憧れのトーマス
ミゲルがボソボソと話し出した。
「騎士団の試験の時…色々な事を教えてくださったのがトーマス様…でした。」
ミゲルはトーマスを見た。
「試験は落ちましたが、あなたのように強くて男らしく生きたいと…思っています。」
そこまで言うと、ミゲルは顔を真っ赤にして俯いた。
「そうだったのか。何だか驚いたな。」
トーマスはミゲルを見て頷いた。
「騎士団に入っていなくても、こうしてお母上の事業を手伝っているというのはとても凄い事だよ。しかも、王都までの道のりを1人で往復するなんて…なかなか出来る事じゃない。」
トーマスがそう言うと、ミゲルは目を大きくして顔を上げた。
「あ、ありがとう…ございます。」
「これからは、ショウガの輸送もお願いするよ!頼りにしている。」
トーマスはそう言いながらミゲルと握手をした。
ミゲルは憧れの人の手を両手で握った。
「命を…か、か、かけて、頑張り…ます!」
「よろしく頼む。」
横で見ていたハミルが大きな声で笑い出す。
「いやぁ、親子揃って恥ずかしいねぇ!」
ハンプトンも一緒に笑いながら言った。
「僕も2人をここに連れてきてよかった。しかし、トーマス君もユリアさんも本当に夫婦揃って有名人だな。」
「そ、そんな!とんでもありません!トーマス様は有名人かもしれないですけれど!私なんか!まだまだです!コートおばあちゃんの足元にも及ばないんですから。」
ユリアは手をぶんぶん振って否定した。
ハミルはユリアの口から出たコートという名前に反応した。
「あの…コートおばあちゃんとは…もしかしてマグゴナル様の事ですか?」
「あ!はい!そうです。私の魔法の先生なんです。」
「まぁ!マグゴナル様が先生!それは!すごいわ!」
「コートおばあちゃんを知っていらっしゃるんですか?」
「知ってるも何も!私が王宮魔法使いだった頃の先輩でした。それはもう!厳しい方でした。」
ハミルは話しながら苦笑いをしている。
「そうなんですね!では、私の母も知っていらっしゃいますか?」
「え?ユリア様のお母様も王宮魔法使いだったんですか?」
「はい。トロエ・エスタークと言います。」
ハミルはその名前を聞いて考えていた。
「トロエ・エスターク…トロエ…トロエ…。申し訳ありません、私はその方の事は存じません。」
「そうですか…。」
ハミルはとても申し訳なさそうに頭を下げた。
一方、ハンプトンはその会話に入る事はしなかったが、ユリアの言ったトロエという名前をしっかりと聞いていた。




