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第13話 異世界の異次元な戦闘(1)

やっとバトルです


今日は3話、連続投稿!

んで

これが1投目です♪


宜しくお願いしますm(_ _)m


雄字とキマイラアグリゲートとの戦闘はまだ終わっていない。



不意打ちには不意打ちで返すという展開でなんとかイーブンに持ち込んだに過ぎない。


これより仕切り直しとする。






     いざ。






危険なほど速度を乗せ、身を屈めゆく雄字。

移行する。戦闘の構えと呼ぶには極端な姿勢へと。



 過度なる前傾。



頭部が前に沈み、上体が傾いた分腰が浮かんで見える。

腰が浮いたと見えた分だけ、上半身は地へとのめり込む。

それはクラウチングスタートにも似た…


当然、直ちにと雄字の顔面へと迫りくる地面。

だが雄字の両手は未だ地に着かされず。


この手は剣を振るため、そのために在ると。

この異世界ではそのようにして、生き抜く他無かった。

その異世界で研ぎ澄まされてきた雄字の力。

その極限を引き出す時はいつも、この体勢が選ばれてきた。



もはや限界近く前傾してもなお止めようとしない雄字。



あわや。

鼻先が地面に衝く寸前。

高速前傾よりもさらに高速、前方に飛び出すは右の脚。

踏み込むために伸ばされたその右脚に急速前傾により乗せられる全体重。

更にその重さは加速により乗算されている。


それら運動エネルギーが集中した足裏は瓦礫の上へ。

一気、無造作に落とされた。

雄字は今、柔く無防備な素足であるはずが、それら大小の瓦礫を


  たやすく


  〈〈ッズ!ド!ンッッッッ!!〉〉


     踏み砕く。


当然の結果であったのだろう。その動作に躊躇いはない。

 

深く瓦礫に埋まり突き抜けた足は元々在った堅い平面に到達。

大地を掴む。五指先端から踵の端まで全部を使って。


瓦礫深くに片足突っ込みその上でさらに無謀を思わす前のめり。



その父の姿がシンの目に灼き着いた。



  闘志の具現。

  雄々しくも刹那(せつな)いその姿。



その構えは『退く』という選択肢を完全に放棄していた。

あれは捨て身。自身に覆いかぶさる恐れを食い破り、突き抜けた者のみに許された特攻の構え。


あの恐ろしい化物を相手取りそれは無謀。


雄字の足裏は到達したと同時に掴んだ地面を揺さぶった。

足裏を中心として強力過ぎて反発し損ねたその力が地表に逃げ場を探すように伝達していく。

途端、波打つ瓦礫達。

地面の上に積み重なる瓦礫達が、『浮いては沈んで』の順序を同心円状に連鎖させていく。まるで、命が宿ったかのように。


 雄字の実力はこの段階ですでにシンの理解を超えていた。


はたしてこれを、人体が可能とする業であると言って良いのか。

しかしこれはまだ予備動作に過ぎない。

雄字はまだ、踏み込んだだけだ。


地表の瓦礫が波打つという、『水面(みなも)に拡る波紋』………と形容するには硬質、無骨、超常な現象。

その現象が奏でるはゴゴン…という重く硬い物同士が擦れ合う音。



その音が止むのを待たず、瞬後、





 ()ッガアアアアアアアアアッッッ!!!!





 爆 壊 音。



超常の踏み込みに相応しい超常の踏み切り。


それは衝撃波を生むほどの


爆発的、ロケットスタート。



そう。『爆発』と表現して適切。



その余波は、雄字の後方、広範囲に及んだ。

爆ぜ、砕かれ、飛ばされ……そうして無残にさらなる無数へと粉々にされた瓦礫の破片達が結界に衝突し、また爆ぜ砕け、粉々になっていく。

それを見ていたシンとレマティアの身体が、地を這いきた振動に下から()かれ同時、


浮き上がる。


爆音、衝撃、振動、視界のブレ。


爆音が鳴るその途上で、雄字の姿は掻き消えた。

目前、爆ぜ遊ぶ瓦礫達とブレる視界の中で、しかしその隙間を縫い、シンの瞳は雄字の姿をかろうじてだが捉えていた。


豪速を纏い、肉の弾丸となった雄字が地面スレスレを低空、水平に飛び遠ざかっていくのを。


あまりの速さにシンの視覚は大きく惑わされてしまった。


消えるようにして翔んでいったはずの雄字の輪郭がまだ目の前に遺されているように見え……

………いやそう見えてやはり雄字はそこにいない。その()()は瞬時に溶けた。


溶けて尾を引き……気が付けば雄字の実体は、その尾の先頭……やはり遥かな先に瞬間移動。


 (ワープした!?これも……魔法?)


シンの見立てはハズレである。

ワープなどしていない。そう見えただけだ。

魔力の補助を受けてはいるが。

しかしこれは魔法に分類されるものではない。


“ただ思いっきり踏み込んで、踏み切って、飛び出した”だけ。


この世界で超高レベルに到達した者達、『超越者』と呼ばれる者達の実力というものは、シンを含む地球人の理解を遥かに超えた次元に在る。

初見のシンが理解出来なくて当然のこと。


彼は今までこのような眼の錯覚を、経験したことがないのだし、『こんなもの』は地球で見る事など、あるはずもないのだから。


 人体が叩き出せる速度ではないのだ。


  キュンと空気を焦がす音。 


      太い一直の線と化した雄字。


         それは捨て身を思わす突貫。


しかしその突進はキマイラアグリゲートに向けて………とはならない。


シンの見立てはまたも外れた。

これは特攻ではなかった。


雄字は敵との間合いそのままに、斜めに飛んでいく。


キマイラアグリゲートとの距離を保ちながら歪な円を描くような軌道で高速移動。

その猛速の中、

時々地に足つけ制動しては、その制動により地から生じ脚に伝い来た反発の力を、取り込むようにして身体を捻り上半身へ伝導、最大となったその運動エネルギーを切っ先に乗せ一息に、そして連続して巨剣を振り回す。


その振り回された剣が生み出す遠心力に引かれるようにしてまた、残像を残す勢いで急発進。その身を掻き消す。


そして移動したまた別の場所で明瞭になった姿は先程の動きをトレースするように、肩から先が掻き消えるほどの速さで大剣を連続で振り、また消える。


これら一連の動きを何セットも繰り返していた。


いくら身の丈大もある長大な大剣であるとはいえ、キマイラアグリゲートは剣の間合いの遥か外。剣の切っ先が届くはずもなく……一体、雄字は何を?とシンは最初に思ったが


「おおっ!」


地球の常識に馴れてしまっていた目を鞭打つようにして凝らせば、雄字が大剣を振り抜く度に三日月状に輝く衝撃波らしきものが発生していたのが判った。


よもや、あれは、『飛ぶ斬撃』…というやつであるのか?


飛んでいく斬撃が輝いて見えるのはレマティアの助言に則り光属性の魔力が込められているからだろうか。

剣先から飛び出したその光斬は大気を割き、コケ脅しの類いではない、物理的な脅威を空を烈く音で証明しながら、キマイラアグリゲートに向け迫っていった。


なんとも……少年が胸に抱くヒロイックファンタジーそのままな豪華エフェクト。


 「か……っけぇ………」


目の当たりにしたシンの中にある少年の心は半自動で高まってしまい、後ろに立つ母の存在を忘れ、つい歓嘆の言葉を洩らしてしまう。


(『超絶』って、、こんな感じか……。)


『超絶』という言葉が地球にあったが、あれは『ありえない事象』を形容するためにある言葉だとシンは捉えていた。

だからシンは見たことが無かった。『超絶』なる事象を。

ありえないことは、実際に、アリエナイことだったから。

しかし今目の前に展開されているのは………


まさしく、ありえない現象と技のオンパレード。

まさしく、超人となった雄字による自重なしの独壇場。


シンの呆れと畏れを置き去りに、それはなおも続く。


雄字が姿を表す度、ほぼ同時に見えるほどのスピードで連続して大剣が振り抜かれるたび、発生した幾筋もの光斬が様々な軌道を描いて絡み合う。

そして網の目状となってキマイラアグリゲートを襲う。

その網状の斬幕はワンセットではない。無数。


しかもそれぞれ別の方向、上空までも埋める全方位から。

雄字が所有するスキルは飛ばす斬撃のコース取りや速度調整まで出来てしまえるのか、それら無数の斬撃はほぼ同時に迫り、キマイラアグリゲートを包囲してしまった。

これはもはや剣術とは呼べない代物、魔法にも等しき荒唐無稽。


 やはり、これは、特攻などではなかった。


これは、単身による、単体に向けての、一方的な包囲殲滅。


雄字の剣が語る。



  ………この化物に対し、容赦など無用。



光斬の網に包囲されたキマイラアグリゲートには逃げ場などなく………


  …………これは必中にして必殺かと思いきや、


〈〈!ブァン!〉〉


キマイラの頭上で、虫羽音を合図に触手達が霞んでブレる。

またあの攻撃だ。触手先端口から吐き出される凶酸による範囲攻撃。


室内では全方位に向けられた闇の酸であったが今度は前方に集中して放たれた。


雄字が放った光属性の魔力を込めた斬幕の一角がキマイラアグリゲートが放った闇属性の酸とぶつかり、相殺され、溶かされ、霧散してしまう。


『他愛もない』と言わんばかりに光斬の包囲網に容易く穿ったその大穴をくぐり抜け、キマイラアグリゲートはそのまま雄字に迫る

   




  ………………ことは叶わない。


その途中で宙空、飛来してきた何かによってキマイラアグリゲートは押し戻されてしまった。





光の斬撃と闇の酸。

相反する属性が激突し相殺された膨大な魔力がメタリックな黒の飛沫と化して消える。

結果として目くらましとなって残った霧状のそれを食い破るようにしてキマイラアグリゲートに正面から叩きつけられるものがあったのだ。


それは薄く白に濁る斬撃。

雄字が得意とする風属性の魔力が込められた斬撃だ。


雄字が飛ばした斬撃群は全て光属性の魔力で構成されて見えた。

しかしその中に隠されていたのだ。


秘されしは数条。


表面だけを光属性の魔力でメッキし巧妙に迷彩されていたがその正体は風の刃。


勿論その斬撃も闇の酸を受けてはいた。

しかし表皮たる光属性の魔力だけを生贄として捧げその風の斬撃は突き進む。


光とは違い風の属性魔力は闇を弱点としない。

光の斬撃が切り開いた先へ突入し、多少消耗しながらも凶酸を斬り割くことに成功し、キマイラアグリゲートに食らいつく風刃。

かくしてその斬撃は雄字の目論見通り、キマイラの強行突破を阻止しなおかつ押し返すことにも成功した。




目論見、というよりこれは保険だった。

………魔物には人間以上の知性を誇る者だっているし、知性が乏しくともその分判断に迷いが無かったり、痛みに対してほぼ不感で怯むということをしなかったり、例え今回のキマイラアグリゲートのように狂っていても攻撃本能が異常に研ぎ澄まされていたり等、結局のところ、どんな相手であっても侮れるものではない。


自身の油断からくる認識の甘さから優勢であった戦況を簡単に覆され、窮地に追い込まれるということは、今までに何度もあったことなのだ。


雄字はそれら経験則を(もと)に予測していた。


いくら弱点属性を突いた上での一部の隙もない波状攻撃であり、相手が狂化しているというアドバンテージを加味しても、これ程高レベルの魔物であるなら、ゲームのように『条件が揃えば簡単に攻撃が通る』…というわけにはいかない。


これは予測というよりほぼ確信に近い直感。


このキマイラアグリゲートは光属性の大攻勢に対抗する手段などは、当然のように準備していて、それを必ず行使してくるはずだという確信。


かといって消極策に逃げてはいけない。下手に後手に回ればこの化物の圧力になす術なく飲まれてしまうだろう。


ならば戦士は戦士らしく、開き直るのみだ。


苦手とする属性で、牽制も挟まず、いきなり最速、かつ魔力全開の攻撃に、しかも包囲されれば、どうだ。


受ける側であるキマイラアグリゲートは何を感じ、どう対処する?

狂化しているにしても、多少は焦るはずだ。

いや、もしくは『それでは自身を斃す決定打にはなり得ない』という慢心が少しくらいは脳をかすめたり、するかもしれない。


焦りなのか奢りなのか、それはどちらでも構わない。


とにかく雄字はこのキマイラアグリゲートが選択しうる反応の幅を狭めることを目論み、そして成功した。


安易に光斬に向け相対してしまったキマイラアグリゲートは結果的に裏をかかれることとなり、風斬の餌食となる。

風属性に強い耐性をもつキマイラアグリゲートは大したダメージを受けはしなかったが、踏ん張りの効かない空中であってはその圧力に屈しざるを得ず押し戻されたというわけだ。


そして血に飢えた光の斬幕達が集う中心点へ。

輝く斬撃の坩堝(るつぼ)と化した必殺の地点に突き落とされるてしまう。


先達していた光斬が森の地面とその上を這う超大樹の根を大小のブロック状に砕断していて、地に落下したキマイラはまずその中に埋もれる形になった。


それは一瞬のこと。埋もれるキマイラは一瞬だけ、不自由を課せられてしまう。


だが戦闘においてはその一瞬のタイムラグが命を左右する。


哀れ、キマイラアグリゲートは遅れてやってきた光の斬撃に乱れ撃たれることになった。


雄字の自重なしはまだまだ続くのであります。


今日昼14時に2投目あります。


宜しくお願いしますm(_ _)m

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