴っている。

ぼんやりと手を伸ばし、音を止める。


「……ん……今、何時……」


画面を見る。

7時30分。


「!?」


一瞬、固まる。

慌ててベッドから起き上がる。

制服に袖を通しながら、部屋を飛び出す。


階段を駆け下りて洗面所へ向かう。

顔をざっと洗う。


「……やば」


寝ぐせを軽く整え、キッチンへ向かう。


母が振り返る。


「母さん!なんで起こしてくれなかったのさ!」


「何度も起こしたでしょ!」


「え……?」


「3回は起こしたわよ!」


「……マジか」


棚の上の腕時計に目が止まる。


「……まあ、つけとくか」


腕につける。

カチッ。


「おっピッタリじゃん!」


「紫音ー!遅れるわよ!」


「やべっ」


食パンをくわえる。

カバンを掴む。

カバンは半分開いたまま、靴を履く。


「行ってきまーす!」


「ボタン、ちゃんと止めなさいよー」


「へーい」


軽く返事をしてから外に飛び出す。


———


教室。


息を切らしながら席に滑り込む。


「……セーフ……」


「ギリギリかよ!」


後ろから大地の声。


「朝は弱いんだよ」


そう言って机に突っ伏す。


「……ねむ……」

そのまま目を閉じる。

担任の声が遠くに聞こえるが、意識はすぐに沈んでいった。


———


昼休み。教室。


キーンコーン、カーンコーン

昼休みのチャイムが鳴る。


肩を揺すられる。


「いい加減に起きろ、昼休みだぞ?」

大地の声。


「……え?」


顔を上げる。


「もう授業終わったのか?」


佐藤が笑う。


「担任が耳元で怒ってても起きなかったからな」


山田が肩をすくめる。


「すげぇよ」


「てか飯食おうぜ」


「あ、ああ……」


カバンを探る。


「……ん?」


手が止まる。


「……ない」


「忘れたのかよ?」


「……みたいだな」


「珍しいじゃん」


大地がニヤっとする。


「紫音でもそんなことあるんだな」


「うるせぇ」


小さくため息をつく。


「購買行ってくるわ。先食ってて」


大地が手をひらひらさせる。


「おう、頑張ってこい」


佐藤が笑う。


「購買部は戦場だぞ」


「マジかよ」


軽く返して教室を出る。


———


購買部。


人で溢れている。


「ちょ、押すなって……」


人の隙間を縫って進む。

手を伸ばす。

コロッケパンを掴む。


そのまま抜けようとして――

ふと視線が止まる。


少し離れたところ。

一人の女子。

押されて前に出れない。


「……」


ため息をつく。


もう一度、人の中へ。

メロンパンを掴む。


カウンターへ。


「おばちゃん、二つ」


「はいよー!」


パンを受け取る。


(……パン一個じゃ足りねぇけど)

(まあ、金欠だし仕方ねーか)


女子の前へ。


「ほら」


「……え?」


「何で……?」


目を丸くしてこちらを見ている。


挿絵(By みてみん)


「いや、メロンパンめっちゃ見てたから」


「……!」


顔が赤くなる。


「あ、ありがと……」


「別に」


手を振り、そのまま去る。


その女の子はパンを見つめる。


「……あっ、お金……」


「どうしよ…」


そう呟きながら、

彼女はメロンパンを両手でそっと包み込んだ。


———


放課後。教室。

大地が机に突っ伏している。


「……どうすっかな……」


シャーペンを回しては止める。

また回す。落とす。


「……はぁ……」


落ち着かない。

紫音が少し呆れたように見る。

(……何やってんだ、あいつ)


少しだけ間。


「……声かけるか」


立ち上がる。

その時。


「黒川くん」


振り返ると、少し緊張した様子で昼間の子が

立っていた。


「パンのお金、返したくて……」


その声に反応して、大地が顔を上げる。


目に入った瞬間――


「し、白石……っ」


声がわずかに裏返る。

一瞬、空気が止まる。


「……ん?」


紫音がその名前を拾う。

(白石……って、たしか……)

視線を横に流す。


大地の顔を見る。

明らかに動揺している。

視線が泳ぎ、落ち着きがない。


「……ああ」


小さく納得する。

(なるほどな)


「そんなん、いいって。ついでって言っただろ?」


「でも……」


柚希が言いかけて、言葉を飲み込む。


少しだけ間。


紫音が横目で大地を見る。

期待に満ちた表情。


(……分かりやす)


小さく息を吐く。


「んー、じゃあさ」


「帰り、時間ある?」


「ちょっと俺らに付き合ってよ」


一拍。


「……な?」


少しだけ間を置いて――


「な?大地?」


紫音が大地を見る。


その視線を受けて、大地がビクッと肩を震わせる。


「……え?あ、ああ!」


慌ててうなずく。


柚希の目が揺れる。


「……え?」


戸惑ったまま、言葉が続かない。


(頼む……頼む……!)


大地が、心の中で強く願う。


柚希が、小さく息を吸う。


「……うん……」


一度、視線を落とす。

指先をぎゅっと握る。

少しだけ迷うように。


それから――


「……わかった……」


小さくうなずく。


その瞬間。


「やった!!」


教室の後ろから、大地の声が響く。

紫音が、軽く振り返る。


「うっせー!声でけぇよ!」


「……っ!」


大地が慌てて口を押さえる。

静かな教室に、少しだけ余韻が残る。

紫音はそのまま前を向く。


「じゃあ、行こうか」


校門を出る前。

誰かの視線を感じた。


振り返る。

けれど――


「どうした、紫音?」


「いや……何も」


「行こうぜ」


「ああ」


(……気のせいか)


そのまま、歩き出した。


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― 新着の感想 ―
文章が軽快で読みやすいです。 物語の展開もテンポ良くて面白いです!
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