問題がふってくる
その後――オジュール達と食事会のような話し合いに発展していた。
食事用の机の上には翼陽の団のおごりで食事が並べられている。
大きめのパンとカッテローニサラダやギックドードのから揚げ、グレイ牛のつけダレ焼き肉、チーズとサーメル魚の挟み焼きなどのちょっと豪勢な食事と一緒に酒や飲み物が机の上に置かれていた。
「で、ヒュール。ドレイク討伐ってどんな方法で狩るんだ?」
ジョーは麦酒を美味そうに飲みながら。顔を赤らめてヒュールに尋ねた。
「あぁ……一般的な『くくり罠』を張って狩るよ」
「くくり罠って事は“鋼縄”が必要だろ? 俺達持ってないぞ」
「大丈夫、ちゃんと注文してある……クソ高い買い物だったけどな」
ヒュールは苦い顔をしながら葡萄酒を飲んだ。
『鋼縄』とは――くくり罠に使用する道具。正確には鋼鉄縄ともいい細い針金のような鋼糸を編み込んで小さな紐を造り、それをさらに編み込んで縄のように大きくしていく。
大きさは様々あり太さ8ミリから6センチと獲物の強さによって鋼縄の強靭さを変えていく。値段も長さ×太さから価値が変わり、ドレイク討伐では通常100メートルの鋼縄が予備を含めて3本必要になってくる。
当然――太ければ太いほど持ち運びもキツイ。
『くくり罠』とは――餌を撒きそれを食べるであろう魔物の足元に設置するか、獣道の移動上に設置する物に分かれる。
ドレイク討伐では前者である方法で対象の足元に設置され、通過、又は脚を踏み入れた時点で鋼縄を加工した輪を標的の脚に絡ませて動けなくする罠を仕掛ける。
周りにある太い木に鋼縄を括り付けしっかりと固定した後、バネ仕掛けと木杭を打ち。さらに0.5~1メートル程の落とし穴を脚元に掘っておく。その周りに偽装し輪にした鋼縄を設置してドレイクの脚が落っこちた瞬間に脚に巻きつくタイプが今回の狩猟の方法だった。
「そりゃ、災難だな。いくら掛かったかは聞かないでおこうか……」
ジョーは同情してしまった。
質の良い鋼縄は非常に高くそれがメートルも必要になるからだ。さらに罠の道具、撒き餌、獲物を運ぶ馬車の手配、人員の宿代など初期投資が尋常ではないほど掛かるので失敗しようモノなら被害は全部翼陽の団の損害になってしまう。それも王国は損害を補償してくれず、すべて自己負担なのが冒険者の辛い所だった。
「そう言えば…ほかに道具って必要だったか?」
ジョーは話題を変えようと違う質問をする。
「あぁ、他の用意も大丈夫だ。通信用の魔道具の準備も出来ているから安心してくれ。ジョー達は身体と魔力だけを貸してくれればいいよ……」
ヒュールの哀愁漂う言葉と表情に――。
「わかった、任せておけよ」
「私、頑張るから」
と――、ジョーとサイリアは決意を述べた。
「アッハッハッハッ、そうしてくれ、最低でも2匹ほどドレイク仕留めないと赤字になるからな……」
オジュールは冗談なのか快活そうに笑いそう言った。悲壮感は全くなく、酒で顔を赤らめている。
「団長! 笑っていられるほどの問題ではないですから……まったく」
エフレスカは涼やかな声の割に少し怒ったような感情が声に入っていた。
その事からどうやら真実のような話だった。
ジョーとサイリアはオジュール達が座る食卓を眺め、無言で食事を取っていた。
ヒュールとエフレスカは浮かない顔で食事を取り、オジュールだけは平然と肉や、から揚げを平らげ、野菜のスープを飲み、ツマミを食べながら麦酒を飲みほしていた。
(ご愁傷さま……、やっぱでっかい団は大変だな……)
ジョーはそう思い、肉と野菜をパンで挟んだ物を食べていく。
「そういや、ジョー? お前達は大丈夫なのか?」
ヒュールはこっちに顔を向け突然質問をぶつけた。
「なにを心配しているんだ?」
「いや、だって弟子をとったんだろ? なんだかこの町の領主の娘って話じゃないか……」
(あぁ~~っと、そうだな。つい同情心から了解してしまった…)
ハッとなるジョー。サイリアも同じ表情をしていた。
「あ~~と、大丈夫、何とかなるよ、たぶん……」
ジョーは弱気のまま肯定する。
「でも……カティアが納得するかしら……」
サイリアがサラダをフォークで食べながら不吉な事を言った。
※※※
オジュール達の仕事の依頼を受けた翌日。
ジョーとサイリア、それにカティアとメリーダはギルドの一画で話し合いをしていた。
机に座り面談のように話をしている。
「いやだ! 私も王都行きたい!」
カティアは周りの冒険者がジョー達の座っている席に振り返るほど大きな声で――。
「わがまま言わない。コレは依頼だから。カティアとメリーダにはその間はおとなしく訓練でもしてくれ」
ジョーは腕を組み憮然とした態度でカティアに告げる。
「ジョー師匠、お願いします。私も王都に行きたいの!!」
「お嬢さま、ジョー師匠もサイリア師匠もお仕事なら仕方がありません。それに冒険者学校の方はどうなさるおつもりですか?」
わがままを言って食い下がるカティアにメリーダが忠告した。
「いいじゃない、休んで着いていく!」
「カティア、学校休んじゃ駄目でしょ。行きなさい」
サイリアも心配そうに注意する。
「それでも行きたいの。お願いします。ジョー師匠、サイリア師匠。訓練は王都でもやるから連れってって下さい」
周りの忠告も聞かずにカティアは精一杯のわがままを貫こうとする。
だが――しかし――ジョーは――「駄目だ!!」と力強く反対した。
「そんなぁぁ……、王都で綺麗なお菓子食べで、買い物もしたいのにぃぃぃ……」
半べそになりながら、必死に懇願するカティア。
その姿は――悲しそうだが心情は必死であった。
「駄目、連れていけません。おとなしくベルンの町で学校に通い、訓練をしなさい。それにカティア、冒険者になるのに眼先の欲求に惑わされてどうする。現在が一番大事な時期じゃないか……」
ジョーはそう目上の者としてカティアに教訓を教えて、どうにかしようとしていた。
「そうよ。カティア、今が魔力や技術が伸びる成長期なんだからしっかりと訓練しておいたほうがいいの……土産持って帰るから……」
サイリアもそう言ってジョーと一緒にカティアを説得する。
メリーダも「お嬢様、諦めて下さい。それに危険ですから……」と3人掛りで説得に入った。
「いやぁぁだぁぁぁ―――!!!」
頑固として何とかしようとするカティア。そのまま机に伏してしまった。
3人が困った顔でカティアを見ていた。
「おねがいじまぁぁぁす、師匠ぉぉぉ、“セクハン”しても文句は言いませんからぁぁぁ――!!」
不意に恐ろしい事を言い出したカティア。
(おい!! ちょっと待て! その言い方は危険だぞ!!)
ジョーは思わず目を丸くしてしまう。
くくりわなはシカやイノシシ退治をしている猟師さんが詳しいと思います。
箱ワナや囲いワナはドレイク討伐ですから外しました。
消去法でくくりワナが一番かという判断です。
他にも魔術でどうにかするとか考えましたけど……正直実用的では無いのでは? と言う事で止めにしました。




