第1話: new spring mission
第1話: new spring mission
春風が新しい風を運ぶ。そんな穏やかな陽気は過ぎ去り、春雷とも言える雨が窓を叩く中私は、誰もいない教室で拳銃を組み立てていた。
無論エアガンやモデルガンではない。実銃であり、学校側も容認している。そんなおかしな話が現代日本で通用するのか聞かれたら、私は防衛省に問い合わせてほしいとしか言えない。何しろ私は自衛隊の魔法特殊作戦コマンド所属の隊員なのだから。
「はぁ……明日土曜日だけど出勤かぁ……貴重な女子高生の休日なのに……」
思わず愚痴が零れてしまうが、それは己のメンタルマネジメントと上司とのコミュニケーションに問題があることに起因する。だが、私としては前者が主要因を示すだろう。
魔砲少女としてメンタルマネジメントに問題があるのは、事実レベルでの問題だ。深呼吸し、整える。
「よしっ!」
黒いロングスライド(長銃身)のコルト・ターミネーター拳銃が2丁手元にある。某空網コンピュータの作品は関係ないが、単純に近距離で持ち運びやすく、命中率と威力を上げるならロングスライド化と45口径拳銃は悪くない選択肢だと信じている。
コンコン
ドアがノックされたので、拳銃を規定通り、学生鞄の中に隠して出迎える。
「はい、どなたでしょうか?」
「担任の鈴木だ。放課後、校長面談室に来て貰えるか?」
「用件をお聞きしても?」
「魔砲少女絡みらしいが、俺も詳しくは知らない。まぁ校長の事だから変なことでないと思うぞ」
乙女の放課後の貴重な時間をなんだと……まぁ、いい。高校生で月給30万円と危険手当が国から支給される以上文句は言えない。
「承知しました。先生、今日もよろしくお願いいたします!」
「おうっ!朝月さんはいつも元気だな」
「所属は自衛官ですからね。挨拶は基本です」
鈴木担任は「その通りだな」と言って去っていく。これで学内での評価も悪くない。中間試験前の真面目な女子高生として振る舞う。
そうそう、乙女で思い出したが私が魔砲少女になったキッカケを思い出す。
単純だった、家族がいないから。兄弟もおらず、両親だけが家族の私に両親の事故死は突然過ぎた。ちょうどこの雷鳴のようなものだ。そして収入の為に魔砲少女の適性検査を受けたら、見事に魔砲少女の基盤となる乙女の願望が充分にあり、8年前にギリシャのパラベラム祭壇で魔砲妖精に平和の誓いを立て、心の弾丸を埋め込まれる。
そう、魔砲少女は契約上は人類が戦争を起こさないようにする為の制度だ。そのため人間を殺せば心の弾丸が侵食される。完全に侵食された魔砲少女はその生を終えるのは想像にかたくない。だが、侵食を浄化する手段もある。それは魔砲少女を殺すこと。
ある種の地獄のようなマッチポンプの仕組みに腹が立つが、契約は契約。幼き頃の私に他に選択肢があったのか、たまに疑問に思う。
教室に着くと、他の女子から声をかけれる。
「朝月さん!おはよう!」
「おはようございます、三河さん。佐奈川さんも元気にしてらっしゃいますか?」
「はい!クラスの保健委員として、教室の全生徒の健康の維持は私の責務です!私でも……衛生科に入れますかね?」
三河さんは友達であり、自衛官に憧れている1人だ。魔砲少女達はその存在の特性から下手に隠密すれば行動しにくく、無関係者や怪しき者の命を失う可能性があるため、一部の情報は非公開だが、日本政府は所属している魔砲少女は全員公開している。逆に言えば公開されてない魔砲少女……それこそが明確に日本政府の敵なのだ。
「三河さんはお優しいですし、何より私と同じ1年生で委員会を務めてるじゃないですか。そういった進んで動く姿勢は自衛隊では評価されますよ」
「はい!ありがとうございます!朝月三等陸佐!」
私は笑顔を返し、席に座る。
さてさて、今日の授業内容は昨日に予習済み、私の独壇場だ。
そしてその日の授業は私の予想通り、独壇場だった。積極的に手を挙げて、休憩時間も予習は欠かせない。しかも学食は私の好きなカレーライス。放課後面談もチャラでもいい。
放課後
鈴木先生の後に付きながら校長面談室まで向かう。
今更ながらこの高校は国際言語文化高等学校という事で、敷地面積も広く、外国人が居ても怪しまれない。つまりは他国の魔砲少女との交流も比較的円滑に行える。
そして少し豪華な木製のドアの前で、鈴木先生はノックして、先に入る。
数分後に私も入るように言われて入室すると校長の隣に私の教官、国岩一等陸佐が座っており、向かいには俯いてる少女が座っていた。
「一佐、仕事の件ですか?」
「あぁ、お前にしか頼めん」
ガタイのいい体格から放たれるその低い声は、人によっては恐怖を覚えるだろう。だが、この人は不真面目だったりしなければ、かなり優しい人だ。口調や声の感じ方で怖がるかもしれないが、魔法特殊作戦コマンドの魔砲少女主任教官ならやむを得ずと言える。
国岩一等陸佐の視線ですぐに、この俯いてる少女の隣に座れという意思に気が付き、隣に座る。
「彼女は三永防衛大臣の娘、三永桜だ。現階級は訓練生の為階級は無い。だが訓練後は三等陸佐として魔法特殊作戦コマンドに編入予定だ」
そこで私は大体の察しがついた。三永桜の護衛と教育が主な目的。そう考えるのが妥当。
「三永訓練生の護衛と教育……でしょうか?」
「ご名答。優秀な自衛官で助かるよ、この件は山岩陸将も把握してるから安心してくれ」
「拝命いたします。ですが……桜さんとは仲良くしていきたいですね」
それでも桜さんは顔を上げないか……
「桜さん、私の事は弥生と読んでくれませんか?私も桜さんとお呼びしますので」
「いいよ……弥生さん……私は使われるだけの人間だから……」
私は桜さんの手を握り、励ますように、激励するように訴える。
「桜さん、安心して!私これでも強いし、桜さんの事守り通すからね!」
「……弥生さんって戦闘が怖くないんですか……?」
私は今までの記憶を振り返る。本来なら不正規の魔砲少女との戦いや侵食覚悟での対人戦……怖くない……?だが、最初の拡張現実機能での演習で、魔砲妖精達との戦闘だけは怖かった。
しかし怖くないと答えるのはデリカシーに問題がある。だが嘘をつくのもいずれバレる……それならば……
「怖くないというのもありますが……それは守るべき存在とそこにいる国岩一等陸佐に鍛えられたからですよ。実は国岩さん、あぁ見えて寂しがり屋なんです。1人じゃ寝れないから自衛隊宿舎にいるんですよ」
「ふふっ、意外でした……国岩一等陸佐は怖いイメージが先行していたので……」
国岩一等陸佐は苦虫を噛んだような、渋い表情を見せるがこれも円滑なコミュニケーションの為だ。許せ。
「では、朝月三等陸佐、頼んだよ。校長先生ありがとうございます」
「いやいや、自衛隊の方々には補助金も沢山貰ってますからね。それに優秀な魔砲少女は当校の宣伝にもなります」
「そう言って頂けると助かります。いつもご協力感謝致します。それでは当官はこれで」
私はしっかりと自衛官としての敬礼を返し、校長先生もノリのような感じの敬礼を返す。
桜さんは頭を下げるだけだ。今は無理もないか……
「桜さん、自宅はどこに?」
「えっ……国岩一等陸佐からは弥生さんの自宅に泊まるようにと……」
あのクソ一佐め!!私が断るのを想定したか!!拝命まで伏せておくこの手法は軍人なら遅かれ早かれ学ぶことになる!!先手を打たれた!!
「さ……桜さん……私の家……あまり綺麗じゃないですよ……?」
これで……これで諦めてくれ!!
「私家事が好きなのでお掃除頑張らせていただきます!食事も任せてください!実家にいた頃は全て家政婦さんがしていたので、退屈でした!」
軍人の契約にクーリングオフが適用される法律をご存知の弁護士さんが、いらっしゃましたらいつでも私の電話にご連絡お願いします。お金に糸目はつけません。
ご拝読ありがとうございます!黒井の作品では基本的に後書きで色々書いてますがこの作品ではお知らせと朝月とゲストを招いた設定補強のみとさせていただきます。
普段から読んで頂いてる読者様に最大限感謝します!




