7.優しい光
痛みとともに、
いつもあの人の黒い髪が
私の前で揺れていた。
捨てないで―――
置いていかないで―――
そばにいて―――
私の中にあったのは、
きっと依存だけだった。
真っ暗な空間。
淀んだ空気。
ぼやけた視界に、あの青年が映る。
その瞬間、
私の中の何かが勝手に拒絶する。
違う。
この人は、あの人じゃない。
それは、分かってる。
分かってるのに、
身体が言うことを聞いてくれない。
ただ心配していただけなのに。
分かってる。
分かってるのに。
違う。
違うのに。
「来ないで――!」
熱い…
熱い…なに……これ……。
助けて。
痛い。怖い。こわい。
ちがう
こわい、こわい、こわい。
……もう
──やめて。
視界が、青く光った。
「……あれ……?」
熱が、すっと引いていくのが分かった。
何が起きたのかなんて、
分かるはずもない。
「……熱く、ない」
青い光に、包まれてた。
そして目の前には、彼と見知らぬ青年が二人。
三人とも、ひどく息を乱している。
最後に見たあの殺風景な部屋は、
もう原形を留めていなかった。
壁は裂け、
床には砕けた木片が散らばっている。
壁には、まだ青い光が薄く残っていた。
「……これ、何……?」
「隠蔽だよ。
さっきの騒ぎが外に漏れないようにしてた。」
その言葉に目を見開いた体格のいい男が、
赤髪の青年の肩を拳で軽く小突いた。
「お前、そういうとこほんと抜かりねぇな。
焦りすぎて、そこまで頭回んなかったわ」
小突かれた肩を、赤髪の青年が痛そうに押さえる。
「ほんと、力強いんだって。
あんだけの魔圧だと、そりゃぁね!もう解除するよ。疲れたし」
聞きなれない言葉に首を傾げる私を見て、
それに気づいた赤髪の青年が少しだけ肩の力を抜いて笑う。
「魔圧って、まあオーラみたいなものだよ。
あー、名前言うてなかったね! 俺、テオ。よろしく!」
金髪の青年が、短く息を吐く。
「アッシュだ。テオがうるさくてすまんな」
赤髪の青年――テオが黒髪の青年へ視線を向けた。
「うるさくねぇよ! ほら、黙ってねぇで
名前言うたら?」
黒髪の青年は、視線を少し逸らしながら口を開く。
「……ノルン・ルスウェルだ」




