第三十三話『好きも嫌いも食い分けて……』
ナイブとナラは、船にあるBARで飲みあっていた。と言っても、ナラは一応未成年なので、酒は一切入っていない飲み物しか飲んではいないが。隣に座ったナイブは、酒をチビチビ飲みながらつぶやくように喋る。
「あたしはさ、あいつと一緒に二十年間ず~っと、暮らして来たんだ」
「はぁ……。じゃあいわゆる幼馴染って訳なんだね?」
「そうだな。……だけどあたしは、あいつの事を一回でも止められた事は無かった」
「……」
そう語るナイブの目には、どこか虚しさが漂っていた。何があったのかは分からないが、辛そうなのはなんとなく伝わった。
「ある日、あいつはバイオリンを手にして演奏し始めたんだ。最初はへったくそだったよ正直」
「今はあれだけ上手いのに……」
「そうだな。……あぁなるまで、あいつはいっぱい努力したんだ」
「……」
「そこそこ上手くなってからは、歌いながらバイオリンを弾いてたんだ。……いい声だろ?」
「そうですね」
当然、聞いていたのでどのくらい上手いのかは知っている。正直な話、バイオリンよりも歌をメインにした方がいいんじゃないか?と思うくらい上手かった。実を言うと、一年前までは普通に歌いながら弾いていたとの事だが、転換期が訪れたのは去年の事。
「……デカいイベントにあいつが呼ばれてね、そこからあいつは演奏の上手さでどこからも引く手あまた。今年だけでも三十件以上のイベントに行ってるんだ」
「多忙じゃない?」
「……そうだな。あいつは……いつからか、歌わなくなった」
「……バイオリンだけを求められたって事?」
「そ。……分かってくれて嬉しいよ」
その一言に気をよくしたのか、計十杯目のウイスキーをロックで飲むナイブ。もう完全に出来上がっている。べろんべろんである。
「だからぁ~!あたしもエアに休めって何度も言ったのにぃ~!!エア全然言う事聞いてくれないんだもん~!!!」
「そ、そうなんですか……。あの、お客さんも他にいますし程々に……」
「うるへ~!!!あたしの酒が飲めないのかぁ~!!あぁ飲めないんだったワハハ!!!!」
さっきまでの凛々しい姿はどこへやら。今ここにいるのはぐでんぐでんに酔っ払ったバ……。馬だけ。ただ人間、こうなると本音が出る物で。
「あたし~!!!!!エアの事好きなんだよ~!!!でも言えなかったし~!!!!!!!!と言うか言うタイミング無くしたしぃ~!!!!」
「あ、あの……。落ち着いて……」
「やだやだ~!!!エアの全部欲しいぃ~!!全部~!!」
「……どうしよ」
もうなんか嫌になってきたが、未成年なのでこのまま外に出ると怒られるのだ。仕方なく、ナイブを引っ張って自分の部屋まで持って行くナラ。既に媚薬も色々シた跡も無くなっている。寝かせる場所も無いので、床に転がしておく。
「はぁ……。寝よ……」
なんか色々疲れたナラは、泥のようにベッドにもぐりこみ眠るのであった。




