第51話 淫獣
「へ?」
「いやだから聞こえなかったのお前? 胸のサイズを測ってくれって言ったんだけど」
くすぐり過ぎたせいか、まだこっちの世界に戻ってないのかな? と言うかヨダレと鼻水を拭いて欲しいんだけど。きったないなぁ……。しかも普段以上にアホヅラになってるよ。別に今更だからどうでも良いんだけど。
「悠莉、お前……」
ん? 何でコイツは自分の貧乳、いや、ぺったんこの、胸を自称してる壁を押さえてるんだ?
「お前はなに変顔してんだよ? メジャー出すから測ってくれない」
「この淫獣めが! やはりか、やはりわらわの、わらわの……」
「お前意味が分からないよ。なぁそんなの良いから早く測ってくれないか?」
おい、聞こえてるよなお前? 何で驚愕してるんだよ。しかも後退りまでして? アレ? 何か気のせいかコイツ、俺の事をなんかこう……、変質者を見る様な目で見て来ていないか?
「おいアレクシア」
「ヒッ! ち、近寄るな、近寄るでない。わらわに近寄るなこの淫獣が。やはりわらわをその様な目で見ておったのじゃな! 何がこの姿のわらわに興味が無いじゃ、お前まさかあの神に密かにロリコンにされたのであろう? そうじゃな? わらわ分かっておるのじゃぞ!」
はぁ? 何をとち狂った事を? コイツこそあの神に何かされたんじゃないか?
「おい、アレクシア」
「ヒー近寄るなぁ! 悠莉、お前女にされたからといって、やって良い事と悪い事があるんじゃぞ。嫌じゃー! わらわの純潔がぁ~。女に奪われる~。しかも中身は男に~。ヒェ~」
「お前意味分からん事を言うな。おい、アレクシア話を聞けって」
あっ……。目がグルグルと渦巻いてる……。
それにしても、何でコイツはこんなにテンパっているんだろうか?
と言うか純潔ってお前……。女同士でどうやって奪えるんだよ? それ以前の問題として、今の姿のお前とそんな事をしたく無いよ。そんな事は、元々の姿に戻ってから言ってくれないかな? コイツこそあの神に何かされてるんじゃないかな? ありえるな。あの神が密かにコイツに何かやってたとしてもおかしくはない。ただ、コイツって普段もこんなだから、いまいち見分けがつかないんだよなぁ。
「おいちょっと待てアレクシア」
「ま、待てと言われて待つとでも思うのか。わらわを、わらわを……。近寄るでないこの淫獣め! お前は女になっても性根は変わっておらぬ! わらわにイヤらしい事をしようとしおってからに。この……。淫獣がぁ!」
「お前ふざけんなよ! お前は俺の事を普段そんな風に思ってたのかよ? お前みたいなちんちくりんにエロい事なんてしないし、したくは無いわ。せめて元々の姿に戻ってから言え、このむっつりスケベが! それとな、今のお前にそんな気にはならん。お前の唯一の取り柄のおっぱいが無い今の姿に何かする訳が無いだろ。弁えろ。この想像力が豊かな無乳めが……」
このアホタレは、俺を何だと思ってんだよ? ふざけやがって。
と言うかコイツは、俺の事を本気で淫獣だと思ってたとか何なんだ? 俺は性獣かよ? 失礼しちゃうよ本当。
「なっ!」
何がなっ! だよ? 今更驚く事か? 只の事実。そして世間一般から見た、ありのままでしかない事しか言っていないのに。
「お前! だ、誰がむっつりスケベじゃ? 何が唯一の取り柄がおっぱいじゃ! 無乳じゃと? 悠莉、お前言葉には気を付けろ! コヤツ……。レディに向かって何足る事を……」
もう……。面倒臭いなぁ……。
大体だな、今の姿のお前の何処に胸があるんだよ? 壁どころか無乳じゃないか。
このちんちくりんは、自分がどんな姿にされたか分かっていないのか? もしそうなら脳が色々とイッちゃってるとしか言い様がない。
「うるさいなぁ……。もうそんなのどうでも良いから早くサイズ測ってくれない?」
「悠莉よ、お前はそうなのではないかと思っておったが、さっきから何と不埒な事を……。まさかそこまで堂々とわらわに言うてくるとは……。お前さっきも言うたが女になったからと、言って良い事と悪い事があるんじゃぞ。同じく、やって良い事と悪い事もあるんじゃからな」
コイツはさっきから何なんだよ? と言うかまた、また自分の胸を両手で押さえて後ずさりする?
なーんかお互いの認識に齟齬があるような気がするんだけど? まさかだけどコイツ……。
「お前もしかしてだけど、まさかお前の胸を自称する壁以下の無乳を、そのお前の自称胸とやらのサイズを測ってって思ってる? まさかだけど」
「何を今更! そうであろう、そうなんじゃな。わらわの胸のサイズを測るなどと、お前は何を考えておるのじゃ、この……、淫獣めが!」
「お前こそ何を考えてるんだよ? 何でお前の胸のサイズを測らなきゃならない? 意味が分からん。お前……。アホだアホだと思ってたけど、お前は真性か? 何でお前の胸のサイズを測るんだよ? 違うわい。俺の胸のサイズを測ってくれって言ってんだよ。それと淫獣言うな、誰が淫獣だ。と言うか話の流れと、場の状況的に俺の胸のサイズって分かるだろうが。空気を読め、このアホタレめ」
これだから無乳は……。誰が淫獣だよ。
と言うか、あのおっぱいの無いお前に存在価値は無いんだよ。まぁ良い、それを言ったらまたギャーギャーうるさいからな。そんな事より早く俺の胸のサイズを測らなきゃ。
うーん……。巨乳は見てる分にはとても良いんだけど、自分自身の事となると邪魔以外の何物でもないな。マジでいらんなコレ。
しかも何故か先っちょが痛い。何でなんだ? 男の時はこんな事一切無かったのに。
「くっ……。女になってもその減らず口は相変わらずか……」
「なぁアレクシア、そんなのどうでも良いから早く俺の胸のサイズ測ってくれない? じゃないとブラ出せないんだけど?」
あーあブラを装備しなきゃならないのか。あーあもう。何で俺がこんな目に遭わなきゃならないんだよ。本当にふざけてるな、それとマジでこのちんちくりんには必ず報いをくれてやる、人を淫獣扱いしやがって。
まぁいい。良くは無いがこのままでは堂々巡りだ、それよりもブラをっと。
ブラはあの国で買ったやつにするか。とは言え物は日本で作られた日本製な訳だけと。
あの国にも暫く行って無いな。でもなぁ……。
このちんちくりんを一人で置いて留守番を任せると、また家が滅茶苦茶になるんだよな……。
とは言え金が捌けないし、このままではアイテムボックスの中に死蔵されたままだもんな。
ならサービス価格でモノと交換しても俺にもメリットはある。だって俺の持っている貴金属は表に出せないんだもの。何しろ量が膨大過ぎて怪しいってもんじゃない。うん、表で売り捌くのは無理だな。
あの武器商人に連絡を取るか。それに大統領閣下にも暫く会っていないし、繋ぎを付けとかなきゃな。多分あの武器商人は、『俺は武器を取り扱うビジネスマンであって、食料品とか雑貨やなんかを扱う商売人では無いんだが』とかまた言うんだろうな。まぁ良いや、三者共に利益はあるんだ、ならぶつくさ言いながらもきっちり商品は用意するだろ。
「・・・」
チッ……。このちんちくりんめが……。
「おいアレクシア。お前は何またしれーっと逃げようとしてる? 無駄な事はやめろ。ホレ、さっさと俺の、大事な事だから敢えてもう一回言うが、俺の胸のサイズを測ってくれ」
「分かった……」
もう! 無駄に時間取らせやがって。
~~~
「Fか……。結構でっかいな」
そんでもこのちんちくりんが元々の姿の時の胸部装甲に比べたら、小さいかな?
とは言えでっかい。うん、でっかいね。しかも美乳だよ。美巨乳だね。
「おい。自分の胸とは言え、ガン見し過ぎではないのか? 今にも揉みそうな顔をしおってからに」
「はぁ? 別にそんな事思って無いけど? て言うか自分のモノなんだぞ、揉んでも良いだろ別に」
「何と破廉恥な。お前はコレだから……」
いや、コレだから何なんだよ? 最後まで言え。
しかしそうだな。女になり、自分の胸がどうなったかは気になるな。
「お前……。本当に揉むか? やはり淫獣ではないか!」
「うるさいなぁ……。知的好奇心を刺激されただけだよ。それに女の胸を揉むのは初めてじゃ無いんだ、こんな事程度で淫獣言うな。これだから自称乙女は……」
童貞じゃあるまいし、こんな事ごときで興奮するかよ。まぁ良いや、しかし張りがあるな。我ながら素晴らしいお胸様だ。
でもなぁ、所詮は自分の胸なんだよなぁ。良いも悪いも無いんだよ。ふーんあっそ、としか思わないし、思えない。
「・・・」
「アレクシア、お前はなに顔を真っ赤にして照れてる? そんなの別にいいから、いらんぞ。カマトトぶりやがって」
「誰がカマトトじゃ誰が! そんないやらしい真似をしおってからに……。わらわ身の危険を感じるわ」
「もうつっこまんぞ。とりあえずお前は反省しようか、クソ似非ロリ君」
チッ、ギャーギャーうるさいなぁ。マジでコイツは、自分の事を客観的に見る事が出来ないんだな。大体だ。
「おい、俺がこんな姿に、女になった原因を作ったのは誰だっけ? お前もう忘れたの? なぁ原因女。お前どう思う?」
「・・・」
こんのアホタレ、やっぱか、やっぱりもう忘れてやがったな。都合の良い脳ミソだな本当。ちっとも羨ましく無いけど。
「て言うかお前は何であんな事を言ったの? まさかだけど面白いとか思って言ったのか? お前だけは本当もう……。ちっとも面白く無いんだよ。お前は自分がヨゴレ芸人だって自覚は無いのか? このヨゴレ芸人めが! 己の芸風位把握しておけ」
「おい! だ、誰がヨゴレ芸人じゃ誰が? それ以前の問題としてわらわを芸人扱いするな」
「そうだな、お前を芸人だなんて言ったら芸人に失礼だよな。いや~俺とした事が失言だったよ。うん、芸人、それもお笑い芸人に対して失礼だった。以後気を付けよう」
「なっ!」
何がなっだよ? 俺、何にも間違った事を言っていないぞ。大体だな。
「お前さっきからリアクションが一緒だぞ。そういう芸はすぐ飽きられるから、ちゃんと考えてリアクションした方が良いと思うな俺は。ワンパターンの芸が許されるのは師匠クラスと、新喜劇だけだからな。お前まさか……。自分を師匠クラスのベテラン大芸人か、伝統と栄光と光輝ある、新喜劇のベテランメンバーと思ってる? 履き違えるな! この三流以下の自分を芸人だと思い込んでる汚れ芸人モドキめが! お前みたいな奴が、五十、六十になっても芸人としての収入が無く、バイトで食ってるクセ、自分を芸人だって言い張ってる奴みたいになるんだ。弁えろ、この自称芸人モドキのヨゴレ芸人未満が! お前は芸人になったとしてもグズ芸人にしかなれないよ。このアホタレ似非ロリモドキが……」
芸人舐めるなよ。芸人何て誰でもなれるけど、だからこそ難しいんだ。敷居が低いからと言って簡単だと思うのは大きな間違い。
たまに居るよな。自分の事を面白いと思い込んでいる、全く面白く無い奴って。
自分で自分を面白いと思ってる面白く無い奴。そんな奴は精々スベリ芸しか出来ないスベリ芸人にしかなれないよ。
「お前悠莉! わらわを芸人扱いするな! しかも誰がヨゴレ芸人じゃ!」
「ならスベリ芸人か?」
ん? 待てよ……。コイツはヨゴレ芸人でありスベリ芸人か? いや、それに加えてグズ系芸人でもあるな。そんな奴が芸人として成功するなんてある意味奇跡みたいなもんか? と言うかこのアホタレは、芸人として成功するなんて絶対とは言わないけどほぼほぼ無理な事だな。そう考えると、早めに分かって良かったじゃないか。
「お前スベリ芸人言うな! こ奴……。女になって男の時より口が達者になっておらぬか? 前より減らず口がパワーアップしておるぞ」
「お前のアホさ加減と愚かさもパワーアップしてるからお揃いだな。嫌なお揃いだよ本当。と言うかお前、似非ロリちんちくりんになってしまってから、色々とパワーダウンしてる部分もあるけど、何時になったらその壁以下のド貧乳がパワーアップするの? 頭が更にアホタレになったのは仕方ないとして、抜群のスタイルと、見た目だけは良かったお前が今の姿になって全く良いトコ無しになったな。哀れよのぉアレクシア君」
「なっ! お前……、容赦も無くなっておらぬか? 今までわらわに遠慮無しな奴じゃと思うておったが、今のお前に比べればまだ男の時の方が遠慮があったぞ。何なんじゃコヤツ……。女になるとこうまで遠慮も容赦も無くなるのか?」
ハァ? 何を抜かしてるんだコイツ?
「お前のせいでこうなり、色々と無くなっちゃったんだが? 男としてとっても大事な、男の子の象徴も無くなったんだけど。なぁ、どうしてくれるの?」
このままでは俺は、あんな事やこんな事も出来なくなっちゃうんだけど。もし万が一男に戻る事が出来なかったら、もしそうなら、〝ピーー〟とか出来なくなるんだぞ、クソ!
「だ、だからその内元に戻るじゃろ。多分」
「・・・」
またそれか? このアホタレは当事者意識がカケラも無いんだ。そうか、そうなんだ。
「おい。わらわを無言で見詰めて来るな……」
見詰めてるんじゃ無い。睨んでるんだよ。
本当腹立つなぁこのちんちくりん。何がその内元に戻るだよ。もし戻らなかったらどうしてくれる? お前に責任取れるのか?
「お前……。繰り返しになるが、マジで揉みしだいてやるからな。と言うか今揉みしだいてやろうか? なぁアレクシア。お前が元々の姿に戻る前に、今のお前の胸を自称するその壁を揉みしだいてやろうか?」
「ヒッ! や、やめろ……。い、嫌じゃ……。い、淫獣……」
「そう思うなら口を慎め。発言には気を付けろよ。俺は今ならその位の事何て躊躇い無くやるし出来るからな。それと淫獣言うな。愚かな発言は命取りになると自覚しろ」
何度も何度も同じやり取りさせやがってからに。まぁ良いだろう、嫌だけど何時もの事だ。それよりもっと。
Fならコレだな。色は……。白で良いか。あーあブラ着けなきゃいけないのかぁ、嫌だなぁ。
彼女のをシャレで着けた事はあるけど、圧迫感があってあまり気持ちの良い物じゃ無いんだよな。
うーん……。スポブラにするかな? 一応は普通のブラも出しておくか。
「お前はさっきからブラをガン見して何がしたいのじゃ? レディの前で何と破廉恥な事を……」
コイツって奴は……。
「お前なぁ、マジで、口を慎んでてくれない? 腹立つ奴だなお前って。誰のせいで俺がブラ何ぞ装備しなきゃいけないと思ってんの? アレクシア、お前あんまふざけた事を抜かしてるとだな……」
「おい、話の途中で言葉を切るな。何を言うつもりじゃ?」
「お前が余りにも舐め腐った事を言うからだな、次ナメた発言をしたらお前をひん剥いてやろうかって言おうとしてたんだよ。でも流石にどうかと思ってヤメたんだ。良かったな、俺が紳士で」
本当に紳士だよ俺って。口に出さず飲み込んだんだから。と言っても今は女な訳だが。
「いやお前結局言うておるではないか。ふざけるでない。そんな事をされたらわらわ嫁に行けなくなるわ」
「・・・」
ツッコミ待ちか? そうなのか?
お前みたいなだらしない奴が、嫁に行けるだなんて夢見すぎだよ。
「おい、何でそこで黙る? お前本当にわらわを裸にひん剥くつもりではあるまいな?」
「次に弁えない発言したらひん剥く。何だろう? 女同士だし、本当にひん剥いてやっても良い気がしてきた」
「だからお前はさっきから何を言うておる? ダメに決まってるじゃろうが! 悠莉よ、お前は何を考えておるのじゃ?」
「何を考えてるかって? そんなの決まってるだろ。如何にお前に最もダメージを与えられるかだよ。人をこんな姿にしやがって……。何を考えてるも何も、どうお前にお仕置きしてやろうかって考えてるんだよ。ふざけやがって……」
「・・・」
で、だんまりか? このちんちくりんめ、冷や汗まで流して相当焦ってると言うか、危機感を感じてるみたいだな。マジでやってやろうか。
しかし本当、どうしてくれようかコイツめ。
「ち、違うんじゃ! 本当に違うんをじゃ! わ、わらわが悪かった、じゃからひん剥くのはヤメてくれ~」
うおっ! コイツ……。土下座しやがったぞ……。
俺の本気を感じ取ったか……。いやまぁ本当に一瞬やってやろうかと思ったけど、コイツ思い切りが良いな。
「な、何でもするからすっぽんぽんにするのは勘弁してくれ~」
ん? 今コイツ何て言った?
「へぇ~……。何でもするんだ? ふーん……」




