石の光
オープン初日が終わる少し前、カフェに顔を出したのはミュゼットだった。
「ユリアさん、こんにちは!お邪魔するのがすっかり遅くなってしまってごめんなさい。」
「ミュゼットさん!来てくださったんですね!ありがとうございます。」
ユリアはカフェの奥でカップを運んでいるハンターのほうをチラッと見てミュゼットに合図した。
ミュゼットもハンターの存在に気付いて、少し身だしなみを整えている。
「ハンターさん、ミュゼットさんをお2階にご案内していただいてよろしいですか?」
ユリアが気を利かせてハンターに声をかけたが
ハンターからの返事がなかった。
ユリアは気になって後ろを見ると、ハンターが固まって立っていた。
「あの…ハンターさん?」
「ひ、ひ、光っています!」
「え?」
ユリアがハンターの視線の先を見てみると、なんとあの「願い石」が白く光っていた。
その声に、コートが急いで駆け寄って来た。
「あら!光ってるじゃないか!」
閉店間際でお客さんもいなかったので、コートが少し席を外してる間の事だった。
コートは、ミュゼットの方を見て言った。
「ミュゼットお嬢様、ちょっとこちらにお越しくださいますか?」
「え?私ですか?ええ、構いませんけど。」
ミュゼットはみんなの視線が自分に集中しているのを気にしながら、コートに近づいていった。
すると、願い石の光は更に強くなり
ミュゼットが石の側まで来ると一瞬眩しい光を放って光は消えた。
「ユリア!今のは!」
キッチンから慌てて出てきたトーマスは、石のそばにミュゼットが立っているのを見て驚いた。
「ミュゼットが…」
「トーマス様なんですの?ねぇ、ユリアさん!これはどういう事ですの?」
ハンターやトーマスまでザワザワし出したのに耐えかねて、ミュゼットはユリアの腕にしがみついた。
「ミュゼットさん、すぐお屋敷に帰りましょう。私も一緒にいきますから。」
「ええ。」
「トーマス様も一緒に行かれますよね?」
ユリアが聞くと、トーマスはハンターに指示して護送用の馬車を用意するよう言った。
「ミュゼット、詳しくは屋敷に着いてから。俺はエディを呼んでくる。」
「はい、分かりました。」
ただ事ではない雰囲気を察知して、メリーがすぐ近くに控えていた。
「奥様、お店の事はわたくしがやっておきますのでご安心くださいませ。」
ユリアはメリーの顔を見てニッコリ笑った。
「メリーありがとう。後はお願いするわね。」
「はい、お任せくださいませ。きっちりやっておきますので。」
メリーは厳しい人間だ。
おそらくユリアよりも何事もきっちりやる性格なので、任せても安心だとユリアは思った。
「ミュゼット!」
トーマスに話を聞いたエディがプリアンヌと共に2階から降りてきた。
「お兄様!プリアンヌさん!」
「ミュゼット、大丈夫だ。もう少ししたら特別な馬車が来るからそれに乗って一緒に帰ろう。」
エディはミュゼットを抱きしめて安心させるように背中を撫でていた。
ミュゼットは何がどうなっているのか分からないまま、ハンターが用意した護送用の馬車に乗りこんだ。
その様子を遠くで見ている者たちが居る。
王都ではあまり見ない黒くて長いフードをかぶった男達だった。
ミュゼットの乗り込んだ馬車を見送り、馬に乗ったトーマスが一瞬チラッと後ろを見た。
「見つかったようだな。」
トーマスは静かに馬車の後を追って走っていった。




