第十話
「突然なんだけどもし、なんでも一つ願いをかなえてもらえる……ってなったら何を願う?」
……自分でも本当に突然だと思う。
急に意味不明な質問をされて、一瞬言葉に詰まるもちゃんと考えてくれるらしく、
「それは願いを叶えて貰う代わりにこちらが何か支払わなければならないタイプの類か?」
「いや……そんなのないけど」
「それなら、願いの数を四つに増やしてもらうな」
「それはなし」
なんでも、と言っていたのに……と不服そうな顔をしながらも真面目に考えるアスラン。
そういう素直なとこ、嫌いじゃないよ。
……なんて、絶対に言ってやらないけど。
「ライナだったら何を願う?」
お、今日はちゃんとライナって呼んだな。偉い偉い。
「そうだな、私は……あの人と仲良くずっと一緒にいられることを願うかな」
「それは誰だ?」
意地悪そうな笑みを浮かべて聞いてくるアスラン。
言わないとわかんないかなー。てか、そんなの普通言わせる?わかるでしょ……。
また、私の焦る顔をみて楽しむ気だな。
今日こそ私を怒らせたらどうなるか教えてやろうではないか。
「決まってるでしょ……全部言わせないでよ」
「……言ってくれないとわからないな」
「意地悪……そんなの」
「ライナ、俺も……」
「ベルに決まってんでしょ!」
「……そうだな」
へっ、あからさまにショック受けてやんの。
今度からそんな意地悪をしないことだ!
「そういえば俺の願いをまだ言っていなかったな」
「あ、そういえば確かに」
自分で話題をふっかけておいて忘れていた。
しょうがない、なかなかアスランが答えを出さないんだもん。
「俺は俺が幸せにしたい人を、幸せにする力がほしい」
「その人の幸せを願うんじゃないんだね」
「あぁ、俺の手で幸せにしてやりたいんだ」
へぇ〜、アスランにしては珍しい。
「ちなみにその人って誰?」
「俺がいつも考えている人だな」
へー、さっきの私のお返しだろうか。
明らかに期待を持たせようとしているな。
「昼休みに会ってる?」
「あぁ、会っているぞ」
「努力家?」
「そうだな、いつも昨日よりもすごい自分であるために日々努力しているぞ」
いや、これ私ですやん。
これで私じゃないことある?否、絶対にない!
「それって……もしかして」
「なんだ?わかったか?」
「それって、わた……」
「この国の民だ」
「……あっそ」
しってた。アスランは一回やられたらやり返す人間だって。
しってたよ?ただ、忘れてただけで。
「なんだ?自分の事だと思っていたのか?」
「……だって、努力家だって」
「いつも必死に、金を稼ぐために働いているだろう。市場の人々もどうしたら売れるか日々考えて食べていけてるんだ」
「昼休みに会ってるって」
「お前もこの国の民だろう?間違ってはいない」
「確かにそうだけど……」
「それに、国の民を幸せにするためには俺自信が今まで以上に頑張り、努力しないといけない」
今も結構努力してると思うけどな。
「それに、どれだけ勉強をしてもどうもならないこともある。だから、それを打開するための力が欲しい」
分かってる。分かってるよ。
でも、それよりも、一番最初に私のことを考えてほしかったな。
「……なにかショックを受けてるように見えるから言わせてもらうが」
「う、うけてないもん」
「俺がお前の事をどれだけ見てきたと思っているんだ。そんな力がなくても、俺は確実にお前を幸せにしてみせる」
「あっそ。別に何もしなくても、アスランが横にいれば幸せだから」
柄にもないことを言ってしまった。恥ずかしい……。
「そうか、ならばずっと隣にいるとしよう」
私の手の上にアスランが手を置いてくる。
いつの間にこんなに大きくなったんだろう。
子供の頃なんて私のほうが大きかったのに……なにか負けた気分だ。
だけど、いつもみたいな悔しい気持ちはまったくなくて……ただ、あいつの手から伝わってくる熱がとても心地よかった。
年老いても、こんな時間を過ごしていきたい。




