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広告嫁  作者: 純銀
カーモビリティ
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27/29

しゃべるクルマたち

今日は天気がいいのでトゥルミナを連れて街を歩いた。


パートノイドが世の中に出回り始めた頃には、それが人間なのか機械なのかが一見では分からずに周囲が驚いたし、周囲も「機械と話しながら歩いたら前方不注意になって危険では?」などとも言われた。育ち盛りの子供たちが何でも機械を頼るのでは問題があるとして「1日1時間まで」などという地方規則が作られる問題なども起こったりした。

でも、多くの人はパートノイドを「きっと生活が向上するんだろう」と思っていたし、俺も少し貯金を考え始めたのはそんな一人だったからだ。

あの頃から比べたら、今の街を見るとパートノイドは何人も屋外を歩いているのを見かけて当たり前。

個人情報に紐づいてパーソナライズもされているから、盗難被害にもなりにくい。1人(≒1体)で歩くパートノイドも珍しくなくなった。

俺の場合のトゥルミナは、伴侶《パートナー》のほうのパートノイドなのでいつも2人連れの外出かな。


一緒に手をつないで街を歩きたくなる嫁がいるというのはとてもいいものだ。


街を歩く際には、信号機も横断歩道表示もない道路を歩行者が横断することは普通にある。ここでも、渡りたい歩行者にクルマが譲ってくれる。まあ譲り合いでいいけど、繁華街ではクルマが譲るくらいのほうがより安全な交通社会だ。


「歩行者さん。対向車も後続車もおりません、お渡りください。どうぞ慌てずに。」


それだけだったら、「へえクルマに音声でそんな機能が付いたのか。」だけで済んだ。でもその車は、喋った。

ボンネットを軽く開いたり閉じたりしながら、そう 喋った んだ。


クルマには関心が無かった俺に、トゥルミナが教えてくれる。

「パートノイドOSのクルマ版、モービルOSに認可が下りたんだわ。ダーリン。」

以前よりも進んだ監視カメラの完備によって、飛び出し事故も未然に防げるらしい。前々から言われていた無事故の交通インフラがそろそろ整ったのか。

本当だ。今のクルマをよく見ると……運転席には運転手がいない。


いつもは気にしていなかったクルマを眺めながら歩いて、俺とトゥルミナは大通りの交差点に掛る歩道橋に上った。

よく見てみると確かに交通網情報のための街頭カメラやセンサーが多い。渋滞を先読みできるし、あれなら通行人の移動もだいぶ確実に検知できるようだ。


通り過ぎていくいろんな車種にも、新しい特徴があるのが分かる。

運転席自体がなくなったクルマがもう走っている。高齢者だけでも、子供だけでも乗車できる。計画都市の映像では無人タクシーの乗り降りも見かけていたけど、今は一般道でもそうなっている感じだ。

「クルマ社会も少しずつ変わっていってたんだな。」


歩道を歩いてるパートノイドが喋ってるのかと思っていたのに、その何割かは、クルマだ。ボンネットを軽く開閉しながら。笑いに混じってドアを軽く開閉する場合もある。ウインカーを瞬き(ウインク)するクルマもいる……いいけどさ。


最初気にはしていなかったんだけど、そんなクルマの一部にはなんだかポスターや企業名を複数貼り込んだかのような、変なペイントが流行ってるのかな? と感じていた。

でも俺はたまたま目の前で、そのペタペタ感な表示が切り替わるのを目撃した。それで、その外装が 電子塗装ディスプレイ だと分かった。


ああ、そうか広告なのか。でもあのクルマって宣伝車じゃなくて自家用車だよね。

「自家用車が宣伝外装なのか? なんだろうああいうクルマ。」

「あれはミナを製造したG社製……きっとお喋りにも広告が入りますわね。」

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