複雑なハンプトン
ハンプトンがクリムト家に到着したのは、夜遅くなってからだった。
今日領地に向かうため、終わらせておかなくてはならない仕事が山積みだった。
「はぁ…もうユリアは寝てしまっただろうな。」
灯が消えてしまっているクリムト家の窓を見ながら、ハンプトンはため息をついた。
しかし、ハンプトンの心は
残念さと裏腹に安堵もあった。
自分の娘であるユリアに会うのは嬉しい。
ただ、そのユリアが妊娠したと聞いて内心複雑だった。
ユリアとトーマスの子供は、自分にとっては孫。
こんな嬉しい事はないが、どんな顔をしてユリアに会えばよいのか。
おめでとうという言葉を言うのさえ、表情を保つのが難しい。
「まだ父だと名乗っても居ないのに孫か…」
そのまま会わずに帰る事も出来るが、ユリアにはお祝いの心を伝えておきたかった。
急な事で何も用意できなかったが、王都の友人にお願いして用意してもらった贈り物だけは置いて行きたかった。
「ハンプトン殿。」
屋敷の門から歩いていると中からトーマスと執事のローマンが出てきた。
「これは、トーマス君。遅くなって申し訳ない。ユリアさんはもう休まれただろう?」
「はい、ギリギリまで起きてお待ちしていたのですが睡魔には勝てなかったようで。申し訳ありません。」
ハンプトンは少しホッとした。
トーマスはローマンに合図すると、ローマンは静かに退場し遠くで控えていた。
それを確認したハンプトンが少し小声で口を開いた。
「そうか、いやそれでよかった。」
「え?」
ハンプトンは苦笑いしながら言う。
「いや、ユリアさんに会ったら泣いてしまうかもしれないと思ってな。」
トーマスは複雑な顔をした。
ハンプトンがユリアの父だと知るトーマスには、ハンプトンの気持ちがわかった。
「そんな顔しないでくれ。」
ハンプトンはトーマスに持ってきた鉢植えを渡した。
「これは、お祝いだよ。私の領地では家に子供が出来ると贈る木なんだ。子供の健やかな成長を願う木なんだよ。」
「そうなのですか。」
「この木は大きく育つ。だから、もう少ししたら庭の広い場所に植え替えてくれ。」
「ありがとうございます。」
「ああ。」
2人が玄関先で話していると、庭の方から人影が現れた。
「おや?あんたは!」
その声にトーマスとハンプトンが振り向く。
そこにいたのはマクゴナルだった。




