第十七話
「……犯人と被害者は本当に入れ替わったのか? 真実は分からないまま、見世物小屋殺人事件は終幕したのであった、と」
思うままに日記を書いて、私はペンを置いた。
アーロンさんが買い与えてくれた革表紙の日記帳には、金色の刺繍で草花の模様が描かれている。
「……こんな高価そうなものに、適当なことばっかり書いていいのかしら」
今更罪悪感が芽生えてきて、私は日記帳の表紙を撫でた。
革は柔らかく、どこか暖かい手触りをしている。
ぐっと伸びをして立ち上がり、部屋の電気を消してからベッドに転がった。
クリーム色の天井を見上げていると、昼間のアーロンさんの言葉が思い浮かぶ。
『君は、心が醜いのと、見た目が醜いの。どちらの方が救いようがないと思う?』
ひどく真剣な目だった。
アーロンさんは何故、あんなことを聞いたのだろう。
彼は間違いなく誰もが見蕩れる美貌の持ち主である。
見た目が醜い者の気持ちなど分かりようもないはずだ。
それでも確かに、彼は何かを"理解"していた。
あの時、アーロンさんとサイラスさんの間には何か通じるものがあった、そう思える。
事件が謎解かれていくのを横で見ていただけで、彼は一体何を理解したのか。
あるいは、もっと何か、この事件と深い関わりがあったのか。
『そういう考えを持たない君だからこそ、私は君を買っているんだ』
「……一体、私に何を期待しているの?」
呟いた言葉は部屋の暗闇に溶け、消えていった。
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見世物小屋火災事件 fin.




