表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました  作者:   *  ゆるゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/153

おかしい?




 キーアの言葉に、ネィトは紫の瞳を瞬いた。


「……こーりゃく……?」


 ふしぎそうな目には、初めて聞いた言葉に対する戸惑いだけがあった。

 嘘も、隠してる素振りも『いひひひひ。知ってるよ』な、ほくそ笑みもない。


 なるほど、ネィトは転生者じゃない。


 オンライン小説王道の、転生者の悪役令息じゃないみたいだ。


 悪役令息の伴侶(予定)が転生してるからね。

 王道から、かなり外れてる。

 理解したキーアは、かみ砕いて説明してみた。


「すんごく、かっこいー人を見ると『きゃー♡ きゃー♡』しちゃう?」


 はっとネィトが息をのむ。


「反射……!?」


 きもちわかる!


 かっこいー人を見ると、つい拝んじゃうよね!


 うむうむするキーアの前で、ネィトの眉が下がった。


「僕、きーちゃんが、だいすきなの。浮気とか、したくないのに、なんか、かっこいー人を見ると『きゃー♡』って、あたまのなかが、♡でいっぱいになっちゃって、自分の行動とか、言動とか、制御できなくなっちゃうの」


 そ、それはちょっと、気持ちわかる範囲を超えてる……?


「……そ、そうなの?」


 こくりとネィトは頷いた。


「かっこいー人に反応しちゃうんだと思ったの。でも、お兄さまとか、おじさまとか、大公殿下とか、何ともないの。頭が♡でいっぱいにならないし『きゃー♡ きゃー♡』したくならない。おかしくない?」


「おかしい」


 キーアは深く頷いた。

 前のキーアも、ぷよぷよんのお腹をひっこめたくなるほど、大公殿下は輝いていた!


 肩、ぽんぽんしてくださったんだよ。

 至福だったよ。


「見あげるだけで、ひざまずきたくなる顔面に『きゃー♡ きゃー♡』したくならないっていうのは、周りがすごすぎて、ネィトの感覚が間違ってる?」


 首を傾げるキーアに、ネィトが涙目だ。


「ひ、ひどい、きーちゃん! そんなことないもん! ちゃんと、かっこいーのはわかるけど、『きゃー♡ きゃー♡』しないの」


 反対側に、キーアは首を傾げた。


 前キーアの知識によると、ネィトのおじさまは、ロデア大公国で、一番顔がいいと謳われる、ハゥザ大公弟殿下だ。


 その次くらいに顔がいいと囁かれているのが、やっぱりネィトのおじさまであるロデア大公殿下だ。


 その輝かしい大公殿下の末の弟が、ネィトのおかあさんだ。

 魔法で子どもができるからね。

 ルゥイ殿下は、ネィトのいとこにあたる。


 だから今のところ、トリアーデ家が大公家に次ぐ家格となっていて、ネィトには誰も刃向かえないんだな。


 それで文句が、伴侶(予定)に来ると!


 BLゲームでは、ルゥイ殿下まで伴侶(予定)に文句を言いに来てたよ。

 いとこが可愛くて、言いにくかったのかもしれない。


 ルゥイ殿下が、いとこなんだよ?

 すんごいよね?

 もはや顔力の嵐じゃない?


 周りが、あんまりにも輝かしい顔ばかりだから、ネィトの感覚がおかしくなってるのかな?


「誰に『きゃー♡ きゃー♡』したくなっちゃうの?」


 きゅっと唇を噛んだネィトは、呟いた。


「……ルゥイと、レォさま」


 なるほど、ルゥイ殿下は呼び捨てで、レォは『レォさま』か。

 いとこって、素晴らしいな!


 もだもだしたキーアは、そうっと聞いてみる。


「騎士科のガダ先輩には?」


 紫苑の瞳が瞬いた。


「誰?」


「知らない?」


 こくりと頷くネィトに、キーアはうなる。


「もしかすると、BLゲームの強制力が発動してる、のか、な……?

 ネィトの意志と関係なく、攻略対象に『きゃー♡ きゃー♡』しちゃう?」


 ネィトは細い眉をひそめた。


「『こーりゃくたいしょー』がわかんないけど、おかしいのは僕だけじゃないんだよ! きーちゃんだって!」


「……え……?」


 きょとんとするキーアに、ネィトの紫苑の目がうるうるしてる。


「こんなに話してくれるの、どれくらいぶりか、わかってる?

 最近なんて、ほんとに無言で、僕が、わざと酷いことを言おうと、やさしいことを言おうと、何を言ったって、何にも言ってくれなかったんだよ!

 別人みたいになってく、きーちゃんに、逢いたくなくなって……」


「…………そう、なの、か……?」


 ヨニとトマを、振りかえる。

 ふたりはそろって、眉をさげた。


「……確かに、キーアおぼっちゃまは、ふさぎこんでいらっしゃるご様子で……」


「頷いたり、首を振ったり、意思表示はしてくださるのですが、どんどん口数が少なくなってこられていました」


「ネィトさまの暴行で頭が2倍になられたときは、ほんとうに心配したのですが、とてもお元気になられて、ちいさいころのキーアおぼっちゃまが、戻っていらしたようで……うれしくて……」


 涙ぐむヨニを、抱きしめる。


「うわあん、ヨニ、心配かけてごめんね……!」


「……キーアおぼっちゃま、俺も心配していたのですが……さっきも、御者をしていたので、ぽんぽんしていただいていません……」


 トマが涙目だよ!


「うわあん! トマ、ごめんね! 心配、ありがとう!」


 ぎゅむぎゅむ抱きしめて、しなやかな筋肉で盛りあがったお背なをぽんぽんした。



「………………僕は……? ぼ、僕も、きーちゃんのこと、ずっと、ずっと心配してたんだから──!」


 上目遣いのうるうる目のネィトが、悪役令息と思えないくらい、可愛いんですけど──!



「あれ、ネィト、悪役令息だよね? 可愛さ、振り切ってない? なにこれ」


 もしゃもしゃの髪をあげたら、とんでもなく可愛いとか、王道だよ!


 これは主人公と、真剣に闘える悪役令息だ──!



「ぼ、僕のこと、かわいーって言ってくれるの、きーちゃん、だけ、だよ」


 ちょこんと小指を握られました。



「……だっこ……」


 うりゅうりゅの涙目の、おっきな瞳の上目遣いで、見あげられました。



「え、ちょ……なにこれ……! 伴侶(予定)が、かわい──!」


 ぎゅむ。


 抱っこしてみた。



「ふぇえぇええ──! きーちゃんだぁあぁああ──! 戻ってきてくれたぁああ──!」


 号泣が再開されました。


 防水かっぽう着、装着だから、だいじょうぶ!


 ちっちゃなお背なをぽふぽふしながら、キーアは考える。



「……口数が減って、無口になってた……?」


 前のキーアの記憶は、ほんとうに、両手にドーナツを持って、食べかすをくっつけてることくらいしかない。


 いくらドーナツを愛していて、どーなつのみで生きてゆく決意だったとしても、それは記憶としてあんまりにも偏りすぎていると思う。たぶん。


 BLゲームで、文句を言われるくらいしか出て来なかった、悪役令息ネィトの伴侶(予定)をよくよく思いだしてみた。


 主人公のルート確認や、攻略対象の親密度が上がったり下がったりする言動の振りかえり、悪役令息の行動ばっかり気にしてて、伴侶(予定)な顔も名前もないモブのことを、あんまり気にしてなかったよ。


 あまりにもモブすぎるから、全く関係ないと思ってたけど……


 うなれ、紀太の記憶──!


 チカチカ、頭の奥が閃いた。



 ルゥイ殿下が


『ネィトが奔放にふるまうのは、伴侶(予定)であるきみが、ネィトをしっかりつかまえていてくれないからじゃないかな?』


 眉をさげて、残念そうに『なんとかして』訴えるのに、悪役令息の伴侶(予定)は


『………………』



 レォが


『伴侶(予定)が、他の男に声をかけるのを放置するのは、どうかと思う』


 凛々しい眉をしかめるのに、悪役令息の伴侶(予定)は


『………………』



 ガダ先輩が


『ネィトの伴侶(予定)なんだろう? しっかりしてくれよー。俺が不倫してるみたいで、いやだー』


 ちょっと泣きそうになってるのに、悪役令息の伴侶(予定)は


『………………』



 そう、名前も顔もないモブは、声も削られていたのです!

 フルボイスのゲームだったから!

 どうでもいいモブのために、イケボの声優さんに声をあててもらうとか、ありえなかったから!


 そういう理由で無言だよ。


 モブキャラでも、従僕さんとか声のある人もいたのに!

 悪役令息の伴侶(予定)に、声はなかった。


 顔も名前も声もないモブ──!


 BLゲームで悪役令息の伴侶(予定)が役目をきちんと果たすように、強制力で、前のキーアが無言にシフトしていったってこと?


 何を言われても、ぼーっとして、無言の、だるんだるんになるように、強制力が働いてた?


 それを、ネィトが、ごちんして、紀太の記憶がよみがえって、強制力がほころびはじめた……?


 

「僕もおかしいけど、きーちゃんもおかしくて……頭を打ったら、なんか、記憶がよみがえったりするって、本で見た、から……ぷんぷんした振りで、突き飛ばした、の……

 あの……ほんとに、ごめんなさい──!」


 記憶をよみがえらせようとしてくれたらしいよ。


 ようやくだけど、ちゃんと謝ってくれたよ。



「きーちゃんが、戻ってきてくれて、うれしい」



 腕のなかで、泣いてくれた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ