ドレイク攻略法~仮説
ジョー達は王都での休憩を終え、ドレイク討伐を何頭も倒し攻略――していなかった。
戻ったはいいが、あれからドレイクは降りてこない。
武練会が始まってもう11日も経過していた。
アタリは来るのだが最後の最後で警戒して罠に掛からないドレイク、オジュールを始め討伐隊は苦々しい気持ちで見送っていた。
くくり罠をかけなければ討伐は始まらない。
王都から帰って来てからオジュール発案の元、ドレイクに罠無しで挑んだが、5分もしない内に空に飛ばれあえなく取り逃がしていた。
やはり飛ばさない事を前提とするやり方がいいと――わかっていた事だ。
そこで思考錯誤を重ねてはみたが、やはり肉に食い付かないと罠にも掛からないという単純ではあるが真理でもある結論に達するが、どうしても上手くいかなかった。
――閑話休題。
そんな訳でジョー達は今日もメシを喰う。待機していても腹は減る。これは生きている証といえる事だった。
今日の料理は下処理を施したトリ肉の脚付きを棒で吊るし焚火の近くで炙る。トリ肉に香辛料と塩のシンプルな味付けだけで樽に漬けこんでいるのでいい匂いが辺りに充満していた。
後はスープと野菜の酢漬け、それに焼き巻きパンを造り皆で食事をしていた。
「いや~、今日も美味いな。最近は外で作って食べたほうがいいように感じるよ」
ジョーは肉汁したたる焼きトリ肉を食べていた。
土台の上に料理が置かれ、全員で食事を堪能していた。
隣に射るサイリアもウンウンと頷いて美味しそうに料理を頬張っている。
「お~い、スープにチーズはいるか?」
ヒュールが乾燥したチーズを片手に後ろからきいてきた。
「ああ、貰うよ」
ジョーは木の器の差し出すとヒュールが短刀でチーズを削って入れてくれる。
手なれた手つきで薄く切られたチーズは湯気が立っているスープの中に入れると溶けていった。
「サイリアも貰うか?」
ジョーは隣にいるサイリアにきいた。
「うん、お願い」
野菜の酢漬けとパンと肉を上手く挟んで食事をするサイリアは頷く。
「じゃあ、ヒュールこっちにも」
ジョーは器と取り出しヒュールに差し出す。
「あいよ」
軽い返事でヒュールはチーズを削りだした。
「やっぱ、外で食べると美味いな」
「そいつはよかった」
「どうした、浮かない顔して……」
「なに、これじゃあ、毎日が外で遊びに来ているだけだよ。もう少し多くドレイクを討伐してカネを増やしたんだよ」
そういって、ヒュールはチーズを削り終えた。
ジョーは器を戻し、「そりゃそうだ。俺達も手取りは増やしたい」とヒュールの事情もわかる。
現在、ドレイクは2頭討伐しているが、それは移動代、宿代、餌代、その他諸々含めて何とか赤字にならない程度だと言う事だ。つまり儲けているとも言えない。
「なぁ、何かいい案でもあるか?」
「おいおい、ヒュールが考えつかない方法だろ? あるのか?」
「なに、いま、上空を飛んでいるドレイクを引きずり降ろす策が無いかと思って……な」
ヒュールが林の中にある空が見える部分を除くとドレイクの雄叫びが聞こえていた。
「結構、空には居るんだから降りてくれば良いもんだが……」
「あぁ、空にはいるんだよ。それだったら悪く無い場所だ。あと少しってとこなんだが……」
「だよな……。そういやぁさ、食事中によくドレイク飛んでたもんな、夜近くも……。アレっていうかドレイクの生態的に昼間行動して夜は寝るよな……」
ジョーは皿を置いて考えこむ。
「あぁ、なんか思い付いたのか?」
ヒュールは訊く。
「いや、纏まってねぇけど……直感に近い感じだな……」
「なんだよ、あるのか方法が?」
「ドレイクって鼻がいいよな?」
「ああ、そう言われているな」
「じゃあさ、味っていうか味覚はどうなんだ?」
「どう言う事だ? 鼻と味覚? ……ってお前、まさか!?」
ジョーの直感部分をヒュールは理解する。
ジョーはこう言っている。――ドレイクにも人間と同じ様に鼻で感じる美味しさの感覚があるのではないか――という仮説だ。
オジュール達は今までも野外で調理している。
肉の焼けた匂い、香辛料の魅惑の香り、それらが上空に広がり、ドレイクを呼び寄せているのではないかという――荒唐無稽な暴論をジョーは考えていた。
「おいおい、いくらそれは……」
ヒュールはそう言いながら、言葉を止めて考え出した。
「無いとも言えないだろ、実証されて無い事だ。ドレイクに尋ねたわけでも無い」
「竜との会話なんて成り立つかよ、でも、どうやって証明するんだ」
「証明は出来ないが、ドレイクに近い味覚を持っている“ヤツ”なら知ってる」
「ハッ、いるのかそんな奴?」
「ああ、そこに……な」
ジョーは指す。近くの木に立て掛けた“蛇腹刀”を。
***
「ほんとにやるのか?」
オジュールは隣にいるヒュールに声をかける。
「モノは試しだよ。それにもうすぐ腐る肉だ。いまの内に利用できるならした方がいい」
「だけどよ……。本当に上手くいくのか? ドレイクに生肉以外を与えるなんて普通はしないぞ」
「いいからやってみようぜ、降りてこないヤツを待っている時間よりは有効かもしれないぞ。それに、その答えは誰もしらないだろ、とにかく生肉を与えて捕まえる事しか昔からしてなかったし、まさかの盲点ってヤツかもしれないだろ。あと、腐る肉の処理をしていたんだ。同じ事だろ?」
「そう言われれば……そうだな」
オジュールも一応は納得した顔をする。
現在、ドレイクの餌として買ってきた肉を焼いている最中だった。
肉は外に干しておけば干し肉になるのではない。腐るのだ。
保存箱から出した肉は温暖な気候に晒され『極上の腐った熟成肉』になる。小虫がつき、岩の上におかれ変質して瑞々(みずみず)しさが失われていく、そして3日もすればドレイクも食い付かなくなる。それを処理してきたのがスネークだった。
【お~い、メシはまだか?】
スネークはウキウキした声でジョーに訊く。
「まだだよ、いま調理しているから、お前はちゃんとした味の感想を言えよ」
【まかせておけ、色々手を施してくれるそうだな】
「ああ、塩やったり、香辛料ふりかけたり、焼き方も変えるからな」
【うむ、いいだろう、最高の肉を献上せよ】
(コイツ、調子に乗っているな)
ジョーは地面に座りながら手に持っている蛇腹刀を見ていた。
***
「じゃあ、はじめるぞ」
ジョーは土台の上に置かれ、香ばしく焼かれた、綺麗に小分けされた肉に蛇腹刀を突き刺した。
――突き刺すと同時に消えていく肉。
「どうだ……?」
ジョーは訊く。
【そうだな、それに食感が固い、汁も少ない】
スネークの回答を翼陽の団のメンバーが紙に書いて評価していく。
「じゃあ、次だ」
ジョーは隣の肉を突き刺した。
【こいつはいい感じだ。肉汁もいいし、食感も最高、でもなんだ、余計な匂いが邪魔をするな】
そうやって――スネークは焼いた肉を評価していく。香辛料と焼き方を合わせ計36種類分けて食べた結果。
最高の肉は『表面を焼いて、焦げ目少し、中は10分の9レア肉で、塩を少々まぶし、レイラムの実(香辛料)を少しまぶす』のが最高だとわかった。
早速、それらを基本にしてドレイク討伐用の肉の調理に取り掛かる。
前に出した冒険者メシにつながる内容です。
通常、冒険者は匂いのつかない携帯食料で済ませます。大々的に野菜や肉を持ち込んで料理なんてしません、獲物が逃げるから――という設定の元、オジュール達は豪勢な食事を作るんです。自分たちが食べたいように。
実は攻略法につながる内容でした。




