ドレイク攻略法~実証
[ドオォォォォン!!]――ドレイクが降りて地面が揺れる。
それを遠くで眺めるオジュール達。
オジュール達のいる後方では団員達が肉を焼き、それを空に風魔術で流し匂いを拡散させていた。
「おい、嘘だろ。簡単に降りてきたぞ……」
オジュールは驚愕した顔で目の前の光景を見つめている。
警戒心の強いドレイクがワッサワッサっと地上を這いつくばり、鼻を鳴らし、辺りを確認してすぐに発見する。
ワザとらしく2つに切られ、肉汁と中のレア感を出した肉が置かれた岩場に向かって一直線。
『ドレイクまっしぐら』の状態になっていた。
「うお~、マジだ……ドレイクの警戒が無い」
「ええッ、簡単過ぎない?」
ジョーもサイリアも木陰から様子を探るが、ドレイクはそのまま順調に手前でくくり罠に掛かる。
ドレイクの咆哮と共にオジュールが「と、討伐開始!」とやや焦りながら命令を下した。
***
――20分後。
「いや~、まさかの成果だった」
オジュールは上機嫌で倒されたドレイクを見ていた。
「有効だな。鼻がいいと言われていたが、肉の匂いも感じていたのか……。それに焼いた方が肉は美味いのかな、やっぱ」
ドレイクの死骸を確認して、団員達が処理を始めている傍らでヒュールはそう意見をいった。
「そいつはわかんねぇけど、“スネークさま”にお礼を言っとけ。ご利益がありかもしれねぇ」
オジュールは冗談半分の顔をして発言する。
【それだったら、貢物を貰おうか。ドレイクの血1樽でいいぞ】
ジョーが近づき、背中の蛇腹刀がオジュール達に話しかける。
ジョーは血塗れだった。ドレイクの返り血をもろに浴びて鎧が赤く染まっていた。
「戯言には言葉を貸さなくていいからな」
ジョーはヤレヤレという感じで背中に背負った蛇腹刀の柄を叩く。
「な~に、スネーク様、これからはドレイク1頭討伐する毎に竜の血の樽を献上します」
オジュールはそう頭を垂れ、恭しく、それでいてふざけた表情を最後にしてお礼をいった。
【うむ、いい心がけである】
「何を言ってんだ、この魔剣は」
【おい、ジョー。信仰を蔑ろにしてはいかん、優しくすると良い事がおこるぞ】
「俺は何も起きなかったけどな!」
【アホゥ、常に感謝の心が大切なのだ!】
「まぁまぁ、落ち着けって」
ヒートアップしてきた剣士と魔剣の喧嘩にヒュールは割って入る。
「そうだぜ♪ 仲良くしろよ♪ それにさっき言った事は本当に実行するからドレイク1頭に着き竜の血が入った樽1つ贈呈する。これは約束だ♪」
上機嫌でオジュールはそう言うとヒュールが1人で頭を抱える。
勘定計算をしているのはヒュールなので、出来ればそうしない方が得策だという事はわかっていた。
【なに! 本当か! 良いヤツだな。よし。オジュールを新しい魔剣の継承者にしよう】
そうスネークは言い返す。
そんなこんなで騒がしくドレイクの処理を進めていく一行だった。
しかし――『本当の苦労』はここから始まる。
***
あれから――ドレイクの攻略法は当たった。
まさか盲点の当り、誰も予想できない事でもあった。ドレイクの味覚など考えてもみない事でさらに魔物の味付けの好みなど会話が成立しないと出来ない事だ。
歴代のドレイク討伐者にしてみれば、失念、失投の類だ。
それから――1日1回降りてきて罠にかかり討伐されていく。多い時は朝と昼も連続で降りてドレイクは討伐されていった。
そして10日あまりが経ち。武練会が始まって21日経つ事になる。11日間で2頭から21日経つ頃にはオジュール達は14頭までドレイクを倒し現在1位タイの記録まで順位を上げていた。
21日経つので――残り9日間で武練会が終了してしまう。
そんな中でもオジュール達は王都に戻っていた。
流石に連日の連戦と激戦で疲弊しているのもあったが――それ以上に問題になっている議題があるのだった。
ギルド直営の宿屋の食堂でオジュールは慰労会も兼ねて食事を奢っていた。
長机を囲み、料理が山のように盛られ、さらに酒も豊富に取りそろえているかなり豪華な食事会だ。
「みんな、ありがとう。乾杯!」
オジュールが音頭をとって食事会は開催された。
参加している翼陽の団。ジョー達“双蛇”。ガルン・ガイン達“双璧”。ミック達“三槍将”の面々の表情も明るい。
なんといっても討伐した清算金が金貨500枚近くになっている。単純計算しても半分の250枚は翼陽の団に、残りの250枚は双蛇、双璧、三槍将の人数で割る事になっている。取り分は1人金貨25枚だ。
冒険者の1ヵ月の稼ぎとしては破格の金額を手にする事になる。
だから――みな明るい表情をしているのだ。
そんな騒がしい食事会の始まりの2番手としてヒュールが前に出る。
「みんな、そのままでいいからオレの話を聞いて食事を続けてくれ、知っていると思うがオレ達は現在1位になっている。相手は『ギグメディス』って貴族だ。その下の2位は『ラバロ』って貴族で12頭、『ウゴール』って貴族も同数らしい。つまり1位が2組、2位が2組いるって訳だ、例年稀にみる激戦ってヤツだな。で…オレがここまで言えば大体の事情を察しているヤツならわかるよな?」
ヒュールの問いかけに皆が食事をして頷いた。
「そうだ、オレ達はこれから4日間休んで山に戻る、それから全力で『適当にやるぞ』」
そう宣言した。
オジュール達が直面している問題とはこのまま独走の優勝である。
優勝だけは避けたいのだった。
当初の目的はちょうど良い順位になって『名を売る事』だ。
――それは今も変わっていない。
現在終盤になり、ランキング1位の称号を手にしているので名は売れている、よって目的は達成済み。王都では初の冒険者オジュール率いる翼陽の団の優勝か――と、にわかに騒いでいる。
しかし、このままでは1位になってしまう。この事だけは避けなくてはいけない。
なぜなら、歴代優勝者は全て王国貴族が独占している。過去の歴史を遡っても20年前に、ある冒険者の率いる組が3位に入った事があるだけだ、それ以降、上位に冒険者の率いる組は入った事が無い。
つまり、このまま優勝してしまっては初の冒険者の組としての栄誉は貰えるが、貴族の名に傷をつける事になり、さらに次のドレイク討伐武練会に参加しなくてはいけなくなる。(※強制と慣習)
そうなれば名を売り過ぎて、この国の最大の仕事の出資者である貴族からソッポを向かれてしまう可能性の方が高いのだ。
だから、ここは大人になり、将来つなげる道を選んだ賢いヒュールだった。
「とりあえず、ここまできたら3位狙いだ。上位5組には王国から賞金が出るみたいだから、みんなもそのつもりで」
ヒュールがそう言うと「お~~~~ッ!!」と陽気な返事が返ってきた。
攻略法はアレですが。順位についてもオジュールはハナから優勝する気は始めからありません。最低2頭を目標にあげていましたから。
ですが――例えばですが日本の大会でもそう言う事はあります。
例として――大相撲。稀勢の里とかが横綱になった時は、こんなに応援している人がいたのか?と疑問がでるほどの熱狂ぶりでしたね。
野球でもそうです。
新しい記録が外国人とかにとられてなるものか!--と、あからさまな……。
そういうわけの話です。貴族に華を持たせる気遣いのお話です。
賢い選択というヤツでしょう。ぶっちりぎでの優勝も考えましたが、将来的に得をするのはどちらか?って話になると3位が一番無難です。ええ、本当に。




