王様小鬼討伐戦[1]
サイモン達はその後冒険者達に声を掛けて人数と状態を確認している様だった。
ジョー達はその姿を見つつ、同情を隠しきれない。
王様小鬼討伐を命じたリングが来ないので仕方が無いと思うが押し付けられる方の身にもなって見ろと叫びたいが―――我慢していた。
そこは冒険者と冒険者組合に属する者の違いと領分だった。
「サイモンも辛い立場よね」
サイリアがポツリと漏らした。
「ああ、そうだな、でもこれがサイモンの仕事だからな、ギルド内の立場でも結構上の方だし、辛い所だよな」
―― そんな事を話し合いながら、時間は過ぎていく。
※※※
「来たぞ―――!!!」
どこからか声がする。
振り向くと、小鬼の集団がゆったりと歩いて行進しているのが見えた。
草原の緑の草が汚いドブ色の集団に覆われていく。
身長が90~120㎝と言う小柄な魔物で、醜い面に長い耳、皺だらけの顔が特徴の異形の集団が奇声を上げながらその集団は現れた。
「ギャン、ギャギャ……」と、ジョー達には理解できない言語を喋りながら小鬼達は王国軍が築いた拠点に近づいてくる。
「数が少ないな……」
ジョーは小鬼の軍を見ながらそう思っていた。
何度か戦場を経験いしている者なら、接近する軍の大体の数は計れる、ジョーも例外では無かった。
「そうなのジョー?」
ジョーの横にいるサイリアが訊いてくる。
「ああ…、見た所500位しかいない、事前に4000はいるって聞いただろ、後はどこにいるんだ?」
「そう言えばそうね?」
サイリアもジョーも首を傾げる、余りにおかしな小鬼の軍だったからだ。
それとはお構いなしに王国兵士300名は小鬼の集団を見たら即座に声を上げ士気を高めている、そして集団の真ん中にいる、他の兵士とは装飾が違い羽飾りを多用している全身甲冑の騎士の男が声を上げる。
「名誉ある騎士諸君、この戦いに勝利し、どこかのカネの亡者どもに、騎士の誇りと忠義を見せつけようではないか! さぁ、ザボル=バイル・フェン・リュ―スタスの名のもとに栄光の騎士よ、我に続け!!」
そう言って、王国兵士達はザボルの号令後、角笛を鳴らし突撃を開始する。
鋒矢の陣形で綺麗に整った形だった。
平地の草原を、装飾が施された布の生地と鉄当てで防備された馬が戦場を駆け巡っていく、[ドドドドドドド……]と、重低音の音が地面から鳴り響き、馬の鳴き声も響き渡る。
「あいつら、作戦も何も無いな……」
ジョーはその光景を防衛拠点から眺めていた。
「ジョー、あの王国兵士達はなんで突撃したの?」
サイリアも疑問に思った事を口にする。
「そりゃ~、騎士の名誉の為だろう、ご苦労な事だな」
「自分だって騎士じゃない名誉は無いの!?」
サイリアはジョーの言葉に噛みつくように訊いてくる。
「そんなモノは今は捨てた。まぁ、今はだけどな……」
軽くおどける様に答える、ジョーだった、その答えにサイリアも仏頂面になりながら無言だった。
「それより見ろよ、サイリア、激突するぞ」
ジョーが指をさす方向には小鬼の軍と王国兵士がそのまま衝突した。
小鬼は陣形の何も無いそのままの状態だった、防具も何も無いまま、人から奪ったであろう農具や剣、短剣、槍などを各々が適当に装備している。
そこに鋒矢の陣形を敷いた王国軍が突っ込んだ。
―― 綺麗に小鬼の軍を引き裂いていく。
小鬼達はなすすべも無く蹂躙され始めた。
ジョーの所からでも小鬼の悲鳴のような声が聴こえていた。
「おうおう、やるねぇ、見事に引き裂いたか、口だけの若造じゃないってわけだ」
ジョーは現状を見て称賛の言葉を贈る。
「ジョー、嬉しそうにしないの、私達何もして無いじゃない」
ジョーの横でサイリアは不満そうにそう言った。
「サイリア、……この依頼は、どんなに戦果をあげても報酬は一律だ。頑張っても変わらないなら、王国兵士に頑張って貰った方が楽だろ」
「そうだけど、おカネ貰っている以上はやらないと」
「そう言うなよ、周りを見ろよ、他の冒険者達は動いて無いだろ、みんな解かってるんだよ、頑張り過ぎても無駄だって」
「そうだけど……」
サイリアが辺りを見回して確認すると、他の冒険者達は静観を決め込んでいた。
―― すると戦場で声が上がる。
「ギャ! ギャ! ガギャ――!」と、上位小鬼らしき者が声上げると、戦場から1方向に逃げていく。近くにある森林に小鬼達は逃げたして行った。
脱兎の如き逃げ足で小鬼達は武器を投げ捨てて逃げていく。
「魔物達が逃げたぞ、追え―――!」
ザボルはすぐさま命令を下す。
その命令に周りの王国兵士は「オオォォォ――!」と大声を上げ追撃し始めた。
逃げる小鬼達の背後から容赦ない槍の一撃が突き刺さる。
蹂躙された小鬼達は更に数を減らし森に逃げ込んでいく。
その後を追いかける王国兵士達、容赦ない攻撃で小鬼達を追い詰めていった。
※※※
「馬鹿ヤロ―――! そいつは罠だ――!」
王国兵士の戦いを見ていた冒険者の1人が声を上げる。
その声に気がつかないまま王国兵士達は森の中に消えていった……。
「ジョー、どうして罠なの? なんであの人は警告しているの?」
サイリアは解からないと言う感じでジョーに訊いた。
「サイリア、俺達も冒険者生活も長いだろ……、その位、解れよ」
「いいじゃない、教えてくれても!!」
サイリアは声を上げる。
「……、わかったよ、覚えておけよ、小鬼達は森の中に逃げていった、それも1方向にだ! それで罠だと分かるんだよ」
「なんで?」
「普通、逃げるなら四方八方に分かれて逃げるだろ、それが謀ったみたいに1方向だ、冒険者用語なら“釣り”だな、アレは、それに森は騎馬の有利を潰すからな……」
「そうなんだ……」
ジョーの説明にサイリアも頷いた。
―― こうして、王国軍は見事に罠に引っ掛かる。




