下手な鉄砲
「スパイ蜂をおびきよせるだけなので、刺される心配はありません。」
調査団は、村人におとり役を協力させようとしたが、そんな物好きはいない。
「安全なら自分たちが入ればいい。」
村人の指摘はもっともだ。
「われわれは学者なので、それでは追跡ができない。」
こんな言い訳、普通、素人でもいわないだろう。彼等も本心では、政府におしつけられて困惑していた。しかし、税金で作ったものを全く使わなかったら、いつぞやのマスクのように何を言われるかわからない。
生餌で無ければ無駄だと解っていても、しかたなく、猿の死体を入れて設置した。それでも、彼等はいくつか人目につかない檻に果実などをぶら下げた。
「猿が誤って檻に入ったんなら仕方ないよな。」
数日後、見に行くと案の定、死肉には蜂が近づいた形跡は無かった。檻の周囲には、熊や猪が暴れた後が残っていた。果実を置いた檻のいくつかには猿がかかっていた。麻酔を射ち、外から見えないように厳重に梱包して、研究所へ運ぶ。
「絶対に撮られるな。騒ぎになる。それに万一、蜂が産卵していたら危険だ。」
一体の猿に、見たことの無い吸血痕があった。しかし、卵は確認されなかった。政府は、その檻のあった場所付近に蜂がいると判断した。飛行能力から考えて、蜂のテリトリは数キロ四方はあるだろう。ただ、産卵対象の範囲はもっと小さい可能性があると推測された。
「蜂の姿は小さすぎて、映像では確認できませんでしたが、警戒音や飛行音は記録されていました。これらを解析することで、生活圏を特定することができると考えます。」
政府は、成果を大々的に発表した。掃除機の成功の宣伝するためだ。実際には、檻しか使ってないが。
「野生の猿を狙って捕獲したんですか?」
「たまたまです。蜂が、血液意外に何を好むのかわからないため、色々なものをおいてみました。たまたま、猿がかかってしまった。おかげで成果がでました。今回の功労者である猿君はいずれ野生に戻ってもらいますが、傷が完治するまでは、丁重にもてなすつもりです。」
記者の質問に、しれっと総理は答えた。




