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第六十七話『お前は誰だ?』

 

「なんだかとんでもない事になってるなぁ……」


「ん、どうしたのナラ」


 骸から色々言われたナラは、薄々感づいていた事を考えることにした。それは、今この体の中にもう一人くらい誰かがいるのではないかと言う疑問。確信がある訳では無い、だが以前の自分であれば、絶対にそうはならないだろうと言う程弱くなっている。


「……僕は……誰なんだろう?」


「……?」


 それはつまり、余計な魂が二つ入っているから、本来の力が出せないのではないか?と言う懸念。理解こそすれ、どうすればいいのかが分からない。そんな感じで悩んでいるナラに、ミルは声をかける。


「よくわかんないけど……、ナラは、ナラでしょ?」


「……」


「ちょっと聞いちゃったけど……、ナラクって人が誰なのかは知らないけど、貴方はナラ。……それだけ」


 何も知らないからこそ、本心を言う事が出来る。その一言だけで、ナラは覚悟を決める。とりあえずその日は寝てしまう事にして、翌日に扉の中に入る。相変わらず、自分と似たマネキンが部屋の中にいるだけの場所。


「僕が僕でいる為に……、君の存在を、否定する」


「……」


 その場所で、ナラは自分を殺す覚悟を決める。普段は持ってこない、キングすら持ってくるほどである。


「おいおい……アレ、お前か?」


「アレは……、僕であって僕じゃない。でも、確かに僕なんだ」


「まぁ何でもいいけどよ……。俺をここに持ち込んだって事は、本気で殺る気なんだろ?」


「……あぁ」


 そして、マネキンが動く範囲まで足を踏み入れる。顔めがけて放たれたパンチをキングの2ペアで逸らしながら、カードを引く。出たのは、大まかにフラッシュが狙える役。心臓への突きをかわしつつ、カードを交換する。


「クッ……。『三枚揃』!」


 中々いい札が来ず、とりあえず三枚揃で攻撃するナラ。三回の斬撃をあっさりと片手で受け止られ投げ飛ばされる。そして空中で蹴りを放とうとするマネキンに対し、ナラは咄嗟に1ペアで攻撃を受ける。


「ぐぅっ!」


 だが、1ペアで何とか出来る訳もなく、そのまま吹っ飛んでしまうナラ。追い打ちをかけようと走ってくるマネキンに対し、ここでようやくマシな役を作るナラ。


「フルハウスだ!」


 何とか放った一撃は、マネキンの左腕に命中する。その瞬間、切られた場所から半分程が、真っ二つに裂けて行く。これは不味いとマネキンも思ったのか、左腕を千切って床に捨てる。


「……」


「……」


 まだ五分も経っていない戦闘だと言うのに、二人の体感時間はそれ以上に感じられていたのであった。


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