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作家令嬢の田舎追放推理日記〜「推理なんてやめろ」と言われましたが、追放先で探偵はじめます〜  作者: 地野千塩
第1部・タラント村編

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番外編短編・未亡人の日常

リズは元村長夫人、あるいは事件の第一発見者だった。そして事件が終わった今は、立派な未亡人として日常を過ごしていた。


村人に疎まれ、引きこもっていたが、今はアンナ嬢の良き協力者とも見られ、誤解も解けてきたところ。


今はカリスタのカフェで働きつつ、村人と雑談するのが楽しい。


カリスタは新村長として忙しく、カフェは村女達で共同経営する事になったし。時短で働ける女達が細かいシフトを組み、なんとかカフェも存続していた。


「いらっしゃい。アンナ嬢じゃない!」


そんなある日。村で推理作家として活躍中のアンナ嬢がカフェにやってきた。原稿につまり、気分を変えてカフェで仕事をしたいのだそう。


仕事中のアンナ嬢は、想像以上に集中していた。リズがケーキやコーヒーを持っていってもさほど反応せず、ゴリゴリと原稿用紙に言葉を埋めていた。


その目は真剣そのもの。正直、落ち着いた雰囲気の令嬢だと思いこんでいたリズは、驚きだった。


そんなアンナ嬢だったが、原稿がひと段落した時、リズに話しかけた。


「ちょっと原稿を読んでくれない? 途中までなんだけど」

「いいの? あらー、この主人公の未亡人は私がモデル!?」


リズはワクワクしながら原稿用紙を捲る。面白い。あの事件をベースにしつつ、強い女達の素人探偵ものになっているではないか。


ただ、主人公の未亡人にはイケメン探偵やイケメン執事が周りにいない。相手役のカフェ店長はイケメンとの三角関係に揺れているのに!


「という事でアンナ嬢、未亡人にも恋愛展開を入れて?」

「そ、そう?」


アンナ嬢は明らかに困惑していたが、リズの押しに負けた。終盤、主人公を助けるイケメンペットシッターを登場させるという。


「確かに主人公にはイケメンの理解者がいた方がいいわね」

「そうよ、アンナ嬢。イケメンよ!」


こんな話題でカフェには笑い声が溢れる。


村で疎まれ、夫も殺された。一時期は情緒不安定になったリズだが、今の日常は笑いに溢れてる。

 

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