敏腕メリー
ユリアが妊娠してから約10カ月。
ユリアははち切れんばかりの大きなお腹だった。
「ふう…階段を下りるのも一苦労だわ。」
ユリアは手すりにつかまりながらゆっくりと階段を降りていた。
すると、階下から人が物凄いスピードで駆け寄ってきた。
「ユリア!」
駆け寄ってきたのはトーマスだった。
「トーマス様、おはようございます。申し訳ありません、支度に手間取ってしまって。」
「ダメだろう、一人で階段を降りちゃ。」
トーマスはユリアの手を握り支えてくれた。
ユリアが妊娠してからトーマスの溺愛ぶりは加速し、仕事中も時間が少しで空けば帰宅する始末だった。
「トーマス様、大丈夫です。気をつけてますから。」
「いや、ダメだよ。朝は邸のみんなは忙しいんだ。何かあったらどうする。」
心配そうなトーマスの顔を見てユリアは微笑んだ。
「ありがとうございます、トーマス様。」
トーマスはゆっくりとリビングのソファにユリアを座らせると、自分も隣に座った。
「そろそろ予定日だろう?体調はどうだ?」
「はい、元気ですよ!お腹が重いですけど。」
トーマスはユリアのお腹に手を当てた。
「おい!お父さまがいる時に出てくるんだぞ?分かったな!」
王宮騎士団の鬼の副総長も、最近ではまだお腹にいる子に話しかける姿は子を待つ親の顔だ。
そんはトーマスの姿を見て、ユリアは幸せを感じる。
「もう、トーマス様ったら。そろそろ王宮に行く時間ですよ?」
「ああ、そうだな。では行ってくるよ。」
名残惜しそうに王宮に向かうトーマスに手を振って送り出したユリアは、キッチンに向かった。
「メリー?ちょっといいかしら?」
「奥様、どうされましたか?」
ユリアはキッチンにある使用人達用の椅子に座り、ふうと息を吐いた。
「大丈夫でございますか?」
「ええ、大丈夫よ。この調子だと、まだ生まれるのは先みたい。」
ユリアは自分の大きなお腹を撫でながら言った。
「あ、そうそうメリー。カフェの事なんだけれど、コートおばあちゃんから新しい薬草が育ったから試しにお茶にして出してみて欲しいと手紙が来たの。」
「マクゴナル様からですか?」
「ええ、何でも女性の肌にいいって事らしくて。カフェの新しい看板メニューになるんじゃないか?って。」
「まぁ!それはいいですね!最近は王都以外の貴族の奥様もお見えになりますから、人気が出るかもしれませんわ!」
「私の出産に合わせてこちらに来るらしいから、よろしくお願いしますね。」
「かしこまりました。」
ユリアが妊娠してから、魔法カフェの事はメリーに一任していた。
メリーが切り盛りするようになってからカフェの人気はうなぎ登りだった。
今では、王都の女性たちの憧れのお店になり
若い女性の間では、カフェで働く事がステイタスになりつつある。
貴族以外の女性は、ユリアの魔法カフェで働くと行儀作法も身につく上に美しくてなれると言われている。
公爵家直属のお店であり、そのメイド頭のメリーが厳しく指導しているのだ、その辺よりも花嫁修行になる。
メリーは敏腕だったのだ。




