第十四話
「は?」
そんな威圧的な聞き返し方をするベルは、極めて珍しいと思う。それぐらい、ベルの逆鱗に私は触れてしまったんだろう。
私は今日、初めてベルに喧嘩を売る。
「は?なんてお口がきたないよ、ベル。50音あるんだからもっと良い言い方あるでしょ?」
「なんでライナに言われなきゃいけないの」
今ので結構イラッときただろうな。私だったら多分亜空龍、打ち込んでると思う。
「それにもう一回言うけど、私よりアスランを好きな人なんて皇帝様か皇后様だけだから。なんならあのお二方よりも好きかも」
だからね、ベル。
「私よりアスランの事を愛してるだなんて、寝言は寝て言って欲しいな!」
満面の笑みでベルに言い放つ私、かっけぇ。
でも多分、目は笑ってないと思う。……多分というか、絶対。
「へー、口だけじゃどうとでも言えるけど」
「ていうか、ベルがアスランの何を知っているわけ?」
「誕生日、血液型、寝る前のルーティン、毎日のトレーニングメニュー、好きな食べ物、嫌いな食べ物、苦手な人、口癖、魔法の適正属性、使える魔法、全部知ってる!……これでも何も知らないと?」
「はぁ……その程度で、知ってるって言えるなんて随分な自信ね」
本当に呆れる。ベルって元々馬鹿だったけどここまでだったとは……。
「誕生日は4月28日、血液型はA型、寝る前のルーティンは紅茶を飲んでは磨いてをして、仕事をして、魔法で私と話す」
「……」
あ、魔法使って通話してた相手が私だとは知らなかったんだね。うける。
「毎日のトレーニングメニューは言ってもいいけど……あれ考えたの私だよ?言う必要ある?」
「……たしかに」
そうやって素直なとこ、嫌いじゃないよ?
「好きな食べ物は私が作ったコカトリスの卵焼き、嫌いな食べ物は……」
「カルスの実でしょ」
「あ、それ一昨日……だったかな?克服したよ」
「……え?」
「あとは?言ってくれるんでしょ?」
「……?」
「あ、それしか知らないの?あと十三個あるけど」
「……」
あ、知らないんだ。
「口癖はルピシア、魔法適正属性は火、水、風、土の四属性。使える魔法はこの属性の最上位中の最上位魔法以外全部使える。でしょ?」
「……あってる」
いや、これぐらいアスランファンクラブも知ってるよ?
これぐらいで知ってるとか舐めてんの?
「っ!でも、まだ嫌いな人を言っていない!さすがのライナでもそれは知らないんだねー?」
「いや知ってるけど……言っていいの?」
「なに?知ったかぶり?」
言って良いのかなー、これ。
まぁ、いっか。そろそろこの知ったかぶり野郎にイライラしてきた。
「……ベルだよ」
「……へ?」
「だからアスランの嫌いな人、ベルだよ」
「なに、……言って」
「あれ?知ってたんじゃないの?」
「知らない、知らない知らない知らない、そんな事」
「おぉ、ベルがバグッた」
やっぱきつかったかー。
「なんだっけ?口だけじゃどうにでも言える、だっけ?ベルちゃん」
「このくらいのことも知らないで、知った様な口ぶりで話すなんて、やっぱ口だけじゃもうにでも言えるねー(笑)」
「なんだ?面白いことになっているな」
……え?
生きてきた中で親よりも聞いてきた声が、後ろから聞こえた。
「アスラン……?」
「あぁ、アスランだ。随分と興味深いことになっているな。修羅場……という奴だったか?」
「どうして……隣国に行ったんじゃないの?」
「それがな、その国の王が体調を崩したらしいから日を改めることにしたんだ」
私に笑顔を向けながら話すアスラン。
最後に会ったのは昼休みなのに、随分と会っていなかったような気がする。
どうしよう。こんな状況だったからか安心して……。
目頭が熱くなっていく。こんな状況で泣いたら困らせるのに……。
「なんだ?俺に会えたことが泣くほどうれしいのか?」
「うんっ……!!」
アスランは目を見開いだと思ったら次の瞬間には笑って、
「ただいま」
なんて優しい声で告げてくれた。
「余計に涙出るだろ……おかえり」
「なんか、夫婦みたいだな」
「それ行く前も聞いた」
あぁ、やっぱり楽しい。
「私の前で絡まないでよ!!」
「……ベル、お前には言いたいことがある」




