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商店街といっても、端から端まで100m足らずの中、店が並んでいるだけの所で、それも半分以上がシャッターを下ろしてしまっている。量販店やディスカウントストアの台頭によって衰退した、地方商店街の典型的な姿だ。
裏通りだから、人通りが少ないだろうと恐れていた曽山と石原だったが、表通りでも、この有様だ。裏通りに入ると、人通りが、まったく途絶えてしまった。
喫茶店『アドラメレク』は、すぐに見つけることができた。ゴロツキ共が集まる西部劇の酒場のようなものを想像していたが、ただの小さな喫茶店だった。
白地の看板に真っ黒な字で『アドラメレク』と、昔のマンガのタイトルのような、太い、尖った字体で書いてある。外壁はモルタル塗で真っ白。そこに嵌っている窓枠と、入口の分厚いドアは真っ黒で、まるで、チェス盤のような色合いをしていた。窓から見える店の中は暗く、果たして春人がいるのかどうか、中に入らなければ確認することはできない。
「おい、やめとこうぜ」。石原が曽山を引き留めて言った。「ここに入ったら、二度と出て来れんぞ。だいたい、これは佳織さんと、その家族の問題やろ?オイたちが、そこまでしてやる義理は無いって」
その通り。俺と、俺の家族の問題だ。お前たちに、そこまでしてもらう義理はない。
だが曽山は、
「子供一人に説教するだけの話だ。そんなに怖がることもないだろう」
「一人やない!こういう所はな、悪党の巣みたいなもんや。言うとやろ?一人見たら、十人はいると思え」
「殺虫剤の、CMの文句じゃなかったか?確か、ゴキブリの…」
「同じようなもんばい!監禁されて、リンチを受けて、建設現場に埋められっとぞ!」
曽山は、しかめっ面して、頭をバリバリと掻いた。
「俺は行く。嫌なら、残れ。無理に来いとは言わん」
言いながら、喫茶店のドアに手をかけた。
「知らんぞ!どんな目に合っても!俺は行かんからな!本当に、行かんからな!」
石原が喚いている声を尻に、曽山はドアを開いた。ベルがガランと音を立てた。
「クッソ!バカ!バカバカバカバカバカ!」。石原は、激しく地団駄を踏んだ。




