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作家令嬢の田舎追放推理日記〜「推理なんてやめろ」と言われましたが、追放先で探偵はじめます〜  作者: 地野千塩
第3部・スタテル島編

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番外編短編・娘の悪い虫

 私は作家のA。男だか女かわからないペンネームだけど、今は結婚し、一人娘もいるからね。本名で活動しないで良かったとは思うけれど、最近どうも娘の様子がおかしい。


「ねえ、アニス。最近どう?」


 朝食後、娘にそれとなく聞いてみた。夫は出張中だし、今がチャンス。


「え、どうって?」


 娘、露骨に目が泳いでるでいるわ。もう十五歳の娘。そろそろ隠し事もするようになる年頃かしら?


 作家業のかたわら、副業で探偵事務所を運営している私。娘の様子も何か察するものがある。


「まあ、いいわ。とにかく学校行ってらっしゃい」

「う、うん。ママ、行ってきます!」


 娘はドタバタと支度をして学校に行ってしまったが、すぐにメイドのマクダを呼び出す。


 マクダは娘の専属メイド。私との付き合いも長く、友達みたいなものだけど、それとなく娘の様子を聞いてみた。


「ねえ、マクダ。最近、アニスの様子はどう?」

「え!?」


 マクダ、明らかに動揺していた。声がうわずってる。


「い、いえ。私、仕事がありますから!」


 そう言って逃げてしまった。


「ますます怪しいわね」


 かといって部屋をのぞいたり、尾行したり探偵業みたいなことはできない。


「ということよ、クリス。アニスの様子どう思う?」


 数日後、出張から帰ってきた夫に報告。


「まさか。悪い虫でもついてるんか!?」


 娘を溺愛している夫、何か誤解し、泣じはじめてしまった。


「アニスはパパと結婚するって言ってたのに! 悪い虫、絶対ゆるさん!」

「あのー、クリス? そこまで妄想を膨らませなくていいんだけど? 今のところ悪い虫の証拠も何もないわ」


 おめおめと泣いているクリスに引きながらも、本当に悪い虫がついたら困る。娘本人というよりは、夫が問題だ。やられたらネチネチと倍返しするぐらい性格がよろしくないし、「悪い虫」もクリスに関わったらトラブルに発展しそう。


 ということで、さらにマクダだけでなく、学校の友人、先生、近所の人に事情を聞いてみた。こんなの朝飯前だったが。


「え? アニスってホラーや怪談を話して、同級生の男の子たちを怖がらせてるの?」


 副担任の先生に事情を聞き、ようやくわかった。娘、ホラー小説にはまり、そんなこともしているらしい。学校では作家令嬢二世としてかなり怖がられているとか。


「アニスさん、相当変わった令嬢ですね」


 副担任の先生にも呆れられ、私は恥ずかしながらも深く納得。やっぱり私の娘だわ。凝り性というかマイペースというかオタクというか……。


 とはいえ「ホラーなんてやめろ」なんて言ったらどうなるか、私の経験上、どうなるかもすぐに予想がつく。さらに燃えてしまい、オタク街道を突き進むだろう。


「まあ、しばらく放っておくか?」


 このことを夫に報告したら、上機嫌だった。今のところ、悪い虫がいないのは良かったかもしれない。


ご覧いただきありがとうございます。本作は春の異世恋推理’26に参加させていただいております。よろしくお願いたします。







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