まいあさ!
トマが出してくれる馬車で、キーアはネィトをお迎えに行って、一緒に学園に通うことになりました!
ヤエさまの服はちゃんと返却して、学校に通うときは、ヨニが可愛くパッチワークしてくれた、前のキーアのお古だよ。
魔法とかで、焼け焦げるかもしれないからね!
「いってらっしゃいませ、キーアおぼっちゃま」
ぽふぽふキーアを完璧に整えてくれたヨニが、お見送りしてくれる。
「いってくるね、ヨニ!」
言える人がいるしあわせを噛みしめる。
しゃっと扉を開けてくれるトマに、ありがとうと微笑んだら、トリアーデ家へと出発だ。
「おはようございまーす。ネィトくんいますかー」
小学生のときみたい!
しかも格上のトリアーデ家で堂々とやるキーアの心臓は、かなりな、つよつよだ。
「うわ! あ、朝から迎えに来てくれたんだ」
ネィトのお兄ちゃんティトも、これから大公立学園なのだろう、馬車に乗りこむところだったようだ。
「毎朝来ます」
親指を立ててみた。
目を泳がせたティトは、うつむいた。
「……その……ネィトのこと……感謝しなきゃって、思う、けど……僕たちは……こわくて──」
『余計なことしやがってこの野郎!』叫ばないティトは、やさしいのだと思う。
だからネィトが殺されないように、生きてゆけるように助力してくれた。それでも紫の目を見るのは、こわいのだろう。
小さなころから怖かったお化けを、急に『迷信です。怖くないですよ』って言われても、やっぱり暗いところが怖いみたいに、時間が掛かってしまうことなのかもしれない。完全には、皆の心から消えてなくならないのかもしれない。
「話してくださって、ありがとうございます。
俺とネィトがふつーにしてるのを遠くから見て、ちょっとでも怖くなくなってくださったら、うれしいです」
にこりと笑った。
「ネィトのこと、迎えに行っていいですか」
「……あ、あぁ、もちろん。……その、ありがとう」
ちいさな声で、言ってくれた。
「こちらこそ。ネィトが生きるように尽力してくれたこと、ありがとうございます」
丁寧に、頭をさげる。
「わあ! きーちゃん、ほんとに来てくれた!」
ぽてぽて、走るのがとても苦手な感じでネィトが駆けてくる。かわいい。
「おはようございます、ネィトさま。ちょっと失礼しますね」
しゃっと御者席から降りたトマが、ネィトのもしゃもしゃの髪をブラッシングしてあげた。
さらさらになったよ。
「おはよう、トマ、ありがとうー」
照れ照れ笑うネィトが、かわいい。
「おお、つやつやだ」
「えへへ。おはよー、きーちゃん。お迎え、ありがとう」
真っ赤なほっぺで、ネィトが笑う。
闇の髪がさらさら揺れて、紫苑の瞳が、きらきらしてる。
「おはよー、ネィト。一緒に行こうな。この馬車でいい?」
「きーちゃんの馬車がいー!」
手を繋いで、馬車に乗ろうとするキーアとネィトに、ティトが目をまるくする。
「……ほんとうに、平気なんだね」
キーアは、胸を張る。
「ネィトの目は、世界でいちばん、きれいです」
断言した。
「……きーちゃん」
ぐしぐしするネィトを、ぽふぽふ抱っこする。
「よしよし。だいじょうぶ。初日から遅刻は痛いから、馬車のなかでゆっくりしような。
トマ、出発!」
「はい、キーアおぼっちゃま!」
キーアはティトを振りかえる。
「ティトさま、お先ですー」
「お先に失礼します!」
皆で敬礼して、馬車に乗りこんだ。
ティトがかるく、手をあげる。
目を伏せたまま、ネィトがちいさく手を振った。
ティトの瞳が、揺れる。
大きく振られた手に、キーアも大きく手を振った。
トマが操ってくれた、あんまり揺れない馬車で大公立学園に着いたら、しゃっとトマが飛び降りて扉を開けてくれる。
先に降りたキーアは、ネィトに手を差しだした。
伴侶(予定)だからね。
スマートにエスコートしないとね!
ないがしろにされてるとか噂が立ったら、ネィトがかわいそうだから!
「ありがとう、きーちゃん」
ふわふわ紅い頬で、キーアの手をとったネィトが降りてくる。
「ふたりで登校してきた──!」
ルゥイとレォの絶叫に、ネィトと一緒に跳びあがる。
「……キーアを迎えに行ったら、もう行ったってヨニに言われたんだけど……」
「ひどい」
ルゥイとレォの目が、うるうるしてる──!




