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お化け屋敷とメイド②

「こ、これが……お店……」

「だから言ったでしょう……」


案内されたのは小さな一軒家。

周りは確かに色んなお店がある商業区域の一角ではあるが、そのなかでかなり目立つ外観のお店。


というか、自分が想像していたよりもボロ家。

というか、ほぼ廃墟である。


「何をどうしたらこんな風になるんですか??」


「いやー今の店に移転する時にこの店を壊して新たに建てようと考えてな。その時にたまたま手に入れていた"腐敗の魔石"を置いて自然に壊そうと思ったんだよ。その方が解体費用が浮くだろう」


「でもその解体する申請を出していなかったのこの人。物件を扱っているクセにどうしてそういう事を忘れるのかしら……」


「ガハハハ!!だからその腐敗の魔石を取り除いたがもうここまで進行してな。このまましておくのももったいないから内装だけは人が住めるラインまで直したんだが……」


いや、これはムリだよー

確かに内装は直してある。でもそれギリギリラインですよね。それに外装が駄目だから外から中が見えてますよね!?


「住めるラインならまずはモージンさんが住んでみましょうか??」

「い、いやー……ほら、俺には妻が待ってていてな……」


「こんなところを進めるなんて何を考えてるんですか!!?」

「だけどよ!!こっちだってコイツを早く手放したいんだよ!!!それにこんなお店で働くメイド……繁盛しそうだろう!!?」


「それとこれは話が別ですッッ!!!!!!」


まぁ、確かにこのお化け屋敷のようなところでメイド服を着た女の子がお店をしていたら興味本位で来る人はいるかもしれないけど……それ、絶対に一時的なやつだよね……


「なんなら自分で修繕するならこの店は初期費用だけでもいいぜ」

「モージンさん……貴方いい加減に……」

「ここにしますッッ!!!!」


……………………。……あっ。

ついついタダという誘惑と響きに負けて決めちゃった………



「シズクちゃんッ!!!」

「おいおい…言っておいてなんだけどよ……本当にいいのか??」


あまりにも即決してしまった私に心配する2人。

でも言っちゃった手前もあるけど……


「大丈夫です。

その代わり直すための資材はそちらで用意してくれますよね。こんなにも酷いんですから」


「いや、それは………」


「えっ。まさか売るだけ売ってあとは知らん顔とか……そんな、そんなこと……ありませんよね??」



ここは笑顔で攻める。

こっちはそちらが早く売りたい物件を買う。

普通の物件ならともかく、元はモージンさんのお店だったところ。

その元お店がこんなお化け屋敷ならモージンさんのお店の評判は悪くなる。


実際その影響があるかは分からないけど、全く影響がない。なんてことはないはず。

特に物件に関わる仕事で、その物件がお化け屋敷を、元々その物件で仕事をしていたとなると悪い噂が立つのは自然。


それだけでも売上として大きく変わるだろう。

だからここを早く売ってしまいたい。

そしてここでミソなのが"私"だ。

私みたいなズブの素人がお店を、こんなお化け屋敷でお店をしようなら周りの人達はきっとこう思うだろう。


"イロハも知らない小娘がお店を、お化け屋敷でお店を開くなんて無謀にもほどがある。潰れて正解だ"


このお化け屋敷でお店を開いて潰れたらそれはお化け屋敷のせいというのもあるが、店主である私の手腕のせいというのも上がる。

つまりは私がお店を畳んだあとは、今よりも売りやすい物件に早変わりということになる。


だからモージンさんはほぼタダ当然で私に売ろうとしている。

まぁそんなことアイルさんも気づいている。

だから止めようとしてくれているし、モージンさんもその思惑があっても流石に気が引けるのか強く進めようとしない。


だからそこに乗っかることにした。

気に進まないお化け屋敷に私がお店を開いて上げるから、その分リフォームを手伝ってください。と……



正直初期費用だけで、リフォーム代金も肩代わりしてくれるなら私にとってはありがたい。

さて、モージンさんの反応は………


「………あぁーもうー!!!出してやるよッ!!!

その代わりちゃんとしたお店にしろよッ!!!

じゃないとこっちは損しかないんだからな!!!!」


「シズクちゃんの失敗しか考えてなかったくせに…」

「う、うるせぇ!!大体そんなこと考えてねぇーしッ!!!」


「はいはい。シズクちゃん、人手がいるなら何人かその道の人を知ってるから応援に呼ばせるわよ。もちろん費用は…」


「こっちが肩代わりすればいいんだろう!!俺が悪かったよッ!!!!」


知らないフリをすればいいのに、根からいい人なんだろう。

ただ商人としては売上のことを考えないといけないからそういう考えになってしまった。

それを悪いと思ってここまでしてくれるだけでもありがたい。


「大丈夫です。

資材さえあれば私が一人でリフォームしてみせますッ!!」


「り、リフォーム…、って……」

「……もしかして、修繕する気か!?一人でッ!!!?」


決めたつもりがまさか"リフォーム"という言葉がなかったとは……



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