第十七話『4カード』
「山頂まで二合って所か……」
「もうちょっとって事……?」
「そうだな。ところで、お前息切れしなくなったな?」
「……あ、そう言えばそうだね!ちょっとは強くなったのかな……」
結局、夜になってしまったので仕方なく一度寝ることにしたナラ。テントは無いが、木の上で寝る事くらい日常茶飯事だったので、枝を体にひっかけ、そこで眠っていた。目覚めたナラは、近くにあった池で顔と尻尾を洗うと、頂上を目指す。
「んで、実際どうする気だ?あのギンとかいう女、多分徹底抗戦する気だぞ?」
「そうだよね……。はぁ、僕の力じゃ多分一撃は無理そうだよね……」
「そうだな。だがその為に俺がいるんだろ?とりあえず……、今の最大打点、4カードをぶち込めるようになっておけよ!」
頂上を目指しながら、何とか4カードと言う技を極めようとするナラ。時間さえかければ技の練習をする事は容易い。だが、想像以上に肉体への負担が多い技が大半である。その中で、唯一まともに使えるのが、この4カードである。
「揃ったよ!」
「よしやってみろ」
「スー……」
一呼吸置いた後、目の前の大木に向かって『四枚揃』を放つナラ。凄まじいスピードで、四方向から目の前の物を切りつけると言う、まぁシンプルな技である。だが切られた方は、まるで一度に四回切りつけられたような傷がつけられていた。
「ハァ……ハァ……」
「完璧って感じじゃねぇな。見ろ、この場所の切込みが浅いし、逆に反対側は切れ込みが深すぎる。これじゃ4カードとは呼べないな」
「そ……そうか……!もう一回!」
ナラは、夜になってから日が昇ってくるまでずっと、この技を完璧に切りつける為に頑張ってきた。だがそれも、時間の問題である。遂に日が昇ってしまった。
「……まだ未完成だが……」
「行くよ。……いつまで待つとは書かれていないし、三日間しかいられない。……ここにいられるのも、もう少ししかない……!」
「よし行くぞ!ちゃんと四枚揃をセットしとけよ!」
と言う訳で、遂に頂上にたどり着いたナラ。山頂では、溶岩が熱を放っており、肌に突き刺すような痛みが襲ってくる。ミルは溶岩の中心部に貼り付けにされており、魔法で何とか守っているようだがもう限界スレスレである。
「ギン!」
「よく来たなナラ。俺のモノになる気が出来たって事か」
「悪いけどなる気はないよ!……ミルは返してもらうからな!」
その瞬間、ナラは四枚揃を繰り出した。