1人になったユリア
「ユリアちゃん、元気にしてしていたかな?」
「王様、ご無沙汰しております。はい、元気に過ごしております。」
王妃様がユリアの母・ユリスを妹の様に可愛がっていた経緯もあり、王様はユリアの事を親しげにユリアちゃんと呼ぶ。
隣に座っている王妃様もまた、ユリアを自分の子供の様に思っていた。
「今日は、エリアスちゃんは来ていないのよね?会いたいわぁ。今度、是非一緒にお茶でもしましょうね。」
「ありがとうございます。ですが、エリアスはまだ子供ですのでご迷惑をお掛けするのではないかと…」
これは、今のユリアに出来る精一杯のお断りの言葉だった。
しかし王妃様は心からエリアスに会いたいと思っている為、全く気にしていないのが問題だった。
「そんなの全然構わないわ。わたくしは貴方の事を娘の様に思っているのですから、エリアスちゃんは孫みたいなものよ」
こうなると断る事は出来なそうだ。
王妃様の言葉は例え社交辞令であろうとも、周りの従女達が一字一句もらさずに書き留めている。
そのうちエリアスを連れて、また王宮に来なくてはならないだろうとユリアは覚悟を決めていた。
「とにかく、今日はユリアちゃんに来てもらいたくてな!トーマスを説得するのが大変だったぞ!はははは!」
王族がこんなに親しげに会話をするのも珍しく、王様と王妃様への挨拶のために後ろに並んでいる招待客は目を丸くして見ている。
「王様、王妃様。後にも沢山の皆さんがお待ちですので、私達はこれにて。」
トーマスは、それだけ言うと一礼してユリアの手を取った。
「本当に、トーマスは愛想がないな。ユリアちゃん、今日は楽しんで帰られよ。」
「はい、ありがとうございます。」
王様と王妃様への挨拶が終われば、今日の仕事はほとんど終わったみたいなもの。
あとは、ミュゼットと少し会話をして
早々に帰りたいな…とユリアは思っていた。
そんな時、今日の舞踏会の警備を担当している騎士団の団員がトーマスに近づいてきた。
「どうした。」
団員はトーマスに耳打ちすると、トーマスが静かに頷く。
「ユリア、すまないが少し行ってくる。その間、ミュゼットと共に居てくれ。」
「わかりました。私のことは大丈夫ですのでお待ちしています。」
トーマスはニコッと微笑んだ。
そして、別れ際ユリアの頬に軽くキスをして行った。
トーマスを呼びにきた団員がそれを見て驚いていたが、恐らくいつもの鬼の副総長から想像出来なかったのであろう。
ユリアはトーマスを見送って、ミュゼットの所に向かった。
「お待ちになって。」
その声に振り向くと、そこには1人の女性が立っていた。
よく見ると、先程トーマスに挨拶に来た貴族が連れていた御令嬢だった。
「先程お会いしたわ。」
「ご挨拶が遅れました、ユリア・クリムトでございます。」
「わたくしは、クリスティ・ループよ。」
クリスティはじっとユリアを見ている。
それが好意的なのかどうなのか分からないが、ユリアは白金の魔法使いなので、その人の心の色が分かる。
ユリアにはクリスティの心が自分に敵意を抱いているのが感じられた。




