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かけたかけら  作者: 一筆
2/4

FRAGMENT6/10

 BREAKABLE FRAGMENT


 ――あの娘は誰なんだ? 知らないとは言わせないゼ。

 人の目の届かない雲の中を、ガーゴイルとヒトが歩いて行く。周りで擦れ合う粒などまるで気にならないように。

 ――…………。

 ――だんまりか?

 ――友達で……友達さ。

 ヒトはどうでも良さそうに答える。

 ――友達で、友達か。

 不吉な笑い声。

 ――うるさいな……。

 雲が途切れ、眼下に世界が現れる。

 ――見えるだろう。

 不吉な笑いはそのままに、ガーゴイルが言う。

 ――…………。

 ヒトは遥か彼方に見える女の子を見詰める。

 その目は、乾いている。



 STRONG FRAGMENT


 ヒトの目に、女の子の悲愴さが映る。堕天使の囁き声が、耳元に木魂する。

 ――なあ俺、あの娘は俺を捜していたんだぜ。会わないのか?

 空気を小刻みに震わす笑い声は消えている。そこにあるのは、温もりを失くしてかけらになった二人という一人。独り。

 ――会うつもりなんか……会えるはずなんか……会っていいわけなんて……。

 ヒトは押し黙り、顔を伏せる。突風が吹いてヒトは倒れそうになるが、ガーゴイルが身体を支える。

 ――会わせる顔なんて……ない。

 ガーゴイルが高らかに笑い出す。

 ――意固地だぜ、俺。



 FRAGMENT PILE UP......


 ガーゴイルはヒトの背中を押す。ヒトはその場から落ちはじめる。落ちながら、ヒトはガーゴイルを見上げて呟く。

 ――僕の方こそ、会いたかったんじゃないのか? そうだろう、僕。

 ヒトの呟きに、ガーゴイルは答える。

 ――俺は俺だ。そう考える俺も、俺だ。

 と。

 ヒトは目を瞑り、遠く近くなる点と線のあいだで、もう一度零す。

 ――かもしれない……。本当は、会いたかったんだ。会って、話したかったんだ……。

 満足気に微笑する。

 ヒトは久々に微笑する。

 ヒトはだんだんと人へ戻っていく。

 写真に写る男の子へと、戻る。

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