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花が見えるんだ  作者: 辰胡
2/2

2話 昼間から病院に来る少年

「花が見えるんだ」

「花?」

 僕が言ったことにユカは首を傾げている。やっぱりこの花達は僕以外に見えていないらしい。

「うん。僕にはね、この部屋に桜が見えるんだ」

 そう言うとユカはぽかんとしている。表情がくるくる変わって面白いなぁ。

「さ、桜??」

「うん」

 やっぱり変って思われるかなぁ。

「それってどんな感じ?」

「へ?」

 驚きすぎて間の抜けた返事が出てしまった。慌てて取り繕って咳払いをした。

「あー、えっと…、ユカはさ、変だなって思わないの?」

「うーん、変だなっていうか不思議だなって感じ。僕には見えないものが見えてるんでしょ?その桜、どう?」

「…あはっ。ユカって面白いねぇ。綺麗だよ、この世のものとは思えないくらいにね 」

 不思議…か。彼はちょっと変わってる。そもそも、なぜこんな昼間に居るのか。学校があると思うのだが、僕にとってはそれが不思議である。

「今日のこの時間は桜が見えてるんだ。日によって違う。僕の見てる桜はね、キラキラしてて、薄いピンク色で、たぶんソメイヨシノ。神秘的でね、風が吹くたびに桜の花びらが舞ってとっても綺麗なんだ」

「へぇ~。俺も見てみたい」

「駄目だよ」

「え?」

 しまった。彼は惹き込まれるタイプか。僕の幻覚は病気…、奇病によるものだ。奇病は憎いことに人を選ぶ。僕の病気の場合、惹き込まれやすい人を選ぶ。僕は花が好きだから、この病気を気にっているが、別の人、それもユカに罹るかもしれないとなったら別だ。彼は優しい。絶対に阻止せねば。この奇病はあの世へと何人も誘ったものだから。

「ユカ…、これはね、病気なんだ。望んではいけないよ」

「…そう、なんだ」

 戸惑わせてしまっているが仕方がない。彼には元気に生きててもらわねば。現代の廃れた世の中だからこそ、彼みたいな優しい人が必要となるはずだ。

 あれ?僕は、なんで出会ったばかりの人の心配をしているんだろう…。

「あ、ここにいた」

 2人とも黙り込んでいると桐島先生がやって来た。桐島先生は僕の担当医でこの人も、とても優しい人だ。

「桐島先生!」

「え?ユカ、桐島先生知ってるの?」

「知ってるも何も僕の担当医だよ」

 ユカはここに通院してたのか。やっと合点がいった。彼がなぜここにいるのか。桐島先生はほとんど病棟にいるから呼ばれたのだろう。だけど、まだ謎なことがある。なぜ昼間にいるのか、今は午後一時だ。

「全然部屋に来ないと思ったらユウのところに居たのか。珍しいな、ユウが初対面の人と話しているところ」

「まぁ、暇だったので僕の部屋の前で立ち止まっている同い年くらいの男子を見つけたから、話しかけてみようかなって」

「ユカはなんで立ち止まっていたんだい?」

「あー、いつも閉まってる部屋が開いてたから気になって…」

「部屋が開いていた?」

「小さな男の子がね、ガラッて扉開けてそのままどっかいっちゃったの」

 そう、ユカがくる丁度十分前くらいにドアをガラッと開けられたのだ。男の子は開けたあと、「違った」と言ってどこかに行ってしまった。

「なるほどね。2人は知り合いかい?」

「いえ、違います」

「そうなの?それにしちゃ、人見知りのユカが話してたからてっきり友達かと思ったよ。あ、そうだ、ユウ、今日の花はなんだ?」

「桜です」

「桜かぁ…。最近増えてきたな」

「ですね」

 そう、今までは1週間に一回見るか見ないか程度の頻度で見えていた桜が、2日に一回くらいのペースで見えるようになって来た。

「そういえば、ユカはなんで病院にいるの?」

「え」

 しくじった。部屋の温度が何度か下がった気がする。踏み込んではいけないところにのこのこと行ってしまった。

「えっと…」

「ユカ、無理しなくていい」

 桐島先生のフォローが入る。それが気まずくて仕方がない。

「いえ、言います」

 そしてユカは躊躇いがちに口を開く。

「虐めにあって学校に行けなくなった」

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