第28話:Japan New Partner and Summer night
第28話:Japan New Partner and Summer night
市ヶ谷駐屯地の地下作戦司令室に通ずる入り口に着くと、山岩陸将が立っていた。
「山岩陸将……カロライナは……カロライナは……!!」
「あぁ、分かっている。彼女は国ではなく、自分の愛する人の為に全てを敵に回した。先程JSOCから連絡が来て、ラストトリガーの殲滅が確認されたそうだ。リリーナ君、君も会議室に来ないか?」
「スパシーバ」
そのままエレベーターに乗り、何故か下がるようにエレベーターは動き、ポーンという音と共に扉が開くと魔砲殺しを持った特殊部隊と思われる自衛官達が警備している会議室の入り口があった。
彼らは私達に敬礼し、我々も敬礼を返し、会議室内へと入る。
そこには国岩陸将補、神長三等陸佐、ゼールーア大佐など魔法特殊作戦機動師団の主要メンバーが集まっていた。
「朝月2等陸佐、大丈夫か?」
「あまり……」
「済まなかった……デリカシーに欠けていた」
国岩陸将補が珍しく、謝罪し、私たちは席へと座る。
「まず、集まった魔法特殊作戦機動師団の幹部諸君に伝えねばならない事がある……この度の件を受けて黒柳総理は米国との魔砲戦力装備協定を破棄。我が国の最高峰の魔砲少女の1人朝月2等陸佐を狙った暗殺未遂として国連の定める魔砲少女戦力人権条約に違反したとして謝罪も求めてる」
大事になったな……まぁ、それも当然か……
此度の米軍の強権的な介入により日米の信頼関係は壊滅的痛手を受け、米国側は主力魔砲戦力を失った。再建には数年近くかかるだろう。
だが、本来ならカロライナのような世界でも最強クラスの魔砲少女1人と魔法戦Tier1クラスの特殊部隊を失って、数年近くで再建できる事がおかしいのだ。
「現時点の米国からの声明はありません。恐らく弁明に相当な時間と人力を掛けていると思われます」
国岩陸将補からの情報が伝わり、リリーナが「これだからヤンキーは……」と口癖が漏れる。
ゼールーア大佐も報告書を確認しながら「提言の許可を」と山岩陸将から許可を貰う。
「現時点を鑑みれば日米安保条約も機能不全に陥る可能性が高いと考えられます。そんな中で魔術界との戦闘に加え、近隣諸国との仮想敵国との戦闘が発生した場合日本の国力基盤では耐えられない可能性があります」
山岩陸将は電子タバコを吸い、煙を吐き出しながら、現実的な数値を口にする。
「現在自衛隊に所属する魔砲少女は120名、中華連邦に所属する魔砲少女340名、ノースコリアンに所属する魔砲少女18名……これだけ見れば自衛隊以外の戦力が合わされば厄介に見えるが、魔砲少女としての質で見た場合これらのメンバーであれば上位30位は自衛隊が独占できると。私は考えている」
そんな時神長三等陸佐が苦言を呈した。
「現代戦において魔砲少女の重要性はかつての時代とは比べ物になりません。火薬、原爆、無人航空機に次ぐ第4の革命として魔砲戦力があるのは事実です。ですがそれでも基礎的な戦力の有用性に変わりはありません」
「それも同意だ。だからこそ我々は最強の基盤を用意する」
会議室の空気が静まり返った。一体何が始まろうとしているのか。
「魔術界との同盟締結の動きに日本政府は全力を尽くす。これはまだ非公式だが朝月君達は知っているだろう。この前の魔術界への会議。あれは日米どちらかに魔術界が同盟を結ぶ為の会議だった。結果として日本が選ばれ、なおかつ朝月君の信頼性からイノセント・ピースが渡された」
結局これだ。魔術界もより上位の存在に人類の戦争を辞めさせるように言われ、魔砲少女制度を作り、結果として魔術界も戦争に加わる。
これではまるで、人類が戦争を招く疫病神ではないか。
「山岩陸将……我々魔砲少女の責任って……」
「君が悩む必要はない。我々大人の責任だ。黒柳総理も三永防衛大臣も魔砲少女に非がある、責任があるとは思っていない。そしてその証拠として……そろそろだな。入りたまえ」
ドアが開かれると、清水先輩と同じ日本人にしては異常な水色の髪をして、清水先輩によく似た中学生くらいの少女が入ってきた。
リリーナも感じたのか、かなりの魔力量だ。
「清水玲奈魔法参謀担当官だ。階級は一等陸佐。朝月君の先輩である清水元一等陸佐の妹だ」
「よろしくお願いいたします。この度は姉に代わり、魔法特殊作戦機動師団の高機動的動きができるように『幕僚』から『参謀』に変わった自衛隊組織で活躍する所存です」
清水先輩の妹……!!本当に清水先輩にそっくりだ……まるで彼女が若返ったようにも思える。
私は思わず立ち上がり、握手する。
「朝月弥生2等陸佐です!清水先輩には大変お世話になりました!妹さんが新たに協力してもらえるのはとても嬉しいです!」
「朝月さん、姉から話は聞いてます。とても繊細で涙もろいけど強いお方だと。お会いできて光栄です。階級は気にしなくて構いません。1階級しか違わず、私は基本的には戦場に出ないので」
山岩陸将は咳払いをして、私は席に戻り、山岩陸将の言う証拠を聞かせてもらう。
「知っての通り清水家は強力な潜在的魔力量のある家系だ。その子を戦力に回さず、基本的には魔砲少女の交流や部隊後方の円滑な連携や機動に尽力。魔砲少女を兵器として見ずに、1人の軍人として活躍してもらう。兵器には出来ない所業だろうな」
そしてしばらく互いに自由交流として、情報や趣味の話をして、桜さんとも合流し、帰宅する。
現実感がなかなか実感出来ないが、もうカロライナは居ない。これから先極東管区の魔砲少女を引っ張るのは私の役目だ。
国際言語文化高等学校 終業式
「……皆さん、いよいよ夏休みですね。海外に旅行や自習に行く方も多いでしょう。日本に残る方もくれぐれも他国との隔たりではなく、共通を認識して、世界平和に貢献できるような大人を目指す青春を過ごしてください。以上です」
意外な事にこの高校には期末試験は無く、その代わりに言語学習レポートで長期休暇と成績が決まるという少し変わった校風だと感じた。
その帰りに桜さんと体の一部にまだ包帯を巻いてるララさんと共に県外へ向かう。カロライナ本人の意向で日本国内の弥生桜が植えてある墓地に埋葬されたという霊園と向かった。
そこにララさんのSクラスベンツで向かい、他の極東管区魔砲少女小隊と合流する。
「Danke、ララ。カロライナの為に尽くしてくれて」
「ララさん、ありがとうございます。イギリスの魔砲少女を代表して、尊敬と感謝を申し上げます」
「メリンの助けになってくださりありがとうございます。ララさん。私が相棒なのにそばにいれなかった事に謝罪を……」
ララさんは緊張しながらも、腰を曲げ、一言。
「私も守りきれず申し訳ございませんでした……」
ここは小隊長の私が空気を変えなきゃね……カロライナはこういう空気はあまり好まないタイプだ。
「皆、カロライナが泣いちゃうよ。笑顔で送り出してあげようよ」
「だね」
「うん!」
各自が頷き合い、手を合わせる。カロライナがせめて天国では安らかに眠れるように。
血と硝煙の漂う理不尽な戦争から回避されるように……と。
その日の夜内閣府総合庁舎ビルの屋上にて……
「黒姫、なぜ私を助けた?」
「それは当然でしょ。戦略的にあなたは有用で、失うと人類の損失だからよ」
私はココアを飲みながら、空を眺める。この月の下に人々は生きているのだ。私が守りきった人達が。
「これから私はどうすればいい?」
「日本国国家情報局の人間として動いてもらえればそれでいい。コードネームはロイヤル・チャールズ。あなたなら由来は分かるでしょ」
私は少し深呼吸し、結局祖国の呪縛からは解放されないんだなと実感する。
「イギリス王室からの功績を与えられた8人の貴族に恥じない形で頑張るよ」
「それじゃあよろしくね。祖国を裏切った『貴族の亡霊』さん」
私は彼女の背中を追いながら、これから新しい祖国日本の為に諜報活動や破壊工作を実施する。火力のカロライナは死んだ。今は亡霊のチャールズだ。
「こんばんは、続きが遅れたりして申し上げないです。如何だったでしょうか?私たちの始まりの第1章は。第2章と商業前提の作品を作ってるそうなので遅くはなると思いますが第2章も送れたらと思います。評価をもし頂ければ執筆速度を上げさせていただきます。それでは、また新しい戦場で」




