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私達、冒険者として生活します!  作者: あきら・たなか
第3章; 御嬢様の御弟子入り
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訓練1

 ジョーとサイリアは約束した通り、カティア達を連れてベルンの町の近くにある草原に馬車で移動していた。


 町から15分も離れていない場所で、周りが良く見渡せる場所に幌をつけた馬車が進んでいた。

 天気は快晴で太陽が中天を超えた辺りにあった。

 草原に風がなびいて、草木が踊っている木々の間に馬車が止まり、馬の鳴き声が風の音に消えていった。

 ジョーとサイリアが操縦席にいて、馬車の荷台の後ろからカティアとメリーダが降りてきた。


「ついた、天気もいい~!」

 カティアは降りるなり、すぐに天を見上げ背伸びをすると、屈伸をしてやる気十分だった。

「お嬢さま、はしたないですよ」

 そういってメリーダは止めようとする。

 カティア達の格好はいつもと違い甲冑も装備していなかった。それどころか麻布のような服を着て動きやすそうな格好をしている。

 ジョー達も普段着の格好で甲冑等も付けていなかった。普通の服を着て、蛇腹刀だけ背中に背負っていた。


「カティア、中から道具を取り出しておいてくれ」

 馬の手綱を木に止めているジョーからそう命令する声がした。

「はい、師匠!」

 カティアの元気な声が響いた。

 嬉しそうにカティアは馬車の荷台にある木剣を2本もっていた。メリーダが残りの2本をもってジョー達の元にやってくる。

 カティアは嬉しそうにジョーの剣を渡し、そしてジョーは3人の前に立った。

 そして――。

「じゃあ、これから訓練を開始する。各自木剣をもって、素振りからやるぞ」

 そう言って馬車から離れた場所に移動していく。


 草原の真ん中でジョーが1人達向かい合って3人が並んでいた。


「まずは、上段の構えから振り降ろし30、次は右薙ぎ、左薙ぎ、30、そして下段30やるぞ」

 そう言ってジョーは構えると――。

「1、2、3、4、……―――」

 ――ジョー達は元気よく声を出して素振りをしていた。

 

 ――そして素振りが終わる。


「……よし、止め。じゃあこれから基礎訓練だな」

 ジョーがそう言うと――カティアが「師匠、素振りってこれだけなんですか?」と質問してきた。

 その様子をメリーダとサイリアは見つめていた。

「あぁ、そうだけど。どうしたんだ? 不満そうな顔をして?」

 ジョーは怪訝そうにしているカティアにそう答えた。

「いぇ、だって、素振り10000回とかやると思っていたから……」


「ブハァッッ! 笑わすなよ、カティア。アハハハハハハハッ!」

 ジョーは思わず笑ってしまった。その後腹を抱えて笑っている。


「師匠、笑うなんて酷い! なにが可笑しいんですか?」


「……ごめんな、カティア。でも言っておくけど素振りしても強くはならないぞ。弓兵とか命中精度高めるのなら別だけど……、ハッキリ言えば筋力訓練と一緒だな、多少は強くなるかもしれないけど、効率の悪い訓練だな」

 ジョーはそう断言するように言った。

「そうなんですか? どんな訓練をするんですか?」

 カティアは不思議がっている。ジョーは軽く笑うと――。

「“基礎”って言っただろ。“転ぶ”訓練と“型”の訓練だよ」

 ハッキリとカティアに告げる。


「じゃあ、さっきの素振りはなんだったんですか?」

「あんなの只の身体を慣らす運動だよ。じゃあ、これからカティアに転ぶ訓練をしてもらうからな」

「それって訓練なんですか?」

「そうだよ」

 

 カティアが納得して無い顔をしていると――。

「ジョー、本当にやらせるの?」

 とサイリアが苦い顔をしてジョーに訊く。


「ああ、何か問題があるのか、サイリア?」

「いぇ、だって初日から厳しいじゃない?」

「大丈夫だって、必要なことだろ」

 ジョーは何も考えても無いように軽くサイリアにそう告げる。

「……もう、いいわ」

 サイリアも諦めたようにそう言った。

 そのやり取りを眺め不思議そうにしているカティアとメリーダだった。


「アッ、忘れてた、その前に用意するヤツがあったんだ。ちょっと待ってろ」

 ジョーそう言ってかけ足で馬車に荷台に行き、飛び乗って直ぐに中にある木箱を持ちあげ運んできた。


[ガチャ、ガチャ……]と中から金属音がする小型の木箱をカティアの前に置くと、布袋を取り出す。

 その袋を開き、地面に胸当て、肩当て、肘当て、手甲、(ひざ)当てと兜を置いていく。

 肩当てや胸当ては金属板を簡単に加工して皮帯をとりつけてあるだけだった。肘当ても膝当ても同様の安物で、手甲は皮手袋に金属板を張りつけてあるだけのものだ。

 兜はバルブータ風の兜で形状は砲弾型の頭全体を覆い、目と鼻を出す為にT字型の開口部が空いている廉価(れんか)な兜だった。


「カティア、防具をつけるんだ、頭に布を当てておけよ。怪我するからな」

「はい、師匠」

 カティアは言う事をちゃんと聞いて返事をした。

 これからやる事を完全に理解はしていないが、師匠であるジョーが言う事ならやろうとカティアは思っている。

 嬉しそうに初めての訓練を楽しんでいた。

 カティアはそのまま長けが合わない防具をメリーダに手伝ってもらい着けていく。


 防具をつけている間にジョーは身体を(ひね)り、首を回し、準備をしながら待っていた。

 そんなジョーにサイリアが近づいていった。


「ジョー、本当にやるの? 素振りとかでいいんじゃないの?」

 サイリアは怒り顔になりながらジョーに詰め寄っていく。

「おいおい、サイリアまだ言うのか。『実戦に勝る成長無し』だろ? それにカティアには必要な事だ」

「でも、危ないし、なによりジョーの事嫌いになっちゃうかもよ…・…」

「俺は師匠をしてやる事をやるだけだよ。それにこの訓練は出来るだけ早くやっておいた方がいいだろ、サイリアだって判っているだろ。 嫌われる事も師匠の役目だよ」

「そうだけど……、余りやり過ぎないでね。この後、魔術訓練もするんだから」

「まぁ、できるだけ頑張るよ、それよりも回復の準備をしておいてくれよ」

「わかったわよ……」

「あぁ、頼む……」

 ジョーがお願いすると、サイリアは振り返り離れていった。

 ジョーが溜息を吐くと、カティアから「出来ました、ジョー師匠」と言う声が響いていた。


「準備出来たか、始めるぞ……」


 ジョーはそう言って、歩き出し、カティアとの近くに背中に差しておいた蛇腹刀を地面に刺した。

「スネークは審判をしてくれよ。判定は厳しい感じでな」

【わかっている、やり過ぎるなよ】

「……出来る限りそうするよ」

【まったく、大人気ない事はするな】


 スネークの言葉を聞いてジョーは微かに笑っていた。そのまま、ブカブカの兜をかぶって仁王立ちしているようなカティアの姿に向き合った。


「カティア、これから訓練を開始する。やり方は実戦形式だ」

「つまり、打ち合いですね」

「そうだ、思いっきり来るんだ」

「わかりました。……あれ、師匠……防具はいいんですか?」

「俺はいらない、じゃあ、始めようか」


 ジョーはそう言うと木剣を構える。

 カティアもすぐに木剣を構えた。


「カティア、いつでも来なさい」


 ジョーがそう言うと、カティアは「ハイ!」と声を出し、ジョーに向かって走りだした。




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