第12話 魔なるモノ達(2)
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ゴゴコ……ガ、ゴ……ン
ジュウジュウと溶け朽ちる音に硬質かつ不吉を知らす崩壊音が混ざり始める。
(((……っ崩れるッ!)))
室内の壁は侵食する魔性の酸によって、その強度はもはや限界に達していたのだ。
雄字が気付き、次いでレマティアが気付く。
天井と運命を同じくしてこの部屋の全てが脆く崩れ去るのはもはや時間の問題。
レマティアが自分を抱く力を強めるのを感じ、雄字の○○袋がピタと揺れを停止させたのを見て、シンも遅れて気付いた。
シンは心底を絞るようにして目を座らせる。
まだ危機は目の前にある。
きっとここからが本番なのだ。
そんな中で何も出来ないでいる自分が悔しい。
なら、せめて、全てをこの目に焼き付けてやると…。
「ゥッガァアああッッ!!!」
〈〈ゴォウッ!!〉〉
雄字の肉体を中心にして全方位に向け突風が叩きつけられた。
それは風属性の魔法。
詠唱を省いて気合と共に乱雑にだが解き放つ。
レマティア程の技量はないが、雄字は風の属性魔法を得意としていた。今放った魔法の名は見た目通りに『突風』という。
攻撃系統というより、どちらかといえば支援系統の魔法。
突風を操り敵から繰り出される遠距離攻撃の軌道をそらしたり、迫る敵の勢いを削いたり、自らにぶつけることで宙を飛んだり、その宙空でまた自らにぶつけ方向転換したり等々……戦士職にとって汎用性が非常に高い魔法だ。
便利な魔法というのは総じて殺傷力が低い。
殺傷力は低いがその圧力は本物だ。
レマティアが張る多重結界はびくともしないが、もはや崩壊寸前だった壁達はその『突風』に吹き飛ばされてしまう。
「うお雄おぉりゃあアァぁぁぁあ!!」
『突風』により生まれた場の勢いをそのまま借る。
踏み切った脚がゴムのように伸びて見えるほどに、
踏み込んだ脚が大地を割り震わすと思えるほどに、
強靭さと伸びやかさが過剰に同居した人外の踏み込み。
直後、
大地を掴んだ下半身が生み出す爆発的慣性に
引き絞られ、
引き抜かれ、
ギュンと唸りを上げて、まるで射出されるようにして上半身が追随する。
その勢いが寸分逃さず巨剣に伝達されていく。
刃の根本から切っ先まで粘く、しなるようにして奔り伝うエネルギー。
そうして雄字は前にのめるようにして、先端に突き刺さった巨獣諸共、大剣を
ビュボンッ!
大上段から振り抜いた。
それによりキマイラアグリゲートは自身を宙空に縫い留めていた大剣から、乱暴に解き放たれる。
放物線というよりも直線に近く飛んで、崩壊した壁の向こうに広がる暗闇の中へ
ビ ョ オ
消えていった。
数瞬後、ドドドンッと肉で地を転げ打つ音と震えが、ある程度の遠間に不時着したことだけを報せてきた。
雄字が壁崩壊の刻を『突風』で早めたのは、瓦礫が部屋の内側に崩落するのを防ぐためと、この強力な魔物との激闘を繰り広げるにはこの部屋が狭すぎたからだ。このままでは妻と子が崩落や戦闘の余波に巻き込まれてしまう。
壁を失くすことで空間的により広く、戦略的にも選択肢が広がる第二のステージへとキマイラアグリゲートを放り込むことが出来た。
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ドクン……………………………。
…というのは嘘だと言うもう一人の自分がいた。
妻と子のため?違うだろう?欲望に忠実であれと。
それを雄字は遠くに、しかし確かに聞いた気がした。
誘惑するようなその声に血が滾り、肉が律動し、筋が引き絞られ、骨が軋む。肉体を支えるそれらの中心、命司る心の臓が猛り叫んで訴える。
破壊!破戒!破壊!!
『破壊して!破壊されて!狂おしい戦いの輪舞をあの魅惑的な怪物と思う存分に踊りたい!そうなんだろう!?』と。
神裂流発動に依るこの現象。何度目であったか。
抗い難くも馴れもしたこの感覚。雄字は思う。
全く魔力というものは度し難い。この異世界に転移して何年になるのか………この世界に対して未だに違和感を拭い去れない要因の一つ。
──魔力。
魔力とは、字面通りに魔の力。
自分自身もそうだが、地球で使えたはずの剣術までもこのようにして、只の技では無くなってしまった。
『魔力とはこの世界の悪意とも言えるものではないのか?』とすら思える。
魔力は只の技に妖しい意思を与え、その意思を以って雄字を飲み込んでしまえとしているかのようだった。
だが今は、自身のステータスを大幅に底上げする装備は剣以外には皆無。この危険蔓延る異世界、しかもその中でも極めつけと言っていいこの魔境において、大剣を頼みとするにしても、この装備状況はほぼ丸腰に等しい。
だから使わざるをえない。この、危険な、魔の業を。
ならばなるべく一瞬に近付けて決着をつけてやる。
短期決戦だ。
言っておくが、その間だけだ。
少しの心を焼べてやろう。
(だから、力を貸せ!)
心奥での呟きと同時に、雄字は左手をかざし、光属性の魔力を出力、闇の中へと解き放つ。無詠唱。
雄字が放った光弾は飛ぶ過程で幾筋にも分裂して飛んだ先で宙空に固定され停滞し、闇の中に隠されていたこの迷宮の実像を浮かび上がらせていった。
シンは初めて部屋の『外』を見ることとなる。
まず目に入ったのは、件の魔物。
思いの外遠くに飛ばされていたのか、キマイラアグリゲートの輪郭は小さい。その腹の下に垂れ下がる臓物がグネグネとうねり再び腹の中に収まろうと蠢く様を遠目ながらも見てしまい、総毛立ちもした。
しかしその直後、それ以上のインパクトを受けることになる。
あのおぞましいキマイラの存在をすら忘れてしまう程に。闇の中から浮かび上がる景色を、見て。
大樹。
いや、巨樹。
いや、そんな表現では、まだ足らない。
超、巨樹。
しかも、群生している。
それら巨樹達がうねりを上げて群生する様。
その圧倒的存在感。
あの恐ろしいキマイラアグリゲートの存在さえもちっぽけなものに成り果ててしまうほどだった。
前世、地球では大木の幹と言って相応しい直径の、極太の枝や根。
それが遥か頭上で、地面にと、所狭しに絡み合う。
頭上には何層にもなり編み込むように絡んだ巨大枝。
月明かりの一筋も通さず視界を悪くする。それら枝群の元締めである巨樹達のただでさえはるか先にある標高を霞ませ判別不能にしている。
地上では折り重なる根のうねりが乱立し高低差を激しくしていて……足場が悪いなんてもんじゃない。
それら一本一本に人面を思わせるような不吉漂わす太い瘤がボコボコとして絡みつき無数の枝や根をさらにと捻じくり波打たせる要因にもなっていて………『これはこのまま世界を侵食し尽くしてしまう呪いの一種なのでは?』と思わせるほどだった。
光弾が発する強弱移ろう光に照らされ、陰影が深く浅く差すことで茶と黒の生命力が醜く這いうねるようにして目に写った。
まるで意思以って蠢いているように。その異様が両親が迷宮と呼んでいたこの場所をより因業深い何かへと成立させていた。
『ただの』とは言い難い。しかし、
あれは馬鹿みたいに巨大ではあるが、樹だ。
それらが集合して出来たのがこの森。そう。これは、もしかすればこの異世界では珍しくもない、自然…の風景。
しかし……
奇怪。不吉。
『見たまま』を受け入れられない。
脳が拒絶。
平衡感覚が崩れ去る。
思考など纏まるはずもない。
そんな風景。
なんと、不自然極まりない大自然。
まるでこの世に在るありとあらゆる悪意を集め、さらにそれを凝縮したものを栄養分として増殖して在るかのような…魔の樹界。
自分が今、迷宮と呼ばれる場所に居るのだろうということは、すでに両親の会話から察していたことだった。
自分達が住処とするこの部屋の構造からして人が住むには不自然過ぎる造りだったこともその裏付けとなっていた。
迷宮と言えば、アレだ。
洞窟とも地下回廊とも判別つかず人を徹底的に拒絶し排除しにかかる罠や怪物が蔓延る魔窟。ダンジョン。
自分は今、その内部にある(ゲームで言う所の)セーブポイントのような部屋にいるのだと……想像しうる中でも最悪に近いイメージを用意してシンは覚悟したものだったが、しかし……
迷宮………
………これが?
そんな言葉で表現するには、
そんな覚悟で受け止めるには、
生ぬるい気がする。
(ここは、、、地獄。地獄なんだ。)
なぜかわかる。
あのキマイラアグリゲートを見なかったとしても、この風景を見れば直感したはずだ。『ここはおそらく地獄なのだ』と。
とりあえず凶悪な魔物から距離を図れたことに一応の安堵をしたレマティア。シンを抱く手が再び緩む。
自分を抱き絡める腕が緩んだことに気付くとシンは引き寄せられるようにして自分と外界を隔てる結界へ、再びと手を伸ばした。掌が結界に密着する。その結界の向こう側にある『何か』にシンの心は一瞬囚われた。
(これは………)
結界越しだが、感じた。
自身の掌の形に合わすようにして何かが結界の向う側に、こびりついてきている。自分を取り込もうとして蠢くようにして。
無色無形無味無臭。
結界に阻まれながらも掌の形で渦を巻いて自分という存在に纏わりつこうとするその禍々しさ以外、全てが正体不明な『何か』。
これは、地球には無かったものだ。
この森の大気、その成分の中に確かな存在としてある異物。
いや、異物と呼ぶのも、おかしいことなのかもしれない。
この異世界にとって見れば、自分こそが異世界人。自分こそが異物と呼んでいい存在。
だからか。だから、こうも感じてしまうのだろうか。
この異世界に生きる人々にしてみれば、コレは当たり前のものとして在るモノなのかもしれないが……。
熱気……邪気?何か凶烈なる熱望だったものが渦巻いて自我をもち具現化しようとして、しかし無念にもその過程で大気に溶けて……それでもなお存在を不滅としたかのような…
………。うまく言葉に出来ない。
(もしかして、これが……魔詛ってやつ…か?)
両親の会話の中で何度か登場したそのキーワードを思い出す。
それに連続して、
何故だが、理解してしまった。
(これが………そうか。それで……こんな……。)
そう、理解した。何故だか。これが全ての不可解の、原因なのだと。あのような怪物、キマイラアグリゲートのような魔物が存在するのも、この、目の前に広がる樹界が必要以上に恐ろしく見えてしまうのも、そんな苛烈な環境下で、元々規格外であったとはいえ、地球ではタダの人でしかなかった雄字が、戦えてしまえるのも、母、レマティアが当たり前として使役する魔法の数々にしたって………。
雄字が今対峙している魔物、キマイラアグリゲートは、確かに恐ろしい存在だ。しかしあの魔物ですら、呼び水でしかなかった。シンはそれよりももっと恐ろしい事実に気付いてしまった気がしてならない。
魔物。あの恐ろしい怪物はきっとこの、魔詛が原因で生まれた。
その魔物に対抗するためにこの異世界の人々はその魔詛を取り込むことを覚えたのではないか?
魔物と相対するためには自身もその魔物に存在を近付ける必要があった。
そんな、無茶苦茶な理屈で、この世界は回っているのでは、ないだろうか。
この世界に生きるならそれはきっと、必要なことではあるのだろう………。それでも、しかし……。
もう、母として自分が愛し始めててしまっている人、レマティアを見る。そして、自分達を守るため、今も戦いの最中に在る父、雄字にまた、視線を戻す。そして視線をそのまま動かさず固めたまま、今度は密かに、自分自身、その内側を見るようにしながら、シンは想った。
魔物と同じ力を掴まざるをえなかった両親の、この世界に生きる人々の、宿命を。
そして、きっと、自分もそうなるのだろうという、宿命を。
異世界モノでフツーに受け入れられるマナとか魔素とか。
私自身が転生してそれ知ったら「うわコエーな」てなると思います。得体が知れなさ過ぎるし魔物湧きの原因ですからね。
だから魔詛(魔の呪い)です。
これを元に魔力が作られるなら普段使いの魔力も「コエーな。」てなる。
……という観点で今回描きました。
次回、本格戦闘とつ!にう!
これから!始まる!
脇キャラ雄字の!自重なし!
主人公なはずのシンくんが可愛そうだ!
でも始まるのだった!
スミマセンm(_ _)m




