ドレイク討伐3
ジョーは駆けだす。
蛇腹刀を肩に置いて肉体強化魔術を使い、四肢をしっかりと地面に着け固定して、目の前にいるガルン達に首を伸ばし火炎を吐いているドレイクの首元に狙いを定めた。
魔力を脚に集めさらに速度を出した。
――炎を吐き出す事に集中しているドレイクはジョーの接近に気がつかない。
そのまま、両手で蛇腹刀を握り。そのまま移動速度と剣撃速度を合わせ振り下ろした。
ジョーの必殺技……とも呼べないが。守りの堅い標的を斬る時に活用する身体操作魔術の応用として使っている各関節と肉体を極限まで固め。力任せに斬撃を見舞う。
通称――《金剛圧撃》という一撃で力任せに仕留める時に使われる得意技を繰り出した。
鈍い衝撃音と共に、ドレイクの頭は火炎を吐いたまま移動した。
周りの草木に炎が燃え広がる。
(ダメだ、固いぞ……)
ジョーは手に残る衝撃から手ごたえを感じる。
それは間違っていない、ドレイクの首元から黒い血が噴き出しているが竜にとってそれは致命傷とはいかなかった。
ドレイクは突然の衝撃に一瞬動きを止めるが、すぐに自分が攻撃された事に気がつき眼を動かし、辺りを見渡した。
――[グゴォォォォォ!!]
すぐさま咆哮を吐いて威嚇する。そして鋭い目をジョーに向け攻撃の対象に認識したように瞳孔を細めていた。
ジョーは一撃を入れた後で素早く後退して距離を取る。
(こっちに来るな……)
そう思った時――ドレイクが咆哮をあげた。
ミックとラリーが脚元に攻撃を加えていた。
ミックは三叉の魔槍を振り回し斬撃を喰らわせ、ラリーは細かく左右に飛び跳ねて突きの連続攻撃をしていた。
その事でドレイクは前後左右に首を動かし困惑しているようだ。
どこから攻撃を開始していいのか分からなくなり、身動きもとれない事もあって非常に行動しにくそうに見えた。
さらに――ドレイクの顔面に剣光が襲う。
燃え上がる炎の中からオジュールが放った。
ドレイクの顔から血が飛び散り[キエェェェェ!]と、甲高い悲鳴を上げた。
すると、ガルン達が燃え上がる草原の中から飛び出しドレイクの前腹に槍と突き刺し、斧で切りつけていた。身体は煙と煤がついてドレイクの火炎がいかに高温だったのか分かるが、その攻撃で怯んだ者はおらず、むしろ闘志を漲らせて攻撃していた。
それは――すべて作戦通りの動きだった。
ドレイク討伐の作戦は多角的に行うと事前の打ち合わせで決めていた。
3方向に分かれドレイクの注意を引きつける。前にガルン達の守備が得意な者達を出し機動力のある者が引っかき回す。後方にいる者は前衛の支援をする。
これがドレイク討伐のおいての冒険者流のやり方になる。
燃え広がる草原に後方から水と土の魔術で消火がされ始めた場所でジョーはオジュールとヒュールに近づいた。
「大丈夫か?」
「あぁ、ジョーも良く助けてくれた」
「いいって、それよりも俺がドレイクの“腹を上げる”」
「いいのか?」――ヒュールが訊く。
「ああ、じゃあ、後は頼むぜ」
そう言ってジョーは戦場を駆けだす。
軽く片手を上げて合図を送ると、オジュールは頷き、ヒュールは通信人形を取り出した。
ジョーはそのまま迂回してドレイクの後方に回り込むように走りだした。
ガルン、ガインの双璧はドレイクの前肢の爪撃を見事に防御し耐えている。
ラリー、ミックも左右に散ってドレイクの後ろ脚に攻撃を加え動きを鈍らしていた。
その様子をジョーは確認すると、そのまま後方に行き、方向を変え――蛇腹刀を地面突き刺しながらドレイクの上方に飛び上がる大跳躍を見せた。
そのまま空中で剣を戻すと、身体を捻り、姿勢を制御して、ドレイクの背中に蛇腹刀を伸ばした。
[ズヵッ!]という固いモノに突き刺さる音と一緒に剣を戻すと、そのままジョーは背中に着地する事に成功する。
背中に違和感を覚えたドレイクは暴れてジョーを振り落とそうとするがそれほど動きは無い。
ジョーは動きが鈍っている事を確信すると、そのまま蛇腹刀を背中から抜き。飛び跳ねるように移動して。跳躍のまま、蛇腹刀をドレイクの胴体と首元に繋がる部分に思いっきり突き刺した。
その瞬間――ドレイクは今までに類を見ないほど暴れ出した。
“土縄鎖”で身体を縛られている事などお構いなしに翼を振り上げ首を上げた。
ジョーは突き刺した場所は“竜の泣き所”と呼ばれる急所の1つ。
骨と神経が集中する激痛が走る場所だった。
「グッ、暴れんな!」
蛇腹刀に捕まりながら人語を理解しないドレイクに言葉を投げかける。
その間に、ドレイクの腹部では――。
「突っ込め、好機だ!!」
ガルンの合図と共にドレイクの間合い侵入して腹に思いっきり魔力を溜めた槍を突き刺していく。それに続いてガインが斧を振り上げ斬撃を飛ばし。血が噴き出した所でグレーがドワーフ族の持つ筋肉と体格を生かした重量級の渾身の一撃をドレイクの腹に喰らわせた。
皮膚が破られ、内臓が飛び出している。
グロいが、それでもドレイクは生きていた。
「退いてくれ。俺が止めを刺す!」
オジュールの合図に前衛の者達は退き、道を開けると――オジュールは長剣で突きの構えをとる。
「―――、大剣光・《シマツキ》」
剣を突きだすと50センチはあろうかという巨大に膨張した剣光剣撃がドレイクの身体に突き刺さった。
[グオォォォォォォォォォォォ……]と長い断末魔を上げ、ドレイクはその巨体を地面に降ろした。
[ズドォォォォォォン!!]という音と振動が辺りに伝わりそのままグッタリとして動かない。
数秒の間があいて――「ヤッタァァァァッッッ!!」と周りから歓声が上がる。
「みんな、まだ近くに寄るなよ、いま確認する」
そう、すぐさま声をかけるオジュール。
彼は構えを解いてドレイクの頭部に近づいていく。
「どうだ、ヒュール? 死んでいるか?」
オジュールは確認を取るように横から走ってきたヒュールに訊いた。
「あぁ、……瞳孔が動いて無い。オジュールの攻撃は心臓を破ったな……」
ドレイクの目元を触り確認していくヒュールはそう判断を下した。
「よっしゃぁぁぁぁぁッ!! まずは1匹目だ。よくやってくれた」
剣を上げ周りに合図を送る。
すると、また歓声が上がった。
直ぐに周りから翼陽の団のメンバーが姿を見せる。
「終わったか……」
ジョーはドレイクの背中から降りていた。
【ジョー、そのまま剣を突き刺しとけ。やはり竜種の肉は美味いぞ】
嬉しそうに報告するスネーク。
それに逆らうようにジョーは背中に剣を戻した。
「スネーク、喰い過ぎは身体に毒だ」
【なんだと、せめて血だけでも飲ませろ!】
「商品に手を出すなよ。これから売るんだぞ」
【多少余るだろ、それだけでもいい】
「ダメだ、竜の血は高く売れるからな」
【ケチだ、少し位いいだろ】
「ダメだ……」
そんなやり取りをしていると――オジュール達が近づいてくる。
「まぁ、1杯位ならいいぞ……」
そう声をかけながら、続けて、ジョーに「お疲れ。上手く腹を上げてくれたな」と嬉しそうな顔でいった。
「まぁな、有言実行だからな」
ジョーはニヤリと自身満々に笑みを向けた。
「ハッハッハッ、流石だ。じゃあ、血抜きしたら樽1杯は血をやるよ、俺も有言実行だから」
オジュールは快活に笑った。
【おお、本当か、気前のいい男だ! ジョーとは違うな】
スネークがそんな事を言うと――ジョーはとりあえず柄を叩いておく。




