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妙なことになった。
俺は大学時代の友人二人と、俺の墓参りに行くのだ。
善は急げと、二人はすぐに動きだした。
曽山が夜行バスのチケットを手配しに出かけた間に、石原はテントを片付け始めた。
何処からか持って来たリヤカーに、テレビや冷蔵庫、ガラクタ一式、畳んだブルーシートとばらした床板を積み込んで、引いていく。薄汚い作業着を着た石原は、驚くほどリヤカーが似合った。
向かった先は、近くのトランクルームだ。金網に囲まれたスペースに、緑色のコンテナが並んであった。受付に声をかけて、コンテナについたドアの一つを開けてもらい、中に荷物を詰め込んだ。
石原が公園に戻ると、既に曽山が戻っていて、チケットの一枚を石原に手渡した。
「今晩、9時に新宿駅前だ」
「いくらや?」
「いいよ。お前から金をもらおうなんて、考えちゃいないよ」
「ホームレスやからって馬鹿にすんなよ。俺たちにだって仕事はあるし、それに、家賃がいらんとぞ?」
そう言って石原は、持っていたセカンドバッグから、ガサゴソとナイロン袋を取り出した。透けて、中の一万円札の束が見える。少なく見積もっても、百万円くらいはあった。
それを見て、曽山が目を丸くする。
「金持ちやなんて思うなよ。45歳の全財産にしちゃ、少なかやろ」
曽山は、複雑な表情でバス代を受け取った。
バスが発車すると、間もなく二人は眠りについた。
三列に並んだリクライニングシートは、公園のベンチよりは寝心地が良いだろう。
平日の夜だ。大阪行きのバスは人気路線のはずだが、座席は半分近く空いていた。俺は、そのうち一つに腰を下ろした。残念ながら、リクライニングを倒すことはできない。眠らないのだから、倒す必要はないが、一晩中、こうして座っているのも、妙な気分だ。世界中を回った二年間を思い出した。
幻の体に纏った衣服は、やはり幻で、そのため、どこかに引っ掛けることもなければ、縫い目がほつれたりすることもない。汚れることもない。汗をかいたって、臭うこともない。俺が死んだときのままの状態だ。脱ぐことはできるが、夏でも暑いと感じたことはなかったし、脱ぐと失くしそうだから、ずっと着たままでいた。
俺が二年間着たままのブルゾンは、胸にポケットがついていて、ファスナーで閉じられるようになっている。もう長い間、開けたことのないファスナーだった。
俺は、ファスナーを下ろすと、中から、二枚残った夢枕回数券を取り出した。ずっとポケットに入ったままで、多少ひしゃげていたが、回数券は、ちゃんとそこにあった。
もう、残り少ないな。だが、本来は、こうして使うものなんだ。
俺は、ミシン目に沿って、回数券を一枚切り取った。




