4.窓に映る
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"Have you ever seen yourself reflected in a mirror?"
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「ndelier、あんた自分の顔見たことないの?」
「急にどうしたのさ」
「ふと思ったんだけど。よく動物逃げないなって」
「怪異は人が恐れた結果だからね。恐れていない動物には無害だよ」
少し無理があるような気もするけど、実際警戒心の高い動物たちが逃げないのはそういうことなんだろう。
いや、そんなことより何か。何か忘れている。記憶から一つ欠片が抜け落ちているような...。
「...まぁいいや」
「何か言ったかい?」
「別に何も」
「そう?ならいいけど...あ、maryちゃん、今の話の続きだけど、maryちゃんは見たことあるの?」
そりゃ自分の顔ぐらい...あれ...
自分の顔ってどうやって見るんだろう?
「見たことないよね。僕もだよ」
なんとなく気まずい空気が流れて数秒静けさが広がる。
おしゃべりな彼が黙るなんて何か事情でもあるのか?
「見たいとは思わない?」
「うーん...見たい、かな」
意外だった。てっきり興味ないよーってはぐらかしてくるものだとばっかり。
「じゃあ探そう。見れる場所とか方法」
「うーん...まあどうせ暇だもんね~」
「じゃ、決まり」
ただふらふらしていただけのわたし達の旅に目標ができた。
いつかわたしは鏡に映る自分の顔を見て、自分に笑ってあげるんだ。
「...鏡?」
その瞬間、わたしの頭の中にノイズが走った。何か大きなものを、隠そうとするかのように。
鏡...かが...えっと、なんだっけ...?
「わたし達、何しようとしてたんだっけ」
上手く思い出せない...彼はどうだろう。
「...ndelier?」
彼が声を発さない。というより、動かない。いつも飄々としている彼が真剣な顔をしている。
顔と言っていいかはわかんないけど。...蝋燭顔?
「そんなはずは...いやでもあいつなら...」
彼がなにかぶつぶつ言い始めた。あまり聞こえないけど、生きてはいるようで一安心。
...
「誰かいる?」
わたしと彼しかいない二人だけの空間で、視線を感じた。
彼がわたしを見ていない今、誰がわたしを見てる?
視線は少し先、瓦礫の中崩れずに残った壁の小さな窓。
窓の奥にいたのは...
「あなたは誰...?」
何も言わない、何もしない。ただ、わたしを見ている。
「わたし...か?」
窓に映ったその少女は、少しずつ形を失って行く。
「待って!まだっ」
呼びかけもむなしく少女は消え、窓が突然割れた。
割れたガラス片は、小さく光を放っていた。
「この光...うっ!?」
...頭が痛い。光るガラス片から目が離せない。
うっすらと聞き覚えのあるような、ないような声が聞こえてくる。
「■■■■ちゃん、こ■■においで。それは■険■」
「違う。わたしはmary。そんなの知らない」
「■■■■■■■、■■■■■■■。■■■■■■」
「違う!わたしは...!わたし...は...」
...頭が痛い。わたしはmary。そのはずなのに。
「大丈夫だよ、maryちゃん。それはただのガラス片だから」
聞きなれた声で頭が晴れる。
そうだ、これはただのガラス片。少し光って見えただけの。
そしてわたしは、maryだ。




