FRAGMENT6/10
BREAKABLE FRAGMENT
――あの娘は誰なんだ? 知らないとは言わせないゼ。
人の目の届かない雲の中を、ガーゴイルとヒトが歩いて行く。周りで擦れ合う粒などまるで気にならないように。
――…………。
――だんまりか?
――友達で……友達さ。
ヒトはどうでも良さそうに答える。
――友達で、友達か。
不吉な笑い声。
――うるさいな……。
雲が途切れ、眼下に世界が現れる。
――見えるだろう。
不吉な笑いはそのままに、ガーゴイルが言う。
――…………。
ヒトは遥か彼方に見える女の子を見詰める。
その目は、乾いている。
STRONG FRAGMENT
ヒトの目に、女の子の悲愴さが映る。堕天使の囁き声が、耳元に木魂する。
――なあ俺、あの娘は俺を捜していたんだぜ。会わないのか?
空気を小刻みに震わす笑い声は消えている。そこにあるのは、温もりを失くしてかけらになった二人という一人。独り。
――会うつもりなんか……会えるはずなんか……会っていいわけなんて……。
ヒトは押し黙り、顔を伏せる。突風が吹いてヒトは倒れそうになるが、ガーゴイルが身体を支える。
――会わせる顔なんて……ない。
ガーゴイルが高らかに笑い出す。
――意固地だぜ、俺。
FRAGMENT PILE UP......
ガーゴイルはヒトの背中を押す。ヒトはその場から落ちはじめる。落ちながら、ヒトはガーゴイルを見上げて呟く。
――僕の方こそ、会いたかったんじゃないのか? そうだろう、僕。
ヒトの呟きに、ガーゴイルは答える。
――俺は俺だ。そう考える俺も、俺だ。
と。
ヒトは目を瞑り、遠く近くなる点と線のあいだで、もう一度零す。
――かもしれない……。本当は、会いたかったんだ。会って、話したかったんだ……。
満足気に微笑する。
ヒトは久々に微笑する。
ヒトはだんだんと人へ戻っていく。
写真に写る男の子へと、戻る。




