作戦開始前4
ジョーとサイリアは草原の防柵の前に並んでいた。先遣隊が小鬼の集団を発見しこちらに向かって来ているとの報告が入ったからだ。
王国軍300名は陣の中央に綺麗に整列をしている。
冒険者達は隅の方に追いやられ適当に陣を張っている。ジョーもサイリアもその中で適当に時間を潰していた。
「サイリア、大丈夫か?」
隣にいるジョーはサイリアに話しかける、サイリアは微かに腕が震えていたからだ。
「だ、大丈夫……」
(とても、大丈夫には見えないな)
「そう緊張するな、サイリア、危険だと思ったら、そこにいるガインとガルンを盾にしろ」
前の方にいた“双璧”のガルンとガインを指さし冗談の様に言うジョーだった。
「おい、ジョー、聞こえたぞ」
ガルンが後ろを向いた。
全身鎧を身にまとい、兜の面を上げて顔だけは見えていた、その他は、肩、腕、胴、腰、脚回り全て鋼鉄製と思われる厚く、太い鎧で全身を固めている。
手には、大型の鋼鉄製の盾と、鋭く先が尖った根元が太い槍を持っていた。
隣にいる、ガインも同じ様な格好で、こちらはメイスに近い、先端が4方向に分かれている斧を装備している。
違いは武器の違いと、鎧の色が黒色か銀色しか違いは無かった。
「悪いな、ガルン、冗談だ」
そういいながら、軽く笑うジョー。
「別に、サイリアなら良いけどな、ガッハッハッ」
ガルンと豪気に笑った。
その声に周りも驚き、神経が尖っている冒険者達、緊張している冒険者達に睨まれている。
いけねぇ!と、そんな顔をしてガルンは辺りを見回した。
「兄ちゃん声がデカイよ」――近くにいたガインも注意する。
「おう、済まねえ弟よ、戦う前は辛気臭くちゃいけねぇからな、…ついな」
「兄ちゃん……」――ガインは頭を抱える。
「リーダー、あまり大きな声は止めましょうよ」
ガルン、ガインの後ろから声がする。
双璧の残りのメンバーがそこに立っていた。
1人は女性で『ミレーダ』と言う名前の、メンバーで魔術士の女性だった。
小柄な身長の150㎝、魔術士特有の深緑の帽子とマントを装備して、中に鎖帷子を装備していた。
種族は人間で、可愛いボブカットの茶色のクセ毛と大きめの目と小さい鼻と口が特徴の魔女だった。
その横に男性がいて、『ジュロー』と名前の騎士だった。身長175㎝と冒険者内でも普通で、左手に大きめの盾を装備して、腰に分厚い片刃の剣を魔物の革で造った鞘に差していた。腰の後ろにも厚手の剣を差している、頭に鉢がね、胴周りは鋼鉄鱗の鎧を装備して、小手と足当て、脚甲を装備している。
ジュローは顔に幾つも傷があり、近接戦闘型の騎士だとわかるが、優しい目と黒く短い髪が好印象の人間の青年だった。
そして、もう1人女性がいる、『リーン』と言う名の弓軽騎士だった。身長160㎝で白い髪を後ろで編み込んで、彫りは深くないが綺麗に纏まっている顔にどこか薄らと艶がある印象のハーフウッドの女性だった。
背中に、木と鉄と魔物の牙を合わせたような合成弓だった。腰の後ろに矢筒を下げそこにいた、左の腰の帯には片手剣もぶら下がっている。
胸は鉄板と革で造った胸当て、手には銅製小手を装備して、腰から膝までは革当てを着けていたしていた、脚は鉄の脚甲と革靴を混ぜた装備をしている。
上半身は装備があまり無く、移動性を重視して、弓の狙撃に邪魔にならない装備と言う格好をしていた。
その3人が呆れた顔と心配そうな顔、そして無表情のままでそこに立っていた。
双璧は前衛をガルンとガインで固め、中衛にジュロー、後衛にミレーダとリーンを配置した、5人組で基本的なパーティと言えた、冒険者ではパーティを組む時、あらゆる局面を想像して組む事が大事だった。
しかし、全てがそうでは無い、当然、歪な組み方もあり得る(例;三槍将のように全員が槍等)、そこは指揮者の考え方次第となっていた。
「すまねぇ、みんな、つい気持ちが昂ってしまったからな、何、お前達も守ってやるから心配するな」
ガルンは男前な事を言いながら謝り、また豪快に笑った。そしてまた、しまったと言う顔をして辺りを見回す。
ガインは「兄ちゃん……」と、言って呆れ、ミレーダは「何言っても無駄だわ」と頭を抱え、ジュローは首を振っていた、そしてリーンは顔を赤くしている。
そんな冒険者パーティ“双璧”のいつものやり取りを見ながら、ジョーとサイリアは何となく落ち着いていく。
ガルンは豪快過ぎるが、その性格は時に助けになっていた。―――
―― 突然。「ガルン、私達も盾役で守ってよ」
そう、横から声が掛かる、その方向を見ると、ラビス、アンジー、ミレイの3人がいる、冒険者チームの“ミラーキャット”がそこにいた。
当然、声を掛けてきたのはラビスだった、いつもの明るい感じで声を掛けてくる。
アンジーもミレイもゆっくりその後をついてきた。
「よう、ミラーキャットのお嬢さん方! お前らもこの作戦に参加していたのか?」
ジョーが軽い感じで質問した。
「なに、その言い方、私達が参加しちゃいけない訳?」
「そうじゃないよ、ラビス、お前らギルマス嫌いだろ?」
「ああ、その事!? …まぁ、合っているけどアノ受付嬢達のポーズ見たら嫌いな事も吹き飛んだからいいの」
そう言って、ラビスは“サイモンの秘策”の時を思い出し満足そうな表情を浮かべる。
(まぁ、たしかに恥じらいがある中に光るモノが見れたからな……その前の汚物(※リングのポーズ)が良い効果を発揮したな)
ジョーも満足しながらその時を思い出した。
あの瞬間、リングは彼女達を輝かせていた、意図しないまでも相対的にリングは噛ませ犬の効果を発揮していた。
周りにいるジョー達も『なんだか温かい気持ちになる』、
「……結局、サイモンにやられたね」
ラビスがそう告げると……。
「それは光栄です」と後ろの方から声が掛かる。
サイモンが馬に乗ってギルド職員を2人つれてそこにいる。
ジョー達も振り返り驚いている。
「どうした、サイモン! こんな所まで」
「いえ、ギルド職員として“戦目付け”と言った所でしょうか」
サイモンは淡々と告げると後ろにいた職員達は溜息をついていた。
今回の様に、ギルド側が指令を出した小鬼の討伐依頼だと依頼人がいない、だから実際に査定のしようが無い為、ギルド職員を派遣して状況を見る決まりになっていた。
――正確にはギルドマスターが確認するのが普通だが……。
「あれ、ギルマスは?」
「不参加です、『お腹が痛いから、貴方達で行ってきなさい』と命令されて、部屋に閉じこもりました」
「………」――その場にいる全員がサイモンの言葉に無言になった。
(あいつ、蔑ろにされたから怒っているな。……でも全部ギルマスのせいだろ)
ジョーはそのように思っている。
周りの者達も眉間に皺を寄せて、腕を組んだりしながら、ジョーと同じ事を考えている様だった。
――傲慢な上司の尻拭いをするのはいつも部下達(※サイモン)の仕事だった。
20話到達しました。
嬉しいです、細かい投稿が続いてますが、こっちのほうがやりやすいので続けます。




