おだやかに
『悪役令息と決闘だ!』では、魔法科に行くか、騎士科に行くか選択した後、入学式があって、ゲームシステムの説明のチュートリアルがあった。
魔法科に行くなら、魔術、学術、芸術からどの講義をどれだけ取るかを選択して、放課後の自主活動で、魔力、学力、社交、家事のどれをあげるかを選択する。
騎士科に行くなら、武術、防衛術、戦術から講義を選んで、自主活動で、筋力、耐久力、勇敢、家事、のどれをあげるかを選ぶんだよ。
1週間分を組んで、それをずっと続けてもいいし、組み替えてもいい。
クノワ先輩を攻略したいなら、学術、学力がMaxじゃないとだめ。インテリ眼鏡仕様だよ。
ガダ先輩狙いなら、武術、筋力、勇敢をMaxまで高めないと、ハッピーエンドにたどりつけない。脳筋仕様だ。
誰を攻略したいのかによって、取る講義と上げるパラメータを変えてゆくんだよ。
レォを攻略したいなら、攻略対象人気No2なのに、攻略難易度もNo2という厳しい仕様なので、定期試験で優秀な成績を収め、さらに筋力、耐久力、家事を高め、会話の選択で凛々しさも高くならなければいけないので、1巡目では、かなりきつい。ほぼ無理だ。
ルゥイを攻略したいなら、攻略対象人気No1なのに、攻略難易度もNo1という泣ける設定なので、魔法科で上げられる全部のパラメータがMax近くないと無理なので、1巡目では不可能だ。見てるだけ。
最初に入学式であいさつしてくれて、ずっとめちゃくちゃやさしくしてくれるのに、どんなにアタックしようと友情エンドがせいぜいで、まったく全然らぶらぶになってくれないルゥイ!
泣ける仕様だ。
2巡目からは、パラメータに上昇補正がつくのと、1巡目のときに一番高かったパラメータを引き継げるので、だいぶ楽になってくるんだよ。
何巡もして、やっとたどりつけるルゥイのハッピーエンドには、涙が出た。
あの苦労のおかげで人気No1になったのかもしれないというハード設定だった。
ここは『悪役令息と決闘だ!』の世界っぽいけど、顔も名前も声もないはずのモブに、ちゃんと顔も名前も声もあるので、ちょっと違う世界になっているのかもしれない。でも、まさかぐるんぐるん繰りかえしたりはしないと思うので、1巡目だ。
2巡目は、ない。
なので、ルゥイ攻略とレォ攻略は、不可能と思っていい。間違いない。
隠しキャラの将軍を出現させたい場合は、確か、騎士科のパラメータを満遍なく上げる、だったと思う。
これもかなり難しい設定で、さすが隠しキャラなんだけど、どれかが突出したらだめなんだよ。ぜんぶ、満遍なく、おんなじくらい優秀じゃないとだめ。
出てきてさえくれない。
ひどくない?
現実だと、無理じゃない?
まあルゥイみたいに、全部のパラメータMaxまで上げろとかいうほど涙があふれないけど!
それに自分の立ち位置、悪役令息の伴侶(予定)だからね。
主人公じゃないからね。
がんばってパラメータ操作しても何ともならないかもしれないけど、もしかしてもしかしたら逢えるかもしれない可能性にかけたいよ──!
「トマ、俺、筋力と耐久力と勇敢と家事が強くなりたい!」
希望してみました。
「ぜんぶですね」
ちょっと引きつったトマが、胸を叩いてくれる。
「キーアおぼっちゃまなら、やれるはずです! 一緒にがんばりま、しょー!」
「僕、家事と家庭菜園のお手伝いする!」
ネィトも手伝ってくれるらしいよ、ありがとう。
「家事と勇敢ならお手伝いできますよ、キーアおぼっちゃま!」
勇敢も手伝ってくれるヨニが、さすがスーパー執事だ。
ふつうは取る講義を選べるはずで、魔法科のネィトが楽しそうに魔術、学術、芸術の講義からどれを取るか考えている隣で、キーアの肩は落ちる。
キーアの前にあるのは『特別講義』一択だ。
選択の余地がないよ!
というわけで、大公立学園の授業は、必死で喰らいつこう。
お家では、トマとヨニとネィトと一緒に鍛錬を重ね、家事をがんばり、家庭菜園の拡充を目指すことにしました!
「じゃあ毎日、迎えに行こうか。ネィトの家まで。ちょっとは圧になるかも」
「……僕は、すごくうれしいけど、気にしないでね。……家の人たちは、やっぱりこの目がこわいみたいだから」
うつむくネィトを抱きしめる。
『絶対に守ってあげる』
言いたいけど、そんなことを口にしたら、ネィトの目の前で死亡するフラグが立つとしか思えないよ!
伴侶(予定)が自分をかばって、目の前で死ぬとか、さいあくなトラウマになっちゃうよね。自分が死ぬことより、そっちのほうが心配だ!
だって、1回死んで悪役令息の伴侶(予定)に転生したみたいだから、2回目死んだら、主人公になりそうじゃない!? とか気軽に考えたらだめかもしれないから、生き残れるようにがんばろう!
これで最後かもしれないからね!
「もしほんとに魔王が来たら、俺も一緒にお話するから」
おだやかな表現にしてみました。
「ありがとう、きーちゃん」
ふわふわ朱い頬で笑ってくれる伴侶(予定)が、かわいいです。




