リサーチ
「抽選結果を当選者様にお伝えせず、パートノイドが自分で納車……納身に訪れて愛の告白のお返しをする。O社キャンペーンの粋な計らいはいかがでしたかユウト様? 出逢いって素敵ですわよね。」
「押しかけドローン宅配って素敵ですかしら。ねえダーリン。」
トゥルミナの言いたい事は分かる。言いたくない事も分かってしまう。
何しろ過酷な競争を繰り広げてい各巨大AI企業たちだ。
兆円の単位で事業を展開する資本世界では、普通乗用車1台分の抽選企画なんてことを平気で催して庶民の注目を浴びる。でも注目を浴びるのだからその応募倍率は、N社のゲーム機が最高商品になっている100円くじみたいなもので、財布全部をカラにしても当選なんて見込めない。
当選者の素性なんて企画の関係者だろう、などと思いながら次の日には忘れていた。
いや違う。忘れられなくて、応募したことで一層パートノイドに興味が増して、俺には伴侶との生活願望が夢になっていった。その頃に、G社から軽自動車1台の低価格なパートノイドが発表されたんだ。
分かりやすく例えると。俺みたいな独身男性が、クルマ生活がしたくて抽選企画に申し込んだ。その気持ちの勢いで、頑張って軽自動車を買った。そのしばらく経ったある日、当選した普通乗用車が自動走行して俺のアパートに到着した、……という状況。
「ダーリン、不用品回収業者ならU商会が24時間、大型の家電ゴミでも引き取りに来てくれるみたい。連絡しますか?」
広告、これは広告タイムだ。ウェブ閲覧中に業者広告が入る事は何もおかしい事ではない。
「マイハニー、応募規約に則ってロウラには出荷時にユウト様とのデジタル婚姻届けがされております。ええと、最新のユウト様の婚姻情報によると……そちらにいらっしゃるG社のパートノイド様は、特にデジタル婚姻手続されてませんよね。家政婦様でしょうか。それともマネキン……失礼しました、もう一度、家政婦様でしょうか?」
知らん知らん。デジタルその届けとか知りません。そういうA社の延長保証みたいな程度の「加入も可能です」みたいな話は聞いてるけど、戸籍法制度には関係がない。
「O社のパートノイド様、私はダーリンのパートノイド、トゥルミナですわ。O社のパートノイド様、そのお話によりますとO社のパートノイド様はパーソナライズが済んでるとの事。永久セキュリティロックが掛かってる端末には価値がございません。ダーリン、やはりここはU商会に回収依頼をお勧めします。」
「マイハニー、入門機種には家政婦向けの廉価パートノイドも良いものです。でも廉価品が広く問題視されておりますのは、その会話に広告が入り込む宣伝媒体としての在り方ですわね。貴重な会話時間に無駄をお感じになりませんか?」
いやまあ、パソコンでサイトを閲覧すれば広告は表示されるし、動画を見れば広告動画が入ってくる。それがコンピュータ社会というものだ。俺個人的には気にしたことが無い。
「フォスロウラ、俺の申し込んだ抽選で当選して、君がここにいる状況は分かった。でもトゥルミナは俺の伴侶なんだ。悪く言うのはやめてくれないか。さてどうしよう……。」
「マイハニー、そんな。ロウラはユウト様にパーソナライズ済みなのですよ、あああ、きっとこのままロウラは電源を入れてもパソコンに繋ぐ指示が出るだけのガラクタに……。」
「どうなさいますか? ダーリン。例えば非正規のJ修理屋で分解してもらったパーツ状態ならそこそこのお値段で取引もできますわよ。」
広告、これは街のスマホパーツ屋の広告であって、ヤミ医療行為などとは全く無関係だ。
「とりあえずそのホバーバイクは今夜はベランダに駐輪してもらって、君は高級品なんだからどうにかしないとだね。」
「ふぇぇえぇ~~~ん、これが人間様との恋の現実なのでしょうか、試練なのでしょうか…………あ、そういえば。」
目の前で女性に泣かれると、俺にも可哀想に思えてくる。トゥルミナもそれは意外と同じようで、俺より先にフォスロウラを慰めようとしかけた。ん、そういえば?
「そういえばマイハニー、ユウト様にはご当選後の規約通りに3年間ユーザー実感レポートの報告が義務付けられております。O社の顧客満足度の今後の資料にさせていただく以外にはこの情報は用いませんのでご安心くださいね。」
「あら、フォスロウラ様、それでしたら一種のリサーチ端末みたいなものですわ。これは仕方ありませんわね。」
広告嫁の2人目じゃないか。




