尊い
闇魔法と光魔法の対決に、キーアは、ぴょこんと跳びあがる。
これこそ『悪役令息と決闘だ!』の世界!
主人公 VS 悪役令息だよ!
ちっちゃくて、愛くるしさ全開のふたりが、バチバチしてるの、かわいい!
いや、ネィトは『どしたのかな?』ってふしぎそうで、マェラが『僕だって、やれるんだぜ!』って感じだけど、そういうバチバチも、かわいい!
思わず拝んだ。
「えへへ♡ きーちゃんが僕のこと祈ってくれるの、初めてだよね? うれしい」
ふわふわ闇の髪を揺らして、真っ赤な頬で照れ照れする伴侶(予定)が、かわいいです……!
もだもだしてたら、後ろから、ぎゅっとルゥイに抱っこされました。
めちゃくちゃいい香りがするから、すぐわかるよ。
突然あったかい腕に包まれて、きょとんとしたキーアは、ルゥイの腕のなかから若葉の瞳を見あげる。
「ルゥイ? どしたの?」
若葉の瞳が見開かれて、ふうわりまなじりが紅に染まってゆく。
「……ルゥイって、呼んでくれた」
ぎゃあぁあ!
大公殿下の第一子を、呼びすててしまいましたよ、こんなにたくさん人がいるところで──!
ロデア大公立学園の授業中だよ!
あわあわするキーアを、ぎゅむぎゅむして、ルゥイがとろけるはちみつみたいに笑ってくれる。
抱きしめてくれる腕があったかくて、とろけるような香りに包まれて、ルゥイがあんまりうれしそうに笑ってくれるから、キーアの頬もぽわぽわ熱くなる。
不敬とか、そういうことじゃなくて……
「……やじゃなかった?」
そうっと聞いたら、あまいささやきが、耳にふれる。
「うれしい」
さらさらのはちみつの髪を揺らして、ふわふわ紅い頬で、笑ってくれる。
輝かしすぎて、うっとりして、勿論、拝みました。
尊すぎる──!
「い、いちゃいちゃしたら、だめなんだから!」
ぎゅうう。
ルゥイとキーアを引き離すネィトに、フィリ先生が、うむうむしてる。
「きみはあれだな。ハゥザと違う種類の、魔物だな!」
「人間です!」
拳を握ってみた。
「あと、名前はキーアです」
「わかった」
こっくり、うなずくフィリ先生は、たぶん微塵も誰の名前も覚えてないと思うな。
人の名前を覚えるのが苦手なんですね、わかります!
キーアと離されて、ちょっとふくれたルゥイは、どよめく大公立学園を見あげた。
目の前で、いちゃいちゃしてたから、フィリ先生と同じでちょこっと、おこだったのだろうハゥザを振りかえる。
「さきほどマェラが行ったのが通常の光魔法の発動ですよね? でも叔父上は一瞬で魔法を発動させた。どうしたらあのようなことが可能になるのでしょうか?」
面白そうにハゥザの白藍の瞳がひらめいた。
「んー、かわいールゥイにだけ、ないしょで教えてあげるけど」
寄せられたルゥイの耳に、ハゥザがこしょこしょ耳打ちしてる。
めちゃくちゃ輝いてる。
え、なに、最っ高にきらっきらだよ──!
勿論、拝んだ。
どうしよう、鼻血が出そうだよ。
禁断かもしれないけど、尊すぎる──!
「あ、キーアも知りたい?」
拝んでるのが『俺にも教えてください! お願いします!』に見えたらしい。
おいでおいでと招いてくれるハゥザに、ちょこちょこキーアは近づいた。
凶器なほどの顔力を誇るハゥザに近づくなんて、おそろしくてたまらないはずが、平気になってる。
入学式の時は冷や汗でダラッダラになってたのに、今はふつうだ。
……ルゥイがいてくれるからかな?
首を傾げたキーアは、ハゥザがきらっきらの、おっきいわんこに見えることに気づいた。
『め!』
叱ったら、聞いてくれると信じてる!
………………たぶん…………!




