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改めてもう一度、大家に電話をすると、敷金を返金してもらうための口座番号を伝え、次の住処が決まるまで、今日送られてくるはずの荷物をしばらく預かってくれと頼んだ。
さっそく不動産屋にでも行くのかと思いきや、地下鉄で三駅乗って、スーパーに立ち寄り、弁当や惣菜の寿司なんかをたっぷり買い込んだ。
それを持って公園に戻り、テントの入口に立つ。
石原は、テントの奥でボーッと座っていたが、曽山の姿を見るとパッと顔を輝かせ、
「何処行ってたとや、ソーヤン!てっきり、出て行ったんかと思ったやなかか!」
曽山はフッと笑って、手にぶら下げたスーパーの買い物袋を見せた。
アパートの入居が無くなって、また不幸が上乗せされ、一段と落ち込むかと心配した俺だったが、どうやら取り越し苦労だったらしい。逆に、何処か吹っ切れたような曽山は、いつになく清々しい表情をしていた。
買い込んだ食料は、軽く四人前あったが、二人は、全部平らげた。
「まさかとは思うが、お前、このままホームレスになる気じゃないやろうな」。妙に機嫌が良い曽山を見て、俺は言った。
しかし、出て行った奥さんと子供が帰って来る見込みは薄そうだし、本人が楽しいのなら、それも良いかもしれない。
「行くか!」。食い終わった弁当ガラを、スーパーの袋にまとめて、曽山が突然大きな声を出した。
「え?」。俺と石原の声が重なる。
「だから、行くか。純平の墓参り!他にすることも無いしな。やはり、行くなら今かもしれん」
「よかと?忙しいんやろ?」
「それが…、よくよく考えたら、忙しくなんてないことに気が付いたんだ。仕事は無いし、入居の話も無くなった。他の部屋を探すのも、もう少し先でいいだろう。今まで、忙しい忙しいと思っていたが、忙しいというよりは、俺が一人で焦っていただけだったんだな。この二十年、ずっと」
曽山が言うと、石原は、ガハハと笑って、曽山の背中をバンバン叩いた。
「その通りや。人間、ゆったりと生きるのが一番!成長したな、ソーヤン!」
曽山は、照れ臭そうに鼻の下を掻いた。
「何を偉そうに…」
俺は呆れて、楽しそうな二人の様子を眺めていた。




