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プロローグ
ちょっとヘンテコな物語です。
完結作品の【色喰らい】がここでも友情出演(?)しております。
- プロローグ -
この都市には、色がない。
青も赤もあるのに、
緑だけが、抜け落ちていた。
かつては、緑も、あったらしい。
草や葉や、野菜の色。
でも。
いつからか、それらは、誰にも“見えなく”なった。
クレヨンは24色そろっているのに、使えるのは6色だけ。
「7色のクレヨン属」という呼び名は、もう形式だけのものだった。
記録は残っている。でも、実物がない。
保存はできる。でも、使うことはできない。
だからこの都市では、
緑色は記憶喰い──色喰らいに“喰われた”色として、ただひっそりと、語り継がれている。