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霧隠あさひは今日も全く忍べてない!  作者: まるたん・しもんず


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第三話 ③

自宅マンション前に着いて、

握っていたメイお姉ちゃんの手を離すと、

メイお姉ちゃんはそのまま地面に崩れ落ちた。


「ウェッ…ウップ…ゼェゼェ、ウゲェェェ…あさひ、覚えてろよ…」


なんか女として出してはいけない音を発してた。


その姿に、さっき一方的にやられた溜飲が下がるのを感じながら、3階の我が家に向かう。


ドアを開けて中に入ると、お母さんが二度寝から起きて、リビングのソファーで優雅にコーヒーを飲んでいた。


「おかえりなさい。芽依は大丈夫だったかしら?」


「ただいま。うん大丈夫だと思うよ。とりあえずエントランスに置いてきたけど」


そんなやりとりしてると、


「あさひ〜…テメェ、許さないからな〜」


って言いながら、完全グロッキーなメイお姉ちゃんが、玄関からズルズルと這ってきていた。


なんか呪われそうで怖いんだけど。


「あんたが自分でついて行ったんでしょ?自業自得よ」


よかった。

お母さんは私の味方のようだ。


何とか這ってたどり着いたソファーに座ったメイお姉ちゃんが、必死に言い訳してる。


「違うの!あさひが私との勝負に負けた腹いせに、私の手を掴んで強引に引っ張ったからで…」


「それこそ自業自得じゃない。あさひごときに勝ったぐらいで油断した芽依が未熟なだけよ」


ん?

今、『ごとき』とか言われた?

お母さん?味方なんだよね?


「うう…確かにあさひごときに勝って浮かれてたのは事実だけど…」


…どうやらこの姉妹にとって私は『ごとき』というのが共通認識みたいだ。ちょっとカチンときちゃったから


「でもメイお姉ちゃんすごかったよ。お母さんも結婚してから何にもしてないんでしょ?今なら負けちゃうんじゃない?メイお姉ちゃんも次期当主なんだしもうお母さんにも余裕で勝てちゃうよね!」


姉妹同士をぶつけて潰し合わせる作戦だ。


それを聞いたお母さんが、珍しく声を出して笑ったかと思うと


「あさひったら何言ってのよ。いくら修行してないからって、私が芽依みたいなミジンコに遅れをとるなんてありえないわよ。そうよね?芽依。」


そう言ってメイお姉ちゃんに笑顔を向けた。


「ハハハ…そうだぞぉ。

あさひ、そういう冗談はよくないかなぁって思うぞ…」


目が泳いで、

体も小刻みにガクブルだ…。


私は過剰にメイお姉ちゃんを怖がらせてしまったらしい。

ごめんなさい。


「ピロピロピローン♪

お風呂が沸きました」


リビングに、

そんな機械音声が響く。


「お風呂準備しておいたから二人で入ってらっしゃい」


さすがお母さん!

気がきくね。

ボタン押すだけのことだけど。


そんなわけで、

メイお姉ちゃんと一緒にお風呂へ。


メイお姉ちゃんは豪快に服を脱ぎ捨てると、

手早く髪をまとめて体を軽く流し、

湯船に浸かって、


「あ゛あ゛あ゛〜い゛ぎがえるうう〜」


とか言ってる。

完全にオヤジだ。


見た目は平成初期のガングロ女子高生!

中身は中年オヤジ!


…って世代的にはおんなじか?

でも実年齢29歳の女盛りがそれでいいのかは疑問だけど。


それにしても…

思わず湯船で気持ちよさそうにしてる

メイお姉ちゃんの体を、

まじまじと見つめてしまった。


お母さんもそうだけど、

妹のメイお姉ちゃんも実年齢よりかなり若く見えるんだよね。


流石に女子高生はキツいけど、

大卒新社会人と言われたらそう思える肌艶だし、

顔も童顔ってわけではないけど…すごく整ってて若い。


あと二人ともだけど、お胸がたわわだ。

ちゃんと遺伝してくれてるといいな。


「あさひ、どした?そんなに見つめちゃイヤーん」


メイお姉ちゃんが胸を腕で隠しながらそんなこと言ってる。


多分何か元ネタがあるんだろうけど、

わかんないからスルーしよう。

ジェネレーションギャップだ。


「ごめんね。

メイお姉ちゃんのお肌綺麗だから見惚れちゃった。」


「うっ…

そんなどストレートに言われると照れるな。ハハ」


そう、この人は普段おちゃらけているけど、

本当はピュアピュアな乙女なのだ。


「何でメイお姉ちゃんってこんな綺麗で優しいのに結婚しないの?」


「あさひ、お前まださっき負けたこと根に持ってんな!」


チッ!バレたか。

でも本当に不思議なのだ。


今でこそガングロ女子高生姿だけど、

普段は本当に黒髪が似合う和風美人なうえ、

バリキャリシゴデキウーマンでスーツ姿もかっこいい。


いつも私を気遣ってくれる優しさも兼ね備えてるのに。


「根に持ってるのもあるけど…

本気で不思議でもあるよ。」


素直に聞いちゃった。


「うーん…わかったよ。

ちょっと話してやるから、あさひも浸かりな。

今ならお姉ちゃんがギュッてしてやるぞ。」


私は少し照れながら湯船に入り、

メイお姉ちゃんに背中からもたれかかる。


言った通り、

ギュッて抱きしめてくれるメイお姉ちゃんは本当に優しい。


「まあ、ぶっちゃけちゃうと、

仕事が仕事だから普通に出会いがないんだよ…

じゃあ職場を見れば…

だいたいは忍者とか陰陽師しかいない職場でな。」


「えっ、それなんかダメなの?」


「はぁ…あさひ、霧隠一族の中で知ってる男衆は?」


「えっと博満じいちゃんと分家の仙一じいちゃんに勝じいちゃん。

いつまてもガキ大将の武史おじさんにラジコンの昌おじさん、あとはお金に汚い孝介兄ちゃんと庶民派死神の仁紀兄ちゃんとイケメンの拓也さんかな。

あっ、それと宏斗くんだ」


私は知ってる男の親戚の名をあげる。


「どうだ?

みんな個性的かつちょっと…いやかなり変だろ?」


言われてみれば。


「まあ、うちの家系ほどエキセントリックなのは流石にいないけど、

忍者の男って何かしらクセ強なんだよ。

仕事で付き合うには許容できるんだが…

いざ異性としてみるとな。

私みたいな常識人とは少し合わないと思ってな。」


どうやらメイお姉ちゃんは自分を常識人と認識してるようだ。

勘違い甚だしい。


確かに普段のシゴデキウーマン姿しか知らないころならそう思えたかもだけど…

ガングロ女子高生姿でギャルピやeggポーズきめてる姿見せつけた29歳を

常識人扱いできるほど私はおおらかじゃない。


「へぇ〜」


私はそう返事だけして、

湯船から上がり体を洗うと、

さっさと風呂場から出て体を拭き始める。


「あさひ〜さっきは本当にごめんよ〜。

もう許してよー…」


どうやらメイお姉ちゃんは、

まだ私が負けたことでヘソを曲げていると思ってるようだ。


まあ、それもあるけどね。

でもこうやってイジるのも、

私がメイお姉ちゃんのこと大好きだからだよ。


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