第四十九(ある意味ゼロ)話『ナラク・オブ・ゼロ』
かつて、ナラがナラクだった時の話。彼はスラムで生まれ、劣悪な環境で過ごしてきた。そんな彼は、毎日をただ生き続けていた。何の目的も意味もない。ただ生きているから生きているだけ。そんな中、彼はある日勇者は何もかもが手に入ると知る。
その日から、ナラクはただひたすら勇者になる為に強くなっていた。事実、もし仮にナラクがその時にいた勇者と戦っていたのなら、間違いなくナラクが勝っていただろう。そのくらい、彼は強かった。そうなるまで、十年かかったと言う事実を除けば。
そしてナラクは魔王の元へ向かった。その間にも、色々と面倒な事ばかりが起きていた。
ただ全て、ナラクにとってはどうでもいい事だけであったが。
そして、魔王と対峙した時、ナラクはさほど魔王を強いと思う事が出来なかった。
そして魔王を撃滅した。
……。だが、魔王は沢山いた。なんか二十人くらいいた。倒したのは一番弱い魔王であり、ぶっちゃけ倒したから何?って感じの扱いをされるような魔王だった。だから、ナラクはそれ以降魔王を倒すだけの存在になった。ひたすら魔王を殺し続けた。
人々はナラクを化け物だと罵るようになってきた。勇者の命と引き換えに、ようやく何とか倒せるような化け物を、傷一つ無く殺して回ったからそりゃそうである。
そして、最後の一人の魔王であるクラブと戦い、それを撃破した。
後の事は大体知っているだろうが、それからこの世界がどうなったのか?と言われると、特に変わることは無かった。魔王を殺したとしても、新たな魔王が誕生するだけ。つまりナラクのやった事は一つの意味も無かった。
……。いや、意味はあったのかもしれない。
この世界に転生したのだから。
「……なんか変な夢見ちゃったなぁ……」
ナラは、昔の自分の夢を見た。なぜ今?と思ったが、昨日手記を付けたからかもしれない。昔の自分に向けての日記を書いて、何か思いだしたのかもしれない。
「……はぁ」
過去の自分を思い出し、若干ナイーブな気持ちになるナラ。そんなナラの元に、ミルがやってくる。
「どしたの」
「うわぁどこから入って来たの!?」
「普通に」
「は、はぁ……」
なんともつかみどころが無い奴だが、彼女に救われたのは確かな事実。ミルの顔をもちもちしながら、ベッドから降りる。
「じゃあ行こ?」
「そうだね!」
過去は過去、だが今は今なのである。その事実を確認しながら、ナラは今日も生きる事にしたのであった。




