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第五十一話『孤児院の~もふもふ……ふわふわ?』

 

「……何?」


 部屋に入ったナラだが、当然のように存在しているマネキンに、思わず口から疑問がこぼれる。キングは入る時に没収されたらしく、素手で戦う事になる。それは別に構わない。弱いがマネキンくらいは倒せるだろうと考えていた。


 だが、ナラはマネキンを見て思った。これはかつての自分だと。


「……意地が悪いな……」


 そして、赤い線の中に入った瞬間、マネキンが動き出す。猛スピードで放たれた拳は、ナラの頭を打ち砕き、そのまま……。


「ハッ!?」


 ナラは路地裏で眠っていた。確かに頭を吹っ飛ばされた記憶があるが、事実こうして頭はくっ付いている。だがそんな事はどうでもいい。問題なのは、何をされたのか見る事も出来なかったと言う事。……そして、自分がどこまでも弱くなっているのだと自覚したと言う事。


「……僕は……」


 少し考えた後、一旦帰る事にした。このままではダメだと、ナラは判断したのだ。もっと強くなる必要がある。それには、この体を鍛える必要があると。


「僕は、もっと強くなってやる」


 魔王をただ殺すだけのマシーンになっていた時のナラとは違う。あの頃の彼は惨めで哀れな存在だったが、今はもう違う。守りたい者がいる、守るべき者がある。そして強くなる理由がちゃんとある。呼吸を整えた後、歩き出す。


「さてと……」


 これからどこに行くかなとか思っていたナラであるが、そんな時後ろから誰かに追突されてしまう。


「ふぎゃぁっ?!」


「おっ?なんだお前!弱いな!」


 後ろを振り向くと、そこにはクマの毛皮を着た子供がいた。いやまぁナラも子供だろうと言いたくはなるだろうが、そう言う意味ではない。純真無垢を人にしたような、世間一般的な子供と言う存在である。


「クマは『クマ』だぞ!お前はなんだ!」


「ぼ、僕はナラって言うよ……。で、なんでそんなに急いでたの?」


「ん?意味なんか無いぞ!ただ走ってただけだ!」


 クマと言う幼女は、とにかく眩しい程の笑顔でそう答える。なんかもう色々言いたいところは沢山あるが、そう言う事では無いのだろう。すると奥から、彼女を追ってやって来たシスターが、息を切らした様子でやってくる。


「く、クマ!あまりに人に迷惑をかけちゃダメですよ!」


「はーい!じゃあまたなのだー!」


 そう言い、連れていかれるクマ。気になったので少し後を付けてみると、二人は孤児院に入っていく。他にも色々と子供がいるようだ。


「シスター!お帰りなさい!」


「皆さん!今日もお疲れ様です!」


「はい!」


 どうやら仲はいいらしい。その光景を見た後、さっさと帰るナラなのであった。



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