↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました  作者:   *  ゆるゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/153

しゅうりょう?




「とびきりおいしーどーなつを、トマに揚げてもらいますね!

 ヨニに、とびきりおいしーお茶を淹れてもらいます!」


 にこにこ胸を叩くキーアに、色とりどりのちっちゃい精霊さんたちが、さわさわした。



『い、行ってあげても、いーけど?』


 ぷいっと横を向く水の髪が、さらさら揺れる。


『……俺も』


 ぽそりとつぶやく地さまのまなじりが、ほんのり赤い。


『僕も!』


 ぱちぱち、ちいさな火花が楽しそうに炎さまの周りで弾けてる。


 水さまも、地さまも、炎さまも、来てくれるみたいです!



「ありがとうございます! トマとヨニと一緒に、とびきりのどーなつとお茶を用意して、お待ちしていますね!」


 笑うキーアの背中に、ぴとりとくっついた闇さまが、赤い頬でささやいた。


『……きー……あり、がと……』


 ぎゃ──!

 か──わ──い──い──!


 もだもだしたキーアは、勿論拝んだ。

 素早く立ち直って、笑う。


「いっしょに、お話してみるの、がんばってみましょうね」


『うん!』


 きゅう


 抱っこしてくれる闇さまが、めちゃくちゃ、かわいーです!






 キーアの視界が、明るくなる。

 世界のざわめきが、耳に降る。


「キーア!」


 ルゥイの声がして、顔をあげたキーアに、心配そうにはちみつの髪が揺れる。


「だいじょうぶ? 何も聞こえてないみたいだったけど、体調がわるい?」


「…………あ、え、と……」


 ……白昼夢、だった……?


 ぽかんとするキーアの向こうで、ハゥザ学園長とフィリ先生が笑う。


「逢えたみたいだね」


「化け物仲間に、ようこそ」


「…………え……?」


 首を傾げるキーアに、フィリ先生は微笑んだ。


「魔法を使ってごらん」


「……え、あの、でも……闇の上級魔法の魔法陣は、難しすぎて描けない、です……予習をちゃんとしていなくて、ごめんなさい!」


 涙目なキーアに、フィリは喉を鳴らした。


「言わなきゃ、わからないのに」


「あぅう……で、でも、せっかくの特別講義で、講師の方や大魔法使いのフィリさまが教えてくださるのに、ごめんなさい」


 予習が必要だという気持ちが抜けていました。


 予習なんて紀太は学校に通ってるときに、したことがなかった。勿論復習も。試験は一夜漬けで切り抜けられなかったものに、哀しい赤が輝いた。

 授業を聞きながら教科書を読んで理解するのが、学校だと思っていたよ。

 ごめんなさい!


 しおしおしょげるキーアの頭を、フィリのちいさな手がぽふぽふしてくれる。


「闇の精霊さんに、お逢いできた?」


「は、はい! ……あの、でも、もしかして、白昼夢……?」


 都合のいい夢を見ちゃったのかな?


 首を傾げるキーアに、フィリが微笑む。


「闇の精霊さんに、お願いしてごらん。魔法を使いたいって」


 こくりと、うなずいたキーアは、虚空を見あげる。



「あ、あの、闇さま、俺の魔力を差しあげるので、もしよかったら、魔法を使わせてください!」


 魔法陣も、精霊語の詠唱も、何にもない。


 だから、何にも起こらないはずなのに。


 キーアの前に魔法陣が浮かびあがる。

 きらきら輝くのは、闇だ。



『きー、なんの、まほう、つかいたい?』


 やさしい、厳しい、冷たい、あたたかな声がする。

 ぴょこんとキーアは跳びあがる。


「闇さま! え、えと、ちょっと暗くなる魔法、とか?」


 さっきネィトが使ってたのの、ちっちゃい版みたいなのとか!


『わかった』



 ギュァアァオォオオオ──!


 闇が、開く。


 くらりと、めまいがした。

 身体の奥底から、すべての魔力が吸いあげられてゆく。


 膨大なキーアの魔力を贄に、異界の扉が、開かれる。



「うぎゃあぁあァア──!」

「ま、魔界!?」

「待って待って待って、ほんとに世界の終わり!?」

「うぁあぁアァアア──!」


 絶叫が轟いて、キーアはあんぐり口を開ける。


「ま、ままままま魔界!?」


『ちょっと、くらい』


 いやいやいやいやいやいや!


「と、閉じてくださいぃい! 闇さま! それ、開いたらだめな、あれです──!」


 ぷくりと闇さまが、ふくれるのが、見えた気がした。


『みな、やさしいよ?』


「ま、魔界の、しょ、瘴気が、人間には猛毒なので!」


『……そか』


「そなのです! 閉じてください、お願いしますぅう──!」


『……わかった』


 しょんぼりしてる!

 ごめんなさい!


「後で、もっと簡単でかわいい闇の魔法を教えてください!」


『うん!』


 ふわふわ闇さまが笑ってくれたのが、見えた気がした。



 キュアァアァア──!


 異界の扉が、閉じてゆく。

 渦巻いて噴きあがろうとしていた瘴気が、消えてゆく。



 絶叫をあげて逃げ惑っていた皆が、止まった。


 大陸に名だたる大魔法使いフィリの頬が、引きつってる。



「……いきなり闇魔法の究極奥義とか、やめてくれる? きみに教えること、何もなくなったよ」


「ロデア大公立学園、魔法科の修了書をあげるから、二度と魔界の扉を開かないで──!」


 講師の先生に泣かれました。



「……いやあ、魔法科の特別講義を、キーアが初日で修了しちゃうとは思わなかったなあ」


 いつもきらっきらで余裕な学園長ハゥザまで、引きつってる。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。